失墜 -3-





「今告げても、無駄なのでしょうが・・・・」

 そう前置きして、セフェランは呪い殺さんとばかりの険しい目つきで睨み付けてくる、美しくも脆弱な生き物へと視線を落とす。

「貴方は、もうわたしの物です。生かすも殺すも、わたしの意志次第。貴方にはもはや何ら選択権は与えられません・・・・・単なる、わたしの所有物です」

「!!」

 言い放った刹那、金髪を振り乱し激昂した様子で青年がセフェランに掴みかかろうとして来た。燃えるように輝く、緑柱石の瞳が美しい。
 伸ばされた鋭い爪のある華奢な手を難なく受け止めながら、セフェランはその細い手首を折れない程度に力を込めて握りしめた。

「・・・・・・っ、」

「抵抗するな、とは言いませんよ? ・・・・抵抗する者を押さえつける悦びもまた、格別なモノですからね」

 苦痛に歪む美しい顔を満足そうに眺めつつ、セフェランは更に手首に力を込める。

「・・あ・・うぅ・・・」

「けれどね、多少は利口になった方が身のためですよ? 鷺の民の非力さは、私達人間にだとて随分と有名な話ですから。貴方はここから逃げる事は出来ないし、わたしに逆らう事も出来ない・・・・その現実を、受け入れなさい」

「・・う・・っ、・あぁ・・・・・」

 手首が砕かれそうな激痛に、リュシオンはもはや返事をする処では無い状態のようであった。

「・・・・・・・」

 そんなリュシオンを満足げにセフェランは見下ろす。
 涙を浮かべ苦痛に身をよじる鷺の王子をたっぷりと堪能した後、セフェランはようやくリュシオンの手首から手を離した。
 リュシオンの握りしめられていた部分には青黒い痕が付き、手首から先は血が止まっていたせいで真っ赤に変色している。

「さあ・・・では、楽しませて貰いましょうか・・・」

 手首を押さえ上体を丸くしていたリュシオンの肩を、セフェランは軽く押して寝台へと転がした。

「・・・・・・・?」

 その身体の上へとのし掛かってきたセフェランを、リュシオンが訝しげに見上げる。
 王子のそんなある意味無防備な様子に、セフェランは薄い唇に苦笑を浮かべた。

「おやおや。・・・わたしが単に貴方を、ペットとして撫でて可愛がるだけだと思ってるのですか?」

「・・・・・・・・・」

 寄せられた眉は、セフェランの言葉を良く理解していないという証だろう。命を取られるかも知れないという怯えは見られるものの、この鷺の王子には陵辱に対する警戒は見受けられなかった。




 このまま事に及んで、パニックを起こし泣き叫ぶ様を見るのも一興ではあるが―――――───この美しい貌が驚愕に歪む様を見るのはまた、格別。




「わたしはね、王子・・・・・」

 セフェランは殊更優しい声で、ゆっくりとリュシオンの白い耳朶に唇を寄せ囁いた。

「今から貴方を、―――――─犯すのですよ」

「!?」

 エメラルド色の切れ長な瞳が、更に大きく見開かれる。

「貴方の尻に、わたしの男根を突き立てて・・・・後ろが裂けて貴方が痛いと泣き叫んでも構わずに、思う存分突き入れ擦り上げ、わたしの子種をたっぷりと中へと注ぎ込んであげるのです・・・・相当血は出るでしょうし、身体が引き裂かれるかと思うような激痛が走るでしょうね・・・」

「・・・・・・・!!」

 セフェランの下に組み敷いてある、華奢な身体が明らかな強張りを見せた。

「・な、・・・な・・・っ!!」

 朱くなったり青ざめたり。目まぐるしく顔色が変わり、ついには顔面蒼白となったリュシオンは何か言葉を発しようと思うのだろうが、唇が震えて言葉にならない。

「や・・・、嫌だ・・・・っ!!」

 下卑た物言いをされた屈辱よりも、本能的な怯えが勝ったらしい。
 可哀想な彼の心情を如実に表す、すっかり冷え切って氷のようになった指先でセフェランの胸を強く押し、何とかこの状況から逃れようと身をよじらせた。

