ALEXANDRITE-アレキサンドライト-



 02








「やだよ・・・いやだ、レン!」


 いつもと、何となく違う気配を感じて。
 怖くて、本気で嫌がった櫂にレンはいつもと同じ笑みを浮かべた。


「どうしたの、櫂? 何で嫌がるんですか? いつもと同じことしかしてませんよ・・・?」


 言いながら、レンは櫂の背を宥めるように撫でてくる。

 そうやって、背骨の形をなぞりながら撫でてくるのは、確かに初めてじゃない『いつも』のことだ。
 けれどそれは服の上からであって、・・・素肌に直接では無かった。


「だって! いつもはこんなっ、・・・。なんで服脱がないとなんだよ・・・」


 いつも通りの、レンの変わった『お願い』だと思っていた。

 猫でも可愛がる時のような、抱きしめてきたり頬ずりしてきたり、悪戯に首筋を舐めてきたりの、いつも通りのレンの遊び。
 くすぐったいから嫌だったけれど、少しの間じっとしていたら、彼はいつも櫂が欲しいと思うカードばかりをプレゼントしてくれたから。

 それなのに今日のレンは、櫂をいつも通りに抱きしめてきたかと思うと櫂の服を脱がせ始めたのだ―――――。


「でも、僕と約束したでしょう。カードあげたら大人しくするって櫂は言いましたよ?」

「それは・・・。でもっ、・・・なんかこんなの・・・」


 流石にそれは戸惑われて抵抗したけれど、見かけによらずレンのチカラが強くて、有無を言わさず下着を残して全て剥ぎ取られてしまった。

 最初は本気で抗ったのだが、途中でレンに低い声で『言うこと利かないと、僕はもう櫂とファイトません』と言われ、櫂は抵抗する気持ちを挫かれてしまったのだ。
 当時の櫂にとって、レンとのカードファイトが全てであり、彼とファイト出来なくなる状況など考えられないことだった。


