『生まれる前から愛してる−1−』








「・・・・・あ、かわいい」


 カカシが不覚にも思わず声を漏らしてしまったのは、摘み上げた生き物の顔が、想定外なほどに可愛かったからだ。

 黒髪黒目の、誰かさんのミニチュアを彷彿とさせる姿の子供だが―――――――・・・片手で持ち上げて暫く、しげしげと眺めてしまったくらいには可愛かった。


「・・・・・・・・・・・」


 色白の肌は、思わず指先で突いてしまいたくなるくらい柔らかそうで、ふっくらした頬などは、まるで餅か何かのよう。
 長い睫毛が密に生えた瞳は、覗き込めばそのまま深淵の闇へと引き込まれそうな程に黒々としていて、・・・・・その眼のパッチリとした大きさ加減といったら、零れ落ちそうなくらいだ。
 まだ低いけれどスッと通った鼻筋や、細い眉、形良く整った小さな唇・・・どこをどう見ても、欠点が見当たらない可憐な顔立ちである。

 透き通るように白く柔らかそうな肌、濡れ光る大きな黒瞳の姿は、良くできた市松人形を見ている心地にさせる。
 色白な顔に似合いの真っ黒で柔らかそうな髪の毛先が、癖が強いのかツンツンと後頭部のみ逆立っているのはご愛敬だ。

 だが、その可愛らしい容姿に反して、子供はカカシに対し酷く攻撃的だった。


「離せよ!! 離せって言ってるだろーーー!!」


 服の背部分を摘まれた宙ぶらりんな体勢で、ジタバタと激しく暴れる。

 その可愛い顔を観察したいのに、まだ成長途中でリーチが足りない手や足を懸命に繰り出し、カカシへヒットさせようと必死だ。
 せっかく人形みたいにキレイな面差しをしているのだから、暴れず静かにしていてくれれば本当に人形のようでイメージ通りなのにとカカシは内心で溜息をつく。


「離したらオマエ、・・・俺のことまた攻撃するんデショ?」

「当たり前だ! いいからサッサとこの手を離せ!! 顔面に蹴り入れてやるっ!!」

「・・・だから、そう言われてハイそうですかって離すと思う?」


 やけっぱちになったらしく滅茶苦茶に振り回してくる手足から自分の身体を遠ざけつつ、カカシはそう諭すが効果は殆ど無いようだ。


「うーん、せっかく可愛い顔してんのにねえ・・・」


 片手で子供を軽々と摘み上げたまま、カカシは眼から下を覆ったマスクの中で苦笑を浮かべる。

 間近にある子供の顔の造りは、同僚の誰かさんにそっくりだ。
 鴉の濡れ羽色と称したくなる艶のある黒髪も、墨で塗りつぶしたかのような真っ黒な眼も・・・・色白な顔立ちも、パーツが何処か似通っている。

 年が離れているし、カカシの同僚は常に物静かで感情を伺わせない、例えて言うなら鉱石のような美しさを持っている男だから印象はまるで違うけれども。
 カカシが今摘み上げている子供は、言うなればまだヌイグルミのような愛らしさを持っており――――――――造形は似ていても、やはり別ものとしか思えない。

 あの年齢に相応しくない、常に落ち着き払った態度で、どんな凄惨な任務でも顔色ひとつ変えずにやってのける男と。
 今、怒り心頭な様子で無駄に暴れている子供では、受ける印象が違い過ぎた。

 目の前の子供は、とにかく――――――・・・掛け値無しに可愛い。


「可愛くなんかねェ!! いいから降ろせこの白髪野郎!!!」

「・・・・・・・・・ねえ、俺達初対面だよ? なんでそんなケンカ腰・・・・?」

「うるさいっ! テメーなんか大嫌いだ! 俺の敵だっ!!」


 さっきから、散々に暴言を吐かれているが、可愛いものは可愛いのだ。

 顔の造形が文句なしに可愛くて、普段は甘ったれているんだろうことが察せられる行動パターンを読んでしまえば、子供の抵抗や悪態など子猫のじゃれつきに等しい。
 ――――――――たとえ、いきなり柱の影から飛びかかってきて、クナイ片手にカカシを襲おうとしてきたとしても無邪気な子供の悪戯と流せてしまうほどには。



 何せカカシは、とってもとってもとっても、・・・・・・・・・・この子供に逢ってみたかったのだから。









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言い訳。

カカサスみたいになってますが、根本はイタサスです(爆)
って、・・・・サスケまだ名前も出てませんね☆