「おや、嫌ですか。まあ、貴方の意見は聞きませんけれどね」

 しかし、リュシオンの決死の抵抗もセフェランにとっては、さして支障にはならない。
 ただリュシオンが激しく暴れ、彼の美しい薄い爪が剥がれたりするのは勿体ないので、片手で両手首を掴み頭上で縫い止める。

「・・・・・・っ、」

 そしてリュシオンの腰からベルトに巻き付けられていた組紐を抜き取ると、それで細い手首を縛り繊細な細工が施されている寝台の、ヘッドボードへと括り付けた。
 リュシオンはセフェランの意図に気づき、必死の抵抗を試みたが到底力では敵わない。まして身体はセフェラン自身によって押さえつけられており、両手首を拘束された状態では、いくら身を捩っても大した効果は無かった。

「・・・・・・・・・・」

 身を竦ませ、リュシオンが絶望の色を貌に浮かべる。
 青白く強張った表情もまた美しいと思いながら、セフェランは黙ってリュシオンの襟元に手を掛けた。
 震えを隠せない白い喉もとが露わになり、やがて陽に晒された事など無いのだろう透けるように真っ白な胸元がセフェランの目に映される。

「やだ・・・嫌だ・・・・やめてくれ・・・・!」

 セフェランの指がリュシオンのベルトに触れた時、悲痛な叫びが美しい王子の唇から零れ出た。

「・・・・いい声ですね。・・・綺麗ですよ・・・・」

「!」

 すっかり、王子としてのプライドも男としての気概も、何もかもかなぐり捨てた・・・・純粋な怯えから漏れ出た声。
 けれど、天上の声と称される鷺の民の声は・・・たとえ悲鳴じみた叫びであっても・・・・ただ心地よくセフェランの耳に響いた。
 構わずセフェランはベルトを抜き取り、リュシオンの身に纏っている物全てを脱がしていく。
 羞恥と屈辱、そして恐怖からリュシオンが白い羽をバタつかせ髪を振り乱して暴れたが、それを簡単に封じて鷺の王子の全てを、晒していった。



















「これは・・・美しい・・・・!」

 眼前に晒された、小刻みに震える白い肢体を前にセフェランは感嘆の言葉を口にした。

「・・・・・・・」

 優美で華奢な、身体のライン。それ自体がうっすらと発光しているのでは、と思わせるような滑らかに輝く白い肌。
 男のものとは思えない・・・だが決して女性では有り得ない、熟し始める寸前のまだ硬く瑞々しい果実のような―――――─未成熟な身体。
 両胸に淡く色づいた小さな実と、薄い金色の翳りの影にひっそり息づいているあどけない彼自身が、妙に背徳的な艶を若く硬い肢体に与えていた。

 これが、セリノスの王族。最後の、生き残りである鷺の王子・・・静かな感慨を持って、セフェランはリュシオンを見つめた。





 鷹の民の国フェニキスと烏の民の国キルヴァスの王によって守られ、その存在を自分たち人間に秘匿されていたセリノスの王子。
 彼らはその王子が陵辱されたと聞けば、怒り狂うのだろうか・・・・? そんな考えがセフェランの頭を過ぎる。
 噂によれば、キルヴァスの王が王子をオリヴァーに売ったときく。ならば、キルヴァスは平気なのかも知れない―――――───フェニキスに知れれば、更に我がベグニオンに対する報復が苛烈なものとなりそうではあるが。
 何にしろ・・・・・・と、セフェランは微かな笑みを浮かべた。
 何にしろ、王子の存在が表沙汰にならなければ良いだけの事である。元より外に解放してやる気はハナから無いし、生きてこの場所を王子が出られる可能性は万に一つも無いのだから―――――───心配事は、存在しないも同じ事。そこまで考えを巡らせて、セフェランはその思考を脳裏から払拭した。





