『君のためなら世界だって壊してあげる』 ACT 48 『そのヒトコトが言えなくて』 ―――――――奇跡で運命で、感激な・・・・再会でヒトメボレ?? 「・・・・・・、」 回想していた人物が目の前急に現れるという、いささか出来すぎてドラマじみた再会に。 名前も知らない相手が、有無を言わせぬ勢いで抱き付いてきた状態なのにも関わらず―――――――アルヴィスは咄嗟に反応出来ないでいた。 「・・・・・・・・・・・・・・」 ファントムに柔らかく抱き締められている時とは違う、力強くて・・ともすれば圧迫感に少し息が詰まりそうな程しっかりと顔を広い胸板に押しつけられたまま、抵抗もせず。 「・・・・・・・・・・・・・・・」 アルヴィスは、彼の長く伸ばした髪の毛先や胸元から微かに漂う甘い煙草の匂いがするのを嗅いでいた。 ――――――ファントムより、少し背が高い、・・・かな。 肩幅も手も大きくて、骨張ってて・・・・・がっしりしてる・・・・・・。 「・・・・・・・・・・・」 ぼんやり暢気(のんき)にも思える、そんな事を考えていたアルヴィスは、抱き締めてきた男が口走った言葉を半ば聞き逃した事に気付いていなかった。 しかし。 その言葉をしっかり聞いて冗談じゃないと思った者が、この場には1名存在していた。 ―――――――アルヴィスと兄弟同然に育った、ギンタである。 「アルヴィスから離れろ!」 ギンタが、語気荒くそう叫んだかと思うと。 「・・・あ、・・ギンタ」 その、どちらかと言えば小柄な身体からは想像も付かない強い力で、ギンタはアルヴィスと男の肩を両手で掴み―――――――べりっと音がしそうな勢いで引き剥がしに掛かってくる。 そしてまだ呆然としていたアルヴィスを後ろへと匿(かくま)うように、自分の背中側に押しやりながら爛々(らんらん)と光るグリーンの瞳で相手を睨みつけた。 「誰だよオマエ? アルヴィスに馴れ馴れしくすんな! アルヴィスはそういうふざけた事が大嫌いなんだからなー!!」 その姿は主人を守ろうと、近づいてきた人間に吠えつく忠犬そっくりである。 幼い頃も今と同様に身体が弱く・・・・外に殆ど行けなかったアルヴィスは、周囲の子供達となかなか馴染めず苛められる事が多々あったのだが、その都度、兄弟同然に育ったギンタが庇い守ってくれていた。 徐々に健康になって、高校時代は全く普通の生活を送れるようになったアルヴィスだが、ギンタは未だにそのスタンスを崩さない。 アルヴィスを守るのは兄弟である自分の役目だとばかりに、事ある度に自分の背に隠し庇おうとしてくれる。 成績から言えば、もっとずっと楽に入れただろう他の大学を蹴って、アルヴィスと同じ大学を受験したのもその為だ。 ―――――――腕っ節というか、腕力に関してはギンタに敵わないまでも。 既にアルヴィスとしては、ギンタに守られずとも自分で何でも切り抜けられる自信はあるのだが。 「・・・ギンタ、止せ」 元気エネルギーの塊のような青年の喧嘩っ早さを熟知していたアルヴィスは、ギンタが手を出す前にと制止の声を上げる。 自分を守り庇ってくれようとして、とかく何事にも先走り早とちりを繰り返してくれるギンタの立場を立てつつ、それに制止をかけて周囲に詫びを入れて取りなすのは、幼い頃から培われたアルヴィスの役割だ。 「違うんだ、この人は・・・・えーと、・・・」 取りなしつつ、先日出逢ったばかりで名前すら知らない間柄だから、すぐに言葉に詰まってしまう。 「・・・・・・・誰だってんだよ?」 アルヴィスの物言いに、ギンタが拗ねた顔で振り返った。 変なホトケ心出して庇ってんじゃないだろうな?・・・と、言わんばかりの表情だ。 「いや、・・だから・・・」 だが、ここで変な言い方をすればギンタがまた相手に喧嘩をふっかけかねない。 アルヴィスは言いあぐね、口籠もって考え込んだ。 