『Sapphirus 3』


 

 



 どんっ、と愛想悪く目の前に置いてやった、粗末な皿を見て。


「・・・・・・・・・・・」


 アルヴィスの向かいに座った銀髪の青年は一瞬、チラリと此方を伺うように視線を走らせた後で・・・・・おもむろに傍らの匙(さじ)を取った。
 そしてとてもゆっくりとした動作で、中身の少々ドロッとした液体を掬い、口へと運ぶ。


「!? ・・ゴホッ、・・・・・!!」


 口に入れた途端、青年の動きは止まり・・・・軽く咽(む)せて顔を引きつらせた。


「どうした、火傷でもしたか?」

「・・・ぃや、そうじゃない・・けどっ、・・・」

「? じゃあどうした」

「・・・・・・・・・・・」


 何でもない、というには青年の顔が歪んでいる。
 だが青年は、ややまだ表情が引きつってはいたものの、すぐに表情を切り返しアルヴィスに笑顔を作って見せた。


「チョットだけ。・・ほんのちょっぴりだけど、・・・・か、・・変わった味・・・だね? 薄いんだけれど、酸っぱいっていうか苦いっていうか・・・それでいて不思議な甘みが・・・・・!」


 ――――――要は口に合わない、ということか。

 確かに青年が身に付けているモノは、それなりに上質な印象を受けるし・・・旅人とはいえ裕福な暮らしをしてきたのだろう事が伺える。
 それならば、こんな野菜の切れ端が浮いただけの汁物などは口に合わないだろう。


「嫌なら食べなくていい」


 同じスープを盛った、皿の中身を淡々と平らげながらアルヴィスは容赦なく言い放った。

 神殿から配給される食材が僅かな上に、教わったことも無いから料理の腕にはさっぱり自信がない。
 工夫次第では、泥臭いだけの痩せ細った根菜でもおいしいスープになるのかも知れないが・・・・残念ながら、アルヴィスには素材以上の味を引き出せる腕は備わっていないのだ。

 恐らく、見るからに贅沢三昧しながら旅をしてきたのだろうこの男の口には、合わないと予想は付いていたけれど。
 アルヴィスとしては、一晩とはいえ匿(かくま)ってやることを決めた手前、食事は出すべきだろうと思って仕方なく差し出しただけなのである。


「言っておくが、我が家にはコレしか無い。嫌だというなら、お前の今日の飯は無いからな?」


 そう。食材はこれしか無かったし、たとえ他にあったとしても似たりよったりのモノしかアルヴィスは作れない。
 差し出されたモノが気に入らないのなら、彼が勝手に何らかの手段で空腹を紛らわせればいいのである・・・アルヴィスの知ったことでは無いのだ。


「あ、嫌じゃないよ大丈夫。食べれるから! ・・・いただきまーす!」

「・・・・・・・・・大丈夫ってなんだ・・・?」


 失礼な事を口走り、慌てて頭(かぶり)を振り匙(さじ)を動かし始めた青年・・・・ファントムを、テーブル越しに胡乱(うろん)な目つきで睨みつつ。

 アルヴィスは、自分がとんでもない過ちを犯している気がして。
 内心、深く溜息を付いた。


「・・・・・・・・・・・・・・、」






 本当は。
 自分の料理がファントムの口に合おうと合うまいと、どうでも良い。


 ―――――――そんなことよりずっと、気に掛かっている事がある・・・・・・・・・・。












 神殿内部に、勝手に侵入し。
 御神をあろう事か悪魔呼ばわりして、・・・更に『此処にそんなヤツは存在しない』と言い切ったとんでもない男―――――――・・・ファントム。

 銀髪紫目の容姿の良さも桁違いなら、頭の中身も桁外れに常識外れ過ぎて。
 アルヴィスは逆に、その青年を放っておけなくなってしまった。

 以前の、活気を取り戻している状態の街なら、ともかくも。
 荒れ放題で、集団ヒステリーを起こし・・・ヤリ玉に挙げられた人々が謂われのない罪で連日、投獄されたり処刑されている今の現状では。
 ・・・・・・・・・・容姿も言動も目立ちすぎる彼は、まず間違いなく標的にされるに違いなく。