「・・・さて・・・」

「・・・・・・!」

 セフェランの呟きに、リュシオンが蒼白を通り越し完全に血の気の失せた貌を、更に強張らせる。

「ふふっ・・・死にそうな顔してますよ王子」

 そんなリュシオンの頤(おとがい)を軽く持ち上げ、セフェランはクスリと笑った。

「これから楽しい事が始まるんですから・・・死なれては困るんですが」

 言いながら、セフェランは寝台横の小さな飾り棚の引き出しに手を掛ける。そして、中から何か両端に皮紐のベルトが付いた細長い円筒状の物を取り出す。

「・・・・・・・・・」

 円筒形の物体の太さは、リュシオンが人差し指と親指で輪を作ったくらい。長さは10センチにも満たないくらいであろうか。表面に繊細な彫刻が施された、美しい物だ。

「これ、見たことありますか?」

 セフェランはその、塗りをされた木製のものらしい物体をリュシオンの目の前にかざした。

「・・・・・・・・」

 リュシオンが不安そうに無言で首を振る。今の彼には、何もかもが恐怖の対象なのだろう。

「では、これから覚えましょうね・・・」

 セフェランは優しく言いながら、リュシオンへとその手にした物を近づける。
 そして、いきなりリュシオンの両頬を片手で掴み上げ、

「っ!?」

 痛みに薄く開いた小さな口へと、その円筒形のモノをガッチリと填め込んだ。

「んー!んんーーーーっ!!」

 何とか首を左右に振り、舌を使って吐き出そうとするリュシオンの頭を押さえつけ、セフェランは彼の頭部にぐるりとベルトを巻き付けて固定する。

「・・・・・・!!」

 ちょうど太い棒を横に咥えさせられた状態となったリュシオンは、口を閉じることも勿論言葉を発する事も不可能となってしまった。

「教えてあげましょうね・・・それ、『猿轡(さるぐつわ)』というんですよ。舌でも噛まれて、自害の真似事などされると面倒ですからね・・・」

 まあ、わたしは杖も使えますから舌を噛まれたくらいでは、死なせては差し上げられませんけれども・・・・・そう言いながら、セフェランが抵抗する術を全て失くしてしまった可哀想な鷺の王子を見下ろせば、美の結晶と謳われるその顔に絶望の色を濃くして、大きなエメラルドの瞳で此方を見上げていた。
 両手は頭上で括られ、口には猿轡。そして身体にはセフェラン自身が重心をかけてのし掛かっている為、身動きが出来ない。

「・・・・・・!」

 震えを止める事も出来ず、可哀想な王子は自由にならない身体を強張らせながらセフェランの動向を見守る事しか出来ないのだった。

「・・・・・・・・可愛いですよ、王子・・・」

 そんな姿に、セフェランは嬉しそうに微笑む。彼にとって、恐怖に彩られた美しい貌ほど愛しいものは無かった。

 瞳にうっすらと涙を浮かべ懇願の色を讃えた表情ほど、彼の心を高揚させるものは無い。そして鷺の王子はまさに、その究極の理想ともいえる存在なのだ・・・・・美しさといい、その限りなく正に近い無垢なる存在が故に。
 それを穢す事こそ、至上の悦びであり昏い欲望を満たす最高の行為であった。
 そんな彼にとって、リュシオンの悲壮な姿は加虐心を満たし大きな悦びを与えこそすれ、行為を中断する為の良心への呵責などには到底なり得なかった。

「ふふ・・・本当に可愛い・・」

 楽しげに呟きながら、セフェランは顔をリュシオンの胸元に伏せる。そして、菓子でも摘むような仕草で指先を淡く色づいた突起へと伸ばした。

「!?・・・ん・・・んんーーーー!!」

 ビクリ、と驚いたようにリュシオンの身体が跳ねる。
 恐らく、初めての感覚に敏感に反応してしまったのだろう。
 だが構わずセフェランは、まだ柔らかく小さな肉の粒をこね上げるように摘み、時折軽く爪で引っ掻いてやった。その都度、リュシオンの薄い身体が激しく跳ねて、ビクビクと痙攣する。