「・・・・・・・・・・・・・・・・」 見ず知らず全くの赤の他人、というのとは一応違う訳だろう言葉だって交わしている。 抱き付かれたのには驚いたし、アルヴィス的にはそういう馴れ馴れしいのは苦手だが・・・・・・・・スキンシップが過度な人間というのは、何処にだって存在するものだろう。 けれど、そこら辺をきっちり最重要ポイントで説明しなければ、ギンタは相手に殴りかかりかねないのだ。 ずっと一緒に暮らしていた家族だから、アルヴィスが親しくない相手からのスキンシップ等を極度に嫌がっていた事も、馴れ馴れしい接触や恋愛関連の事柄を避けていたこともギンタは知っている。 そして、そういう輩を追い払うのは自分の役目・・・とばかりに、ギンタはアルヴィスを守る為ならそこら辺は容赦しない。 ―――――――しかしアルヴィスとしては、そんなことくらいで入ったばかりの大学で騒動を起こされては、堪らないのだ。 平穏無事にひっそりと、真面目に授業が受けられるのならそれでいいと思っている。 変な騒ぎで注目されるのなんて、以(もっ)ての外。 しかも原因が自分だなんて、絶対にご遠慮被(えんりょこうむ)りたい。 「違うんだ、この人は・・・・・」 そんな、危機的状況を回避すべく。 アルヴィスは必死に、引きつりながら笑顔を作って見せた。 「先日、ちょっと顔を合わせる事があって。それで、・・・・」 ――――――名前も聞かず別れたのに、今偶然に出逢ったから・・・などと、そんな風に説明して場を濁し丸く収めるつもりだ。 話題をその時の事に逸らして、名前も知らない男が自分に抱き付いてきたという事実から、ギンタを遠ざける魂胆(こんたん)である。 だがしかし。 「そういうキミこそ、誰やの? こっちが運命の再会喜んでる時やっちゅーのに、無粋に割り込んできて―――――・・・そっちこそ、ナニふざけた事しとるん? それにキミ、見たとこ1年やろ? 自分は2年やから・・・・・先輩への口の利き方、なってないんちゃう?」 アルヴィスを抱き締めていた青年がその長身を生かし、ギンタを見下ろすように睨み付けてきたのだ。 今までの愛想の良さそうな笑みを引っ込め、本来の整った顔立ちでギンタを見つめるその姿は、決して服装のせいだけではなく凄みがあった。 「・・・・・・・・・・・」 ヤ、ヤバそうな人っスよ・・・! ギンタに庇われたアルヴィスの背後で、ジャックがオロオロと小さく呟くのが聞こえる。 外見は何となく柄が悪そうだが、自分の説教じみた話を殊勝な態度で聞いていた事もあるし、ヤバイとまでアルヴィスは思えなかったが・・・・これはもしかすると、ギンタに匹敵するぐらい手が早いタイプなのかも知れない。 こんな、大学のカフェテリアで殴り合いなんか始められたら大問題だ・・・と、アルヴィスは内心青くなった。 関係のない輩がどんなに騒ごうと、こちらに影響が無いならどうでもいいアルヴィスだったが、殴り合いをするかも知れない片方は、れっきとした兄弟関係にある上に原因が自分絡みと来ている。 喧嘩なんかされたら、――――――最悪だ。 「・・・・・・・・、」 何とかこの場を丸く収めたいアルヴィスとしては、とりあえず無理矢理でもギンタを連れてカフェを出るべきか――――――と、考え始めた矢先。 迷惑極まりないことに、『自称・アルヴィス最大の味方』であるギンタが、まず先手の口火を切ってしまった。 「あー、なんだって?! ・・・イキナリ寄ってきてイキナリ抱き締めてきてイキナリ訳わかんねーこと抜かすようなヤツ、先輩なんて思いたくないねッ!!」 「!? ギンタッ・・・・・!」 止める隙も、あればこそ。 誰もが想像するような、理想的に見事なアッカンベー・・・・・思いっきり関西弁の男に舌を出しながら、威勢の良い啖呵を切る。 アルヴィスが口を押さえる前に、ギンタは売り言葉をしっかりと口走ってくれた。 