『Part of me -君をひとりにはしないから-』







−Prologue−





 時々僕は思うんだ

 僕らは生まれるずっと前

 ひとつの命分け合って

 生きていたんじゃないかって














「やめろっ!!」




 その瞬間、身体が勝手に動いてしまった。
 自分は弱く、まだまだ幼い。
 飛び出した所で、何の役にも立たず足手まといにしかならないだろう事も、分かっていた筈なのに。
 怖くて怖くて―――――身動きどころか、声だって上手く出ないような状況だったのに。

 足下には累々と無惨な死体の山が築かれ。
 息を詰めたくなるような濃い血の臭いが漂い。
 自分の目の前では今なお、更なる犠牲者達を屠ろうと、『悪魔』が無造作に掴み上げた『人間だったモノ』をその残忍なかぎ爪で引き裂こうとしているというのに。



 身体が、勝手に動いてしまった。



 死を覚悟した訳でも、自分がその行為を止められるなどと思い上がった訳でも無い。

「これ以上、俺の仲間を殺すなッ!!」

 けれども、気付けばアルヴィスは飛び出していたのだ―――――─魂が吸い取られてしまうような美しさを持つ、残酷な銀色の悪魔の前に。

「・・・・・・・・・・・」

 自分を可愛がってくれていた仲間達が次々と殺されていくのを見ていられなかったからなのか・・・・・・それとも、ただその『悪魔』を正面から見据えてみたかったからなのか、アルヴィス自身にも理由は良く分からない。



―――――─いい目をしている。



 アルヴィスの姿を認めると、綺麗なアーモンド型をした眼が僅かに細められ『悪魔』はその薄く形良い唇の両端を吊り上げた。



―――――──勇気ある君に・・・良いプレゼントを贈ろう。



 そう言って、手にしたARMの切っ先を自分に向けられてもアルヴィスは動けなかった。
 アメジスト色の、綺麗な瞳に自分の姿が映っていたから。
 まるで・・・・紫水晶の塊の中に、自分が閉じこめられてしまったかのようで・・・・動けなかった。



―――――──これは僕が君を気に入った証だよ。受け取って、またいつかおいで。



「!?・・・・・・・、」



 言葉と共に繰り出されたARMの威力に胸を貫かれ―――――─その激しい衝撃に息が止まり意識が急速に薄れていく。
 けれど、薄れゆく意識の中・・・・アルヴィスの脳裏に浮かんだのは、たった一つの光景だった。







 アメジスト色の双眸と―――――─紫水晶の中に閉じこめられた、自分の姿。







 それは、定めだったのだろうか。

 運命、だったのだろうか。

 悪魔に魅入られ、呪いを受け・・・・・永遠を共にする事が。

 それとも悪魔を打ち倒し、呪いを解いて――――――――関係を断ち切る事こそが。





 分からない解らない判らないわからないワカラナイ・・・・・・・・・。





 自分ノ気持チガ、ワカラナイ・・・・・・・。





 自分は一体、どうしたいの・・・・・・?













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