「いい仔ですね、櫂。怖がらないで・・・僕は櫂と楽しみたいだけなんですから」

「・・・う、・・ぅ、・・・」


 首筋をぞろりと熱い舌で舐めあげられ、背に回された手で皮膚の下にある骨の形を調べるように撫でられる。
 剥き出しの肌を滑る、レンの長い髪がくすぐったい。

 もう片方の手の指が、今度は櫂の鎖骨辺りに触れてきて。
 そのまま、緊張に激しく鼓動する心臓の上に手の平を押し当ててくる。

 その手は櫂よりも少し体温が低く、―――――余計にその感触を伝えてきた。


「櫂、ドキドキしてますね。僕もですよ・・・今すごく、ドキドキして苦しいくらいです」


 嬉しくてね。

 そう言いながら、レンは触れていた手を少し横へとずらす。
 そして、櫂の胸にある小さな肉粒に触れてきた。


「・・・アッ、?」


 瞬間。触れられた部分から下腹へと、何とも言えない感覚が走り櫂は声をあげてしまった。
 まだ弱いけれど、下腹が痺れるようなもどかしい感覚が櫂を襲う。


「レ・・レンッ、・・・!!」


 経験したことの無い感覚に戸惑い、櫂はレンの名を呼ぶ。
 声に何となく悲壮な響きが篭もってしまった気がしたが、どうしようもなかった。


「櫂、大丈夫ですよ。ほら僕に任せて。・・・気持ちよくしてあげますから」


 手を押しのけようと暴れ始めた櫂を押さえつけ、レンは尚更に強く櫂を抱きしめてくる。

 それどころか櫂の抵抗を止めるためなのか、そっと撫でていただけだった肉粒をキュウッと指でつまみ上げてくる。


「!? あ、・・アァッ・・・!!」


 その刺激に、櫂の全身が跳ね上がった。

 胸に触られている筈なのに、何故か下半身に切ないような感覚が走る。
 急速に、尿意にも似た感覚が催してきて、櫂は混乱した。


「ふふふ・・・コレ、気持ちいいですか?」


 櫂の反応に気をよくしたのか、機嫌の良さそうな声でレンがそう聞いてくるが、櫂はもう答える余裕が無かった。


「あっ、・・あっ、あっ、・・・アアアッ・・・!!」


 レンがキュッキュッと櫂の乳首をつまみ上げるたびに、そこから下腹部へと電流が走る。

 自然と腰が揺れた。
 櫂自身の先端から何かが出てきて下着を濡らし、ベタ付かせているのを感じて、余計に気が焦った。


「櫂、可愛いです・・・! もっともっと、気持ちよくしてあげますね!!」

「!? やああっ、・・・!!!」


 首筋を舐めていたレンの舌が櫂のもう片方の肉粒を捉えて、きつく吸い上げてくる。

 刺激に頭の中が真っ白になり、同時にまた、櫂の下着がジワリと濡れるのを感じた。


「うあっ、・・や・・・やだっ、レンもうやめて、・・出る、・・・おしっこ、・・・出ちゃ、・・・!!!」

「いいですよ、櫂のなら構いません。・・・まあ、そっちは今出ないでしょうけど・・・」


 身体を強張らせ、必死にそう訴えた櫂だが、レンはそれを即すかのように激しく左右の突起をいたぶってくる。


「はっ、・・・あ、・・・アアァ・・・んっ、・・・レンっ、・・・あ、あ、あー・・・」


 失禁してしまいそうな感覚に断続的に襲われ、櫂はもう鳴き声を上げるしか無かった。

 我慢しようとしても、その部分にチカラが入らない。
 勝手に腰が跳ねて、濡れた先端を下着に押しつけて、布が敏感な部分を擦りあげる感覚を追ってしまっている。

 このままでは、確実に漏らしてしまうというのに。
 幼い子供ではあるまいし、トイレじゃない場所で、しかも他人に見られながらなど、決してやってはならない行為なのに。

 その前に他人にこうして、胸を舐められたり触られたりなどすること自体が異常事態だ。

 そう思うのに、―――――もう自分ではどうにも出来ない。





 不意に、レンが櫂の胸元から顔を上げる。


「淫らになった櫂の顔、すごく可愛いですよ・・・さあ、もっと僕に見せて下さい・・・!」


 赤い瞳が、嗤っていた。
 美しいけれど危険な光を宿す、魔性の眼。

 やはり、時折感じていた危機感は気のせいでは無かったのだと、唐突に理解した。

 だがもう、・・・全ては遅い。


「ふふふっ、・・・櫂のココ、濡れちゃいましたね・・・」


 そう言って、レンは櫂の下着――――歪(いびつ)に形を変え、内側から布を押し上げ湿った箇所―――――を指で軽く突いてきた。


「あ・・・っ、!?」


 レンに触れられたということへの拒絶よりも、触れられた瞬間に走った強烈な感覚に息が詰まる。
 それまでの、櫂をもどかしく苛んできた感覚が、いっきに鮮明になった瞬間だった。


「こんなに張り詰めて・・・そんなに胸を触られるの、気持ちよかったんですか?」


 レンの手は、触れたまま二度三度と揉み込むように、下着ごと握り込んでくる。

 自分の意志に関係無く、身体が何度も跳ねた。


「あっ、あっ、あああっ・・・!!」


 気持ちいい。

 頭の中が、レンの指先と触れられているその部分のことしか、考えられなくなる。
 恥ずかしいとか、こんなの変だとか、止めて欲しいとか―――――そういったこと全てが、白く霞んでいく。