「おやおや、どうしたんですか王子? ココをちょっと摘んだだけですよ?」

 意地悪く問いかけても、リュシオンはその言葉の意味を理解する余裕が無いのか困惑した表情を浮かべて身を捩るばかり。

「ん・・・んん・・・・っっ!!」

「片方だけでそんなに悦んでくれるなら、もう片方もしてあげましょうか・・・」

「!?」

 今度は理解出来たのかリュシオンが慌てて激しく首を左右に振るのを横目で見ながら、セフェランはもう片方の突起を口に含んでやる。もちろん、もう一方の突起から指は離していない。

「・・んーーーっ!・んっんっんっ・・!!!」

 やがてリュシオンが今までとは違う震えで戦慄きながら、懇願するような目でセフェランを見てきた。
 猿轡をされた唇から漏れ出る声も、先ほどまでとは何処か違う、切羽詰まった様子を告げている。息が荒い。

「んっ・・んぅ・・・・・!!」

 柔らかいだけだった肉の粒は、いまやセフェランの指と口の中で硬く凝り、存在を誇示し始めていた。そろそろかと、セフェランは胸元から唇を離した。

「・んぅ・・・・・・、」

 声も出せずに身悶える、上気した顔が間近。
 セフェランはさっと上体を起こすと

「・・・さあ、足を開いて」

 華奢な膝小僧に手を掛け、割り開くように手を掛ける。

「―――――!!」

 初めての感覚に翻弄され、僅かにトロリとしていたリュシオンの顔が瞬時に強張った。途端、脚に再び力が入る。

「・・・力を入れると、貴方が痛いだけですよ・・・・?」

 言いながら、セフェランはリュシオンの脚を無造作に開いていった。脆弱な力しか持たない鷺の民の力では、さしたる抵抗など、出来はしないのである。
 それでも諦めずに尚脚を閉じようとするリュシオンに、セフェランは小さく溜息を吐きながら静かな声で言った。

「―――――─あまり聞き分けが無いと、脚も縛りますよ? 固定されても構わないのなら、足掻きなさい」

「・・・・・・・・」

 ビクリ、とリュシオンの身体が大きく震え・・・・・顔に諦めの色が走る。

「そう・・・いい子ですね」

 大人しく力の抜けた脚を更に押し広げつつ、セフェランは満足そうに微笑んだ。
 そして脚が再び閉じられないように自らの膝を、広げた脚の間へと割り入れる。

「・・・・・・・・・・・」

 それからじっくりと、彼の下半身を眺めた。

「・・・綺麗ですね・・・・まだ、使ったこと無いのでしょう?」

 言いながら、やんわりとリュシオンの金色の翳りを撫で・・・彼自身を柔らかく握り混む。

「―――――っ、」

 瞬間、リュシオンが小さく息を呑むのが感じられた。
 実際、色素の沈着が見られない彼の生殖器官は使いこまれた様子も無く、本当に色も淡くほんのりと桜色で形状もツルンとして人間の子供のようなモノである。
 つまり、先端がまだ顔を出していないという、状態であった。

「自分でこうして、慰めたことも無さそうですねぇ・・・・鳥翼族は交いが盛んだと聞いたことがあったのですが・・・・鷺は特別なのでしょうか」

 言いながら、滑らかでつるんとした手触りの『彼』を弄ぶ。

「・・んぅ・・・・っ!!」

 その都度、リュシオンの腰が揺れ辛そうに眉が寄せられたが、セフェランの指の動きは止まらなかった。
 執拗に滑らかな表皮を擽るように撫でては爪先で先端を突き、握り込むように『彼』全体を締め上げては緩め、やがて芯を持ち始めた幼い形状のそれを、無造作に扱き上げていく―――――───その行為が繰り返し行われた。