 罪もない人々が毎日命を落としていく事自体に、アルヴィスは胸を痛めていたが――――――・・・その人々の中に、ファントムが加わるのも静観できなかった。

 どんなに常識外れでおかしな事ばかり口走る輩(やから)だろうと、1度でも言葉を交わし顔を見た相手が死ぬのは辛い。

 放っておけず、とりあえず他の者の目に付かない場所へ・・・・そう思って、自分の住む家へと引き込んだ。
 神殿の片隅に建てられた、その簡素な家に住んでいるのは、アルヴィスだけである。
 本来ならアルヴィスは他者との接触はなるべく禁じられているので、家へ旅人を招き入れるなどは御法度(ごはっと)なのだが―――――――・・・此処であれば、ファントムが見つかる心配はあまり無いと踏んでの事だった。

 だが、禁忌(きんき)は禁忌。
 他者をこうして、自分の近くに引き入れる事は・・・・・・・・・・神殿の規律には、明らかに違反している。

 規律を守り今まで破ったことなど一度とて無いアルヴィスは、自らが決断した行為とはいえ、自分がしでかしてしまった事に罪悪を感じていた。


「・・・・・・・・・・・・・・・」


 しかし、目の前で黙々と食べる青年の顔を見て、これで良いのだと無理に思い直す。

 僕の住み処(すみか)は、天上だよ―――――――・・・天を指さし、そう言われれば、本当にそうでは無いかと信じてしまいそうな神々しい程の美貌。
 その微笑みは、とても柔らかで・・・・・・・・邪気の無い、見ている者の心をフワリと包み込む甘さに満ちている。

 口を開けば呆れるような物言いしかしない男だが、悪気がある訳では無いのだ。・・・・・たぶん。

 世界には様々な信仰があり、各地で信じられている神もその信仰方法も、随分違うのだとアルヴィスは書物で読んだ事があった。
 だからきっと、ファントムの育った場所では・・・彼はここ10年ほどの記憶しか無いらしいが・・・・・ああいう破天荒な理屈がまかり通る環境だったのだろう。

 この地に縁(えん)もゆかりもない旅人である彼が、ここで処刑などされてはならない。
 流されなくて済む血を、敢えて流すなどしてはならないのだ。


 今日、一晩泊めてやって。
 夜が明けしだい、早々に追い出してやれば。
 日の高い内に、隣町くらいには辿り着けるだろう。

 ファントムのような変わり者は、こんな不穏な空気の流れる街には居ない方が彼のためだ。



「・・・ねえ、アルヴィス君はずっと此処に住んでるの? ひとりで?」


 アルヴィスがあれこれと思い悩んでいた内に、ファントムはいつの間にか食べ終わっていたらしく。
 空になった器に匙(さじ)を置きながら、そう聞いてきた。


「生まれた時から、ここだな・・・。正確に言えば、俺は街の郊外に捨てられていた子だそうだから、拾われてからはずっと・・と答えるべきかもしれないが」

「でも普通、神殿に仕えてる人ってさあ・・・・神殿の中にある居住区か傍に建てられた場所で、大勢一緒に暮らすでしょう?」


 アルヴィスの答えを不思議に思ったのか、ファントムが怪訝な表情になる。

 それなりに、神職に就く者の生活様式の知識はあるらしい。
 だったら御神を悪魔呼ばわりだとか、此処には居ないとか、そんなことを口走ったら処罰されるという事だって理解してそうなものなのだが・・・・・・・・・・そう思いつつ、アルヴィスは今更隠すことでも無いと、事情を説明した。


「・・・ああ、それは俺が『神の贄(にえ)』だからだ。時が来るまで、俺は外界の穢れから隔離されるためにこうして1人で暮らしている」

「・・・・・・・」

「・・・・俺をこれまで育てて下さった神官長と、1ヶ月に1度お話する時と・・・たまに訪れる貴族の方々以外、言葉を交わすこともそう無いな」


 だからお前を此処へ連れてきたのは、本当はすごくいけない事なんだけど―――――――そう付け足しながらファントムの顔を見直して、アルヴィスはぎょっとした。


「・・・・・・・ファントム・・・?」


 ファントムの美しい顔から、あの柔らかい笑みが消え。
 能面のように、表情が失せている。

 そういえば、さきほど神殿内でこの話題に触れかけた時も・・・・・・・こんな顔つきをした。
 あの時はちょうど衛兵に見つかりそうになった為、慌ててファントムを連れ神殿の外庭へと抜け出したから、話はそのまま中断してしまったのだが。