「・・・ウルサイ坊(ぼん)やのォ・・・・・だからキミは、この子の何なん?」 しかし、てっきり買うだろうと思ったギンタの言動に、男は少し顔を顰(しか)めただけで。 ギンタに誘われるまま、煽られはしなかった。 どうやら、やはり見かけほどは物騒じゃないタイプらしい。 というよりかは、ギンタよりは考えが大人で―――――――腕っ節に余裕があるから、ということだろうか。 男の物腰から何となく、ギンタくらいのヤツなら鼻であしらいそうな余裕のムードが感じられる。 「ああ? 俺!? 俺は、アルヴィス最大の、・・・もがっ、!」 「――――――ギンタは俺の同い年の兄弟だ、」 そんな相手にも怯まず、尚も事をややこしくするだろう内容を口走ろうとするギンタの口を今度こそ押さえ、アルヴィスが慌てて説明した。 「・・・悪い、コイツすぐ頭に血が昇るから・・・・!」 だから許してやって欲しい―――――と、背後からギンタを押さえながら付け加える。 先ほどの言動から、相手が自分より1つ上で先輩なら敬語を使うべきかなという想いが頭を過ぎりつつ、既に出逢ったときに説教をしてタメ口だったから今更遅いだろうか・・・などとも考えながら。 「・・・・・・・・・・」 アルヴィスの言葉に、男の視線が此方を向いた。 切れ長で少し吊った・・・・ビー玉のような、明るい青灰色の双眸。 その眼が、すうっと細められる。 「・・・キミの名前、アルヴィス・・・言うんやね」 「・・え? あ、ああ・・・」 今までと打って変わった優しい物言いと、表情に・・・・笑いかけられたのだ、と数秒遅れてアルヴィスは気付いた。 「・・・・・・・・・・・・・・」 彼の笑顔を見たことが無かった訳ではない――――――先ほど抱き付いてきた時だって、初めて声を掛けられた先日だって、・・・・人懐こそうな笑みで話しかけられたのだから。 けれどそれは、何処か演技じみていたというか・・・こう笑えば相手が懐柔出来るだろうと計算しているような笑みだったというか――――――ただ端正な顔に貼り付けただけの、『単なるスキン(外装)』というか・・・そんな嘘くさい印象を受けるものだった。 けれど、今のそれは違う気がする。 とても優しそうで、何故か少し戸惑いが感じられるような・・・・ぎこちない笑顔。 「キレェな名前・・・・アルちゃんって、呼んでもええ?」 「・・あ・・・・・うん・・・」 その笑顔が、勝手に抱いていた彼のイメージと、かけ離れた照れ笑いだった事と。 突然話しかけて来たり、抱き締めてきたりした彼に似つかわしくない、・・・遠慮がちな言い方に気を取られ。 アルヴィスは、言われている言葉をまた良く考えないままに頷いた。 途端に押さえ付けていたギンタが暴れ出したが、もう片方の手で頭を小突いて黙らせる。 「ホンマにっ!??」 彼の切れ長の瞳が嬉しそうに大きく見開かれ、パアッと表情が明るくなった。 整った顔立ちといい、ワイルドな服装といい・・少し近寄りがたい印象を抱きたくなる外見なのに、そんな表情を浮かべると途端に優しく陽気なお兄さん風に激変するのが見事だ。 「これからよろしゅうな、アルちゃん!! あ、自分の名はナナシ、言うねん・・・!!!」 「あ・・・・ああ、よろしく・・・・」 「ヨロシクじゃないだろ!!」 だが男・・・ナナシの豹変ぶりに圧倒されながら挨拶を返した拍子に、掴んでいた手が弛んで、アルヴィスの腕の中からギンタが抜け出し、盛大に喚(わめ)き出す。 ようやく何とか周りの注目を回避して騒ぎを収められるかと思いきや、アルヴィスの期待をアッサリとギンタが打ち消してくれた。 流石、アルヴィスを幼い頃から守ってくれつつ――――――・・・それと同じくらいにアルヴィスを騒動(&面倒)に巻き込んでくれたトラブルメーカーである。 