「う・・・っ、ふぅ・・・ん・・っ!!」

 リュシオンから漏れ出る声は鼻に掛かった甘いものとなり、自然と腰は妖しく揺らめき、うっすらと肌が汗を浮かべ始める。
 くちゅ・・・くちゅり。セフェランの指先が、先端から溢れ出る透明な粘液で濡れた卑猥な音を立て始める頃には、リュシオンは無意識に自ら脚を広げて彼に身体を押しつけるようにしていた。

「おやおや、お強請りですか? ・・・初めてでしょうに、はしたないのですね・・・セリノスの王子は」

「ん・・・んん・・・・っ!!」

 違う、という風に首が横に振られるが、熱に浮かされた様に朱に染まった顔は初めての悦楽に翻弄され出口を求めて懇願するかのごとくセフェランを見つめている。

「ああ、ほら。貴方のいやらしい液体で、わたしの指が汚れてしまいましたよ・・・そんなに気持ちいいんですか・・・・?」

「んん・・・っっ!」

 また違うと言いたいのか横に振られた顔に、セフェランの加虐心が刺激される。

「もうすぐ、ですね。もうすぐ、このいやらしい穴から白い液体が沢山出ますよ・・・淫乱の証ですねえ・・・・」

 言いながら、手に握り込んだリュシオン自身を更に強く扱きあげれば耐えられない、といった様子で鷺の王子が白い喉元を見せて仰け反った。
 清楚の塊のような美しさを持ちながら、凄絶な色気がある。セフェランは己の中の欲望が急速に膨らんでくるのを感じていた。
 ごくり、と思わず生唾を飲み込みながら僅かに上擦った声でリュシオンに話しかける。

「どうしましょうね・・・・このまま、わたしの目の前でいやらしく貴方がイクのを眺めるのもオツなのですが・・・・そろそろ、貴方が苦痛に泣き叫ぶ様も見たくなってきました・・・・」

「ん・・・ん・・・・っ、」

 セフェランの言葉が耳に届いているのかいないのか。
 セフェランによってもたらされる指の刺激に翻弄され、リュシオンはただ腰を揺らしてくぐもった喘ぎを上げるのみである。

「・・・・・・・・・」

 徐にセフェランは、リュシオンのヌルヌルになった先端へと指を絡め・・・・・・・・一気に、幼い形状を示していた『彼』の包皮を引き下ろした。

「――――っ!?」

 ブチッと何かが切れるような鈍い音を手の中で感じるのと、リュシオンが声にならない悲鳴で喉を鳴らすのが同時だった。
 ビクビクとリュシオンが痙攣し、その衝撃で達してしまったのかセフェランの手の中から白濁した液体がトロトロと零れ落ちる。

「ああ・・・・少し出血しちゃいましたね」

「・・・・・・・・・、」

 手の平を広げ、薄くピンク色にマーブルがかった白い液体をしげしげと眺めながらセフェランは事も無げに楽しそうな声を上げた。
 脚を広げた体勢のまま、リュシオンはただ華奢な身体を震わせつつ荒い息を付いている。恐らく彼には、何が起こったのか理解出来なかったのだろう・・・・・初めて経験する快楽と激痛・・・その両方が一度に訪れたのだろうから。

「痛かったですか? でも・・・・これからの方がもっと痛いですよ。期待していて下さいね・・」

 にこやかな表情でセフェランは、消耗した様子のリュシオンを見つめる。

「ほら、・・・見て下さい・・・」

 言いながら、セフェランは己のローブの前裾を腰辺りまでめくり上げると、すっかり勃ち上がって天を指し示す己自身をリュシオンの眼前に晒した。

「・・・・!!」

 焦点の合わぬ瞳で有らぬ方向を見つめていた、緑柱石の瞳が驚愕と恐れに再び大きく見開かれる。

「んぅ・・んんん!!」

 明らかな怯えの色を見せて、リュシオンの身体が上の方へとずり上がろうとし始めた。

「ほら・・・もっと良く見て下さい? これが今から、貴方の中へ入るんですから・・」

 その身体を無理矢理に押さえつけつつ、セフェランは楽しそうに笑った。
 この怯えきった表情が堪らなくセフェランを魅了する。
 この美しい貌がこれからどんな風に苦痛に歪み、泣き叫んで許しを請おうとするのか・・・・哀れな仕草で藻掻くのか、想像しただけで達しそうになる程だった。