「・・・・・・・・・・・・君は、それを受け入れてるんだ・・・・?」


 無表情になるとより一層、凄みを増した美貌でファントムはアルヴィスを見つめ。
 いつも通りの柔らかな、けれど低く静かな声で確認するように問うてきた。


「・・・・それは、もちろん・・」


 ファントムの、どこか批難するような瞳の色は、アルヴィスがかつて浴びたことのない種類のモノだ。





 ―――――――御神の、贄になられるのですか? まあそれは、何と幸運な事でしょう・・・!!


 ―――――――御神に捧げられる資格を生まれながらにお持ちとは、何と素晴らしい・・・!!


 ―――――――御神が喜ばれる贄は、早々生まれませんからねえ。貴方は本当に、奇跡の人だ・・・!!





 この国の人間達ならば、アルヴィスが『贄』だと知ればそうやって賞賛してくれる。
 御神に深い信仰を捧げる国民にとって、『贄』に選ばれる人間は貴重な存在であり、・・・御神をもっとも喜ばせる事が出来る『供物(くもつ)』として、大切に扱ってくれるのだ。

 だがファントムは、酷く不機嫌な様子でテーブル越しにアルヴィスの方へと身を乗り出してきた。
 髪と同じ色合いの柳眉をひそめ、興奮の度合いによるのか深紫色の瞳の奥で、黄金色の炎に似た輝きが揺れ光る。

 その紫と金が混じり合う不可思議な色合いは、何だかとても不吉で禍々(まがまが)しいと感じるのに・・・・・・・・・それでいて目が離せない美しさで。
 アルヴィスは束の間、自分がその瞳の中に囚われてしまうような―――――――そんな錯覚を覚えた。


「ねえ、分かってるの・・・? イケニエだよ? ・・・・君はその、オンカミとやらに自分の命あげちゃうんだよ。キレイな言葉で飾り立ててるけれど・・・要は、殺されちゃうんだよ?」


 しかしファントムの言葉ですぐ、我に返る。


「・・・・・・・・・・・・・」


 アルヴィスが生まれた時から課せられた役割に、賞賛こそされた事は多々あれど。
 こうやって面と向かい詰問口調(きつもんくちょう)で言われるのは、初めての経験だ。


「水に沈められて? それとも、カラダ切り裂かれちゃうのかな・・・・・・・・どっちにしろ、死んじゃうんだよ? すごく苦しかったり痛かったり・・・・とっても辛い目に遭うんだよ・・・!!?」


 殺される。
 死んでしまう。
 苦しい。
 痛い。

 なんて具体的な、『死』に繋がる言葉。

 ファントムの言うとおり、生け贄とは『神のために殺される存在』だ。

 神のために、殺される。
 神のために、死ぬ。
 神のために、苦しみ・・・そして痛さを味わう事に他ならない。


 神のために、この身を献げる――――――その言葉の裏にあるのは紛れもない、アルヴィスの死。


 それでも。
 アルヴィスは、それ以上自分の運命について考える訳にはいかない。
 自分の運命に疑問を持ってしまったら、・・・・・・・・・使命を全うする気構えが、揺らいでしまうから。

 物心付く前から言い渡されている、自分の宿命への決意がぐらついてしまう。


「・・・・・御神は、『贄』の心臓を欲する。だからその時が来たら俺は、・・・神像の前で胸を切り開かれて、心臓を献げる・・・・・・・相当、痛いだろうな」

「アルヴィス君・・・・!!」


 平気な素振りで答えたアルヴィスに、ファントムが納得出来ない・・という風に激しく首を横に振り更に声を荒げて名を呼んでくる。


「いいんだ、・・・生まれた時から覚悟はしてる。俺の命一つで、御神が街を救って下さるのならそれで・・・・・」

「でも仮に実際叶えてくれたとして! その時、アルヴィス君は何処にも居ないんだよ!? 君が犠牲になるのに、君だけその恩恵が受けられないなんておかしいでしょ・・・!!?」