「さあ、こんなに苦しそうなんですし、これも脱いでラクになっちゃいましょうね・・・」


 櫂はもう、レンが下着に手を掛けて脱がそうとしてきても抵抗できなかった。


「ああ・・・コレが櫂のなんですね。やっぱり、すごく可愛いな・・・!」

「っ、・・・レンっ・・・!」


 そのまま、先端を濡らしスッカリ勃ち上がった幼い櫂自身をレンが直に握り込み、扱き始めても腰を揺らすことしか出来ない。


「あっ、あっ、・・・んっ、・・やあ、・・なんか変に、変になるうっ、・・・アァーーー!!」


 レンが指を動かすたびに、グチュグチュと濡れた音が立ったが、それも気にならなかった。


「んっ、・・・それ・・それ気持ちいい・・・よぉ・・・レンっ、・・・あんっ、・・」


 もたらされる未知の感覚に完全に翻弄され、櫂は切なく喘ぐことしか出来ない。


「ぬるぬるしてっ、・・・レンの手、あ・・気持ち、い・・・っ、・・・」

「これは櫂が出してるんですよ・・・いやらしい仔だなあ・・・僕の手がベタベタですよ・・・? もう触るのヤメようかなー」

「あっ、やぁ・・・ゴメ、ゴメンナサ・・・っ、・・・やだ、擦るの、やめないでっ、・・・アアァ!」


 からかうようなレンの言葉にも、怒るどころか懇願することしか出来なかった。

 未体験の感覚に怯え、戸惑い・・・中学に入ったばかりの子供相応に、取り乱して泣き声をあげることしかできなかった。


「んっ、・・・あ・・・なんかも・・・出る・・・よっ。・・・んっ、・・・おしっこ・・・おしっこ出るっ、・・レンっ、出ちゃ・・・うよぉ・・・!!」


 ただもう、必死に自分を襲う感覚を追うことしか考えられない。

 下半身の一点が堅く張り詰めて、とにかく苦しい。
 吐き出せそうで吐き出せない苦しさと、それでいて脳を灼くような悦楽が全身を包み、ただ顔を歪めてすすり泣くしか出来ない。

 櫂はもう、自分が何を口走っているのかも良く理解していなかった。


「そんなに気持ちいいんですね。可愛いな・・・苛めたくなってしまう」

「・・・気持ち、良く・・・て、・・・おしっこ・・・おしっこ出るうぅーーー!!」


 小さな子供みたいに、漏らしてしまいそうなことを訴えては、はしたなく腰を揺らすしか櫂には術(すべ)が無い。


「櫂はもう中学生になるのに、人前でお漏らし出来ちゃうんですか? そうですね、もうこんなに僕の指をぬるぬるにしてるイケナイ仔ですから仕方ないのかなあ・・・」

「やあっ、・・・だって、だって・・・! んっ、そんな・・・レン、我慢、できな・・・」

「じゃあ、『イク』って言ってみて下さい? 『気持ち良過ぎてイッちゃう俺を、レン、全部見て!』って」

「? な・・・なんかそんなの、俺・・・っ、・・・」


 意味が完全に把握出来ないながらも、何となくその言葉が酷く羞恥を煽るものだということは感じ、櫂は戸惑う。


「あれ、言えないんですか? それでは・・・」

「あっ、や・・・! やだ、やめないでっ、・・・んっ、・・あ・・・言う、言う・・・からっ、・・・」


 しかし、意地悪なレンの物言いにも従うこと以外は思い付けなくなっていた。

 今、動かされているレンの指が離れたら。
 この激しい疼きをどうすれば良いのか、僅かに考えただけでも怖かった。


「じゃあ言って。ほら、早く言わないと・・・間に合わないですよ?」

「っ、あ・・・! あっ、・・・き・・気持ち良・・くて、イッちゃ・・う、」


 必死に、先ほどのレンの言葉を復唱する。

 半分意識が飛んでいて、もう半分は気持ち良いとしか考えられなくなっているから、短い言葉でも思い出して口にするのは酷く困難だった。


「見て! 俺を見っ、・・・アアーーーー!!!」


 やっとの思いで櫂が、レンの指示通りの言葉を声にしたその刹那。

 レンの指が櫂自身の最も敏感な部分を強く擦りあげ、先端のくぼみに爪を潜り込ませるように、指先を押しつけてきた。
 強いられた言葉を全部言えない内に、櫂の目の前が今度こそ真っ白に染まって、息が止まる。

 漏れ出るような感覚は尿意と似ていたが、明らかに異なっていた。

 身体の奥で何かが弾けて、一気に櫂自身の先端へと熱いモノが走り、迸(ほとばし)る。
 目もくらむような快感に、櫂は断続的に腰を突き上げるように痙攣させ、思わず傍にあるレンの身体に強く抱きついた。