「ほらほら、ここから入るんですよ・・・」

「!?」

 華奢な片膝を押し上げ穢れない鷺の王子の秘められた箇所を露わにしつつ、セフェランはその繊細な粘膜に覆われた狭い入り口へと己の屹立したモノを押し当てる。

「んーーーっ!! んんーーーーーっ!!!!」

 リュシオンがのたうち、彼が動ける可能な範囲で脚をバタつかせ身体を捩らせて抵抗してきた。
 彼にしてみれば、もう恐慌状態なのであろう・・・括られた腕が折れても構わないといった様子で必死に暴れる。

「諦めが悪いですね・・・」

 セフェランにとって、リュシオンの身体はどこもかしこも大切だ。美しい貌はモチロンのこと、ほっそりとした腕や脚だって大事である―――――損なわれる訳にはいかない。
 リュシオンの抵抗を封じる意味でも、とセフェランは腰を更に進めた。

「んぅ・・・・・・・!!」

 途端、リュシオンの身体が痛みで硬直し始める。
 狭いリュシオンの入り口は、一切指で馴らされていない上に解されてもいない。助けは、先ほどのリュシオン自身が零した体液のみである。
 けれどそれが程よい潤滑剤となったのか、セフェラン自身の先端部分がメリメリと少しずつではあるがリュシオンの内部へと進入を始めたのだ。
 それは即ち、圧倒的質量を誇るセフェランが潜り込んでくるに従い、リュシオンの入り口が裂ける事を意味する。

「ん・・・っ、キツイ・・・ですねぇ・・・・王子、ほら、もっと緩めてくれなくては」

「う・・・うぅ・・・・」

 セフェランの眼前であられもなく脚を全開にして、全てを晒した状態だという事に頓着する余裕も無く、リュシオンはただ苦痛に首を左右に振って身悶える事しか出来なかった。
 痛みと解放ですっかり萎えてしまった、血と精液にまみれたリュシオン自身も繋がりつつある、秘められた箇所も、先ほど散々嬲られ赤く凝ったままの両胸の突起も―――――───全部がセフェランの目に晒されているという、羞恥を感じる余裕も無かったのである。

「ほら、―――――─力抜いて」

 なかなか挿入出来ず、セフェランは強引に腰を進めながら無造作に再びリュシオンの剥けたばかりの『彼自身』を握り込んだ。

「・・・・・っ、」

 途端、ひくり、とリュシオンの後ろが反応して、逆にセフェランを締め付ける。瞬時に襲ってきた痛みに、リュシオンが顎を仰け反らせた。

「そうじゃないでしょう・・・・ゆるめるんですよ、ほら!」

「んぅ・・・・っ!」

 リュシオンを扱く、セフェランの指の動きが速くなる。

 剥けたばかりの敏感な先端を擦り上げられるたびに激痛が走り、リュシオンの身体が魚のように跳ねた。跳ねるとまた、差し込まれている部分が酷く痛むのに・・・・。
 猿轡を噛みしめている口も痛かったし顎を伝う涎がベトベトして気持ち悪かった。
 生理的に溢れてくる涙が頬を伝い、鼻水と涎で顔中グチャグチャになっている気がしたが、それに頓着するような余裕など、リュシオンには皆無だった。
 痛くて痛くて―――――──痛みばかりが身体を支配して、もう嫌だと身体中が悲鳴を上げているというのに、リュシオン自身はいつの間にか再びいやらしい粘液を滲ませて、くちゅりくちゅ・・と濡れた音を響かせ始める。
 それに合わせてリュシオンの後ろも、呼応するように伸縮を始め。そのタイミングを計り、セフェランは強引にリュシオンの内部へとねじ込んだ。