「・・・・だって、俺は『贄』なんだぞ? 『贄』が恩恵なんて貰えるはず無いじゃないか・・・そんなこと、・・・考えたこともない・・・・」


 そう。・・・・・・・考えるわけにはいかないし、考えてはならない。
 アルヴィスは、ひたすら御神を信じ敬愛し―――――――ただただ、召される時間(とき)が来るのを待っていれば良い。


「俺は、自分の定めに従うのみだ・・・・・・・」


 アルヴィスはそっと、自らの左頬に手を伸ばした。

 自分の指先で触れても何ら他の部分と区別は出来ないが、アルヴィスの左目下には、小さな三角形型の痣(あざ)が2つ並んでいる。
 頂点を下にした、ちょうど正三角形を逆さにして2つ並べたような・・・・・・・・・まるで、人為的に入れ墨でも施したかのように不自然な形の痣だ。

 薄い薔薇色のそれは、生まれついてのモノで。
 アルヴィスが『御神に捧げられる贄』であるとの証拠だ・・・・・と、幼い頃から説明を受けている。


 だから。

 生まれてから今までずっと、『贄』となるべく育てられ――――――生きてきたのだから。
 今更、他の生き方など出来はしない。
 自分の運命が嫌だと嘆いて、何になる?
 どのみち、自分は御神へと捧げられる宿命と決まっているのに。

 自分が命を捧げなければ・・・・・・・・・・・・・、街が救われないのに。


 アルヴィスの命は、この街のためにこそ、使われないとならないのに!!



「だってアルヴィス君・・・!!」


 それなのに、ファントムはそんなアルヴィスの決意を容赦なく崩そうとしてくるのだ。
 泣きそうな、なぜだか此方の胸が痛くなるような・・・・とても悲しそうな表情を浮かべて。


「オンカミなんて何処にもいない!! 君が命献げたって、何にもならないんだ無駄なんだよ・・・・・!!? 僕には視えるんだから!!」

「・・・・・・・・・・・・・・・」



 もし、本当に。
 彼の言うとおりなのだとしたら。

 それは確かに無駄死にだろう・・・・・・献げる対象が無いのだから。

 けれども、彼が『視える』と言うのが本当かどうかなんて、彼以外誰にも分からないことだ。
 嘘なのか真実なのか、それをアルヴィスが確かめることは不可能だ。

 だがただ1つ、確かなことは。
 ファントムの言葉を受け入れるというのは、・・・・・・・・・・アルヴィスの今までの生き方全てが、否定されるという事である。

 御神に捧げられる為、生け贄となる為だけに育てられてきた自分。
 その必要性があったからこそ、街外れに捨てられていたというアルヴィスは、神殿に拾われて生き存(ながら)える事が出来た。

 しかし、その御神が存在しないのであれば―――――――・・・そもそもアルヴィスは、必要無かったという事になる。
 タダ飯を喰らい、日がな神殿内の掃除をして回る程度の雑用だけをこなして暮らす・・・ただそれだけの役立たずな存在だ。







 ・・・・・・考えるな。

 ・・・・・・考えたら、駄目だ。

 一時の迷いで、自分の運命を放棄したら災いは街へと降りかかる・・・・・!!