「あ、・・あっ、・・・あ、あ、・・・!!」

「お疲れ様。ちゃんと言えましたね。じゃあ、・・・ご褒美です」


 耳傍で囁かれたレンの言葉は、櫂には聞こえなかった。
 いや、耳には届いていたが、意味を理解する余裕など櫂には無かった。

 ドクドクと脈打ちながら、未だ快感を与えつつ溢れ出してくる下半身の感覚に意識は占められたままで、何も考えられなかった。

 だが、次の瞬間。 


「!? ・・・イッ、痛ッ、・・痛いっ!! ・・ア、ああーー・・・・アッ、・・うぐっ、・・・!!!」


 その同じ部分に走った激痛に、櫂は悲鳴をあげた。

 ピリッ、と櫂自身の先端に切り裂くような痛みが生じたのだ。
 無理矢理に生皮を剥がされるような、出血を伴うような熱い痛みが櫂を苛む。

 見れば、ぬるぬるとした液体を塗り込むように動いていたレンの指が、突如、櫂自身の先端部分を包んでいた皮を引き下ろしたようだった。


「あ・・・うっ、!! 痛っ、痛いっ、・・・レン、やめ・・・!!!」

「大丈夫。櫂を大人にしてあげただけですよ? 剥いてあげた方が気持ち良くなれるから」


 しかもレンは、その剥き出され、露わになった先端部分に再び触れて撫で始めた。

 その手は、薄赤く染まった白い液体にまみれている。
 血と、恐らく先ほど櫂が吐き出した液体が混じったものだろう。

 射精、といういつか授業で聞いた言葉が頭を過ぎる。
 だがそれは、こんな苦痛を伴う現象だったのだろうか。


「いやっ! やあっ、レンっ、痛いっ、・・触らなっ、・・あ、アアアッ、・・・アアアーーー!!!」


 極度に敏感になり、空気の揺れでさえも感知して刺激になってしまう箇所を弄られ、櫂は身悶え、泣き声を上げるしか無かった。


「んっ、・・・は・・っ、あ・・・あっ、・・・やあっ、・・・やだっ、・・・あっあっ、・・・んうっ・・・」

「ほーら。気持ち良くなってきたでしょ・・・?」


 痛いような、気持ちが良いような。
 強すぎる刺激に、櫂の脳が混乱する。

 ヒリヒリする痛みを訴えている先端部分に触れられて、確かに痛いと思っているのに―――――下腹からまた、こみ上げてくる別の感覚がある。

 痛くて。
 気持ちが良くて・・・・櫂の腰は、どちらの意味も込めて揺れた。

 射精と包皮を剥かれた痛みに萎えた筈の櫂自身は、再び張り詰め先端から透明な蜜を零し始めている。


「櫂はえっちですね・・・初めてなのに、もうこんなに腰を揺らして・・・」

「んっ、んぁ・・・あああ・・・!!」

「いいですよ、またイッても。・・・ほら、もっと擦って気持ち良くしてあげます」

「あっ、あっ、あっ・・・!!」

「気持ちいいんですね櫂・・・ほら、見せて下さい。櫂が気持ち良くなって、白いのを出しちゃう所、ちゃんと僕に・・・ね?」


 白いの、と言われ。
 櫂の脳裏に、一瞬だけ羞恥心が蘇る。

 もしかしたら失禁するよりも恥ずかしいことかも知れない、という思いが頭を掠めた。


「あ・・・んっ、痛い・・のに、気持ちいっ・・・!! も、・・・出ちゃ・・・っ、うよぉ・・・!!」


 けれどもう、止まらない。

 こんな風に触れられて、こんなに敏感な部分を責められ続けていたら―――――腰が勝手に動いて、レンの指に自分から押しつけてしまう。
 触って欲しくて、擦って欲しくて・・・ぬるぬるしたのがレンの指をいっぱい汚してすごく恥ずかしいのに・・・自分からその部分を押しつけて、強請ってしまうのが止められない。


「も・・・ダメぇっ、・・・白いの、白いの・・出るうぅぅう・・・・!!!」


 背を大きくのけぞらせ、櫂は再び来る絶頂に官能に染まりきった声を上げた―――――。










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