「―――――───!!」

 めりめりめりっ・・・・鈍い何かが裂けるような音を、セフェランが繋がった箇所から感じた瞬間、リュシオンの身体が大きく仰け反り・・・・・硬直して次の瞬間グッタリと力が抜けた。

「・・・・・・っ、」

 熱く濡れた内部に、きつく・・・けれども柔らかく締め付けられて、セフェランは嘆息する。

「入りましたよ・・・貴方の中に、全部。すごく気持ちが良いですよ・・・・」

「・・・・・・・・」

 弛緩した身体から、反応は無かった。どうやら、挿入の衝撃で気を失ってしまったらしい。
 けれど、行為の最中にまた気が付くだろうから、とセフェランはさして気にもしなかった。
 気絶したままの華奢な身体を眺めつつ、自らの快楽を追うために腰を動かす。
 相変わらず軋むような狭さではあったが、挿入時の出血が動きを助けているのだろう―――――─律動は滑らかだった。
 滑らかで熱い粘膜を擦り上げ、腸壁を押し上げるかのような動きを繰り返してやる。そして戯れ程度に、リュシオン自身を握り込み軽く刺激を送り込む―――――──そういった事を数分、続けていると

「う・・・ん・・・んぅ・・・・!!」

 形良い唇から、切なそうなくぐもった喘ぎが零れ始めた。
 同時にセフェラン自身がひくひくと締め付けられ始める。セリノスの王子が、気が付いたのだ。

「ああ・・・気持ちいいですよ・・・貴方の中がヒクヒクとわたしを締め付けて・・・」

 うっとりと、セフェランはリュシオンの苦痛に歪む美貌を眺める。

「こんなにわたしを締め付けるなんて・・・・あなたも牡が欲しかったのですね・・・?」

「・・・・・ん・・・う・・・・ぅ!!」

 左右に首を振り懇願するかのようにセフェランを見つめるリュシオンの姿は、端から見れば快楽に身を委ね彼に更なる愛撫を強請っているかのようにすら見えた。
 しかし実際には、リュシオンはセフェランを迎え入れるという激痛で息も絶え絶えな状態だったのである。
 自身の牡を刺激され、生理的な現象としてセフェランを悦ばせてはいるものの、リュシオン本人は未だ快楽を感じられるほどに開発されている訳では無い。
 リュシオンの腰の下に敷かれたシーツは真っ赤に染まり、苦痛と無理矢理追い上げられる快楽に絞り出されるくぐもった声は、徐々に弱くなっている。
 繊細な生き物である鷺の王族にとっては、そろそろ限界が近づいていたのだ。

「・・・・そろそろでしょうか・・・? 仕方有りませんね・・・」

 それを見て取り、セフェランは律動を早めた。
 もっともっと、苦痛に泣き叫び美しく歪んだ顔(かんばせ)を眺めていたい処ではあったが、ここで死なせてしまっては本末転倒である。
 これからもっともっと、様々な事で楽しむつもりなのだから。

「ほら、・・・分かりますか? わたしの精を、貴方の中に、たっぷり注いであげましょうね・・・!」

「!?」

 セフェランの激しい動きに翻弄されながら、リュシオンがそれだけは・・・と縋るような瞳で彼を見上げる。
 荒く息を吐き、首を振って、顔を苦痛に歪ませながらも必死に何かを訴えるかのような瞳でセフェランを見た。

「ああ・・・いいですねその顔。堪らない・・・・!!」

 うっとりと、セフェランが呟き次の瞬間、眉間に皺を寄せる。

「う・・っ、」

「〜〜〜〜〜!!!」

 セフェランの微かな呻きと、リュシオンの声にならない悲鳴が上がったのが殆ど同時であった・・・・・・。