 ――――――・・・俺の命は、御神のもの。

 それ以外、何ものでもない―――――――――。







「・・・・煩(うるさ)い」


 アルヴィスはようやっと、重い口を開いた。


「アルヴィス君、・・・・・!」

「煩いと、言っている。・・・・お前には、お前なりの価値観があるんだろう・・・・・ソレについては、俺は何も言わない」


 一切の感情を閉ざし、アルヴィスは硬い声で目の前の青年に言葉を返す。


「だからお前も、――――――俺のことは何も言うな」

「・・・・・・・・・・・」

「・・・何度も言っているが、今のこの街は酷く物騒だ。今日はここに泊めてやるから、明日早くにこの街を出ろ」

「・・・・・・・・・・・」


 ファントムは泣きそうな顔のままで、アルヴィスを見つめていた。

 アルヴィスより、頭1つ分以上身長が高くて。
 細身ではあるが、アルヴィスより大分体格だって良い癖に。

 縋るようにアルヴィスの顔を映すアメシスト色の瞳が、・・・・・・・・・・捨てられた子犬のようだ。

 いや、タイプ的に猫の方が相応しいだろうか。
 犬ならもっと、物わかりが良くて聞き分けもいいだろうから。



「旅立ちの準備が必要なら・・・・少ししか無いが食料もやる。そこの棚から好きなだけ持って行けばいい・・・・」


 立場的には、ずっと自分の方が苦しいような気がするのに。

 何故だか酷いことを言っているのは、自分の方な気がして―――――――アルヴィスは自然、口調を徐々に和らげながら言葉を続けた。
 1を口にすれば、10を返してきそうな男なのに・・・今は黙って此方の言い分を聞いている事がまた、アルヴィスの気を咎(とが)める。


「・・・・水浴びしたいなら、そっちの扉奥から神殿脇の泉に出られるし・・・人目もないから大丈夫だ」

「うん」


 単なる返事ではあるが、ようやっと口を開いてくれた事にこっそり安堵して。
 アルヴィスは少しだけ、表情を緩めた。


「ベッドは1つしか無いから、一緒に寝よう。・・・・・・・・狭いけど我慢しろ」


 誰かと一緒に眠るなんて、初めての経験だ。
 寝るときに限らず、アルヴィスは大抵1人で過ごしているから、食事だって何だって誰かと共にする事は殆ど無いのだが。
 敢えて、誰かと一緒に居たいと思ったことも無い。

 アルヴィスしか住んでいないこの家には、もちろん1人用のベッドしかないし、そこに2人眠るのは窮屈極まりないだろう。
 快適な眠りがもたらされるとは、思えない。
 それでも、アルヴィスはファントムとなら構わない気がした。


 散々に、アルヴィスの心を乱してくれた厄介な男だが―――――――初めてアルヴィスを『贄』では無く、一個の人間として見てくれた人だ。


 ファントムが自分を気遣い、命を惜しんでくれた事を。
 ・・・・・・・・・・・本当は、ありがたいと思う。

 街の為に。
 御神の為に死んで下さい―――――そう願われるのが、当たり前で。
 アルヴィスの命は、その為だけにあるのだと・・・・・・・・いつもそう思い知らされるような言葉しか、貰ったことが無かったから。

 でも。

 ありがたく感じた反面――――――・・・とても、胸が苦しくなった。

 だって、気付きそうになる。
 考えてしまいそうになる。
 自分自身が本当は、・・・・・・・・・・・どう感じているのかを。

 だがそれは、考えてはならないのだ。
 理解しては、駄目なのだ。

 御神に全てを捧げる――――――その聖勤(せいむ)を全うする為には、決して考えてはいけないこと・・・・・。



 明日には、全てがいつも通りとなる。

 ファントムが出て行き、自分は『贄』となる日を待ち続ける・・・いつもと変わらない日々が訪(おとず)れる。



「・・・とにかく今日はゆっくり休んで、明日早々に街を出るんだ。・・・いいな?」


 目の前の青年に、そう言って。
 アルヴィスは、此方に乗り出すようにしているファントムの端正な顔を真っ直ぐに見つめた――――――――――。







 NEXT 4

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言い訳。
うーん、甘くしようと思ったんですけどネタがネタなので、あんまり出来ませんでしt(爆)
短編にしたかったけど、それも長引きそうで・・・・困りましたね〜〜(←他人事かい!)
次回は思いっきり番外編です☆
ホントはもちょっと引っ張ってから――――――と思ってたのですが、これ以上引っ張っておくとゆきのの記憶力が持たず忘れ去りそうなのd!(殴)
とりあえず、マジで忘れたら話の根底から成り立たなくなる・・・って部分だけ書いちゃいます(笑)
これから書くんですが、出来たら一緒にアップしたいんですけどね・・・出来るかなー???(笑)