「ナニ和やかに自己紹介しあってんだよ!? アルヴィスお前ちゃんと聞いてたのかっ! コイツお前のことヒトメボレとか言ってたんだぞーーー!!」 びしっと相手の青年・・・いや、ナナシに向かって指を突き付け大声を張り上げる騒動のタネ。 「は? なに言ってるんだギンタ・・・」 しかし、ナナシの話の半分くらいは聞き逃していたアルヴィスにしてみると、ギンタこそが何を言っているんだ?な状態だ。 アルヴィスとしては、ナナシは単に偶然再会し、これから知り合いとしてヨロシクな・・・な状況だと把握しているのである。 だからこれでようやく、丸く収まると思ったのに騒ぎ立て始めたギンタは、迷惑以外の何物でもなかった。 「コイツはキケンだ! キケン人物だから近寄るなよアルヴィス!!」 「おいおいギンタって言うたっけ・・・、キミいくらアルちゃんの兄弟でもその言い方は酷いわ〜〜自分がいつ、危険な事をアルちゃんにした言うねん・・・!?」 「これからスル気だろっ!? 大体アルヴィスはそういうの苦手なんだから近寄るな、このスケベ野郎!!」 「・・・・・ギ、ギンタ・・・」 何とかギンタを黙らせようとアルヴィスも口を挟むが、すっかり興奮してしまったらしい彼は聞く耳を持たない。 そして黙ってくれていればいいのに、相手の青年・・・ナナシも今度は応戦してくる。 「スケベ野郎? そらまあ自分だって、そういうの嫌いやないけどアルちゃんとは取りあえず清い交際から、・・・・」 「そら見ろっ! アルヴィスは、そういうイカガワシイのが嫌いなんだから近寄んなっての!!」 「いかがわしい・・・? 付き合うのが、なんでいかがわしいねん! そしたら恋人関係なヤツらみんな、いかがわしいことになるやろ? お子様やね〜〜〜〜〜」 「〜〜〜そうじゃなくて、アルヴィスは・・・・!!!」 「・・・・あ・・・・いや、・・・・」 ギンタは、アルヴィスがそういった恋愛面を今まで酷く嫌がり、避けていたことを知っている。 だから、ナナシがアルヴィスに言い寄っていると誤解しているらしいので、必死に自分を庇おうとしてくれているのだということは分かるのだ。 ギンタの気持ちが分かるから、アルヴィスも強く否定が出来ない。 例えナナシが言い寄ってきたのではなく(←とアルヴィスは思っている)・・・単なるギンタの誤解からの言動で、事態がよりややこしくなるだろうとしても、だ。 現時点で、ファントムのお陰でその強烈な恋愛関連に対する拒絶感というか、トラウマは解消しつつあり。 ―――――――今はそんなに、仮にもしそんな話題を振られたとしても前のような過剰反応はしないだろうし・・・・実際ファントムと恋人として付き合っているのだからして、ギンタがもう心配してくれる必要は無くなっているのだが。 「・・・・・・・・・・・・・・・・」 こんな場所で今、それをギンタに打ち明けるのは難しい。 恥ずかしいとか、照れるとかそういう問題も多々あるが―――――――そんなことより何より、今の状態でそんな込み入った繊細な内容を口にする気にはなれなかった。 だが、そうこうしている内に言い争いは段々、エスカレートしていく。 ナナシもギンタに煽られたらしく、何故かアルヴィスと恋人同士になったらどうして駄目なのか・・・なんて言い返し始めていた。 アルヴィスは最初のヒトメボレ云々など、要所々々のナナシの好き好きアピールを聞き逃しているから、ナナシとギンタの言い争いのそもそもの原因を理解していないせいで、2人の言動がいまいち把握出来ない事に気付いていない。 困ったな、・・・どうしよう。 「・・・・・・・・・・・」 アルヴィスの焦りを余所に、周囲にはどんどんと騒ぎを聞きつけて人が集まってくる。 ギンタとナナシの声が大きいので、学食に会話の内容も筒抜けだ。 しかも、言い争いの元は自分―――――・・・耐えられない!! 「とにかく、アルヴィスはそういう付き合うとか付き合わないとか、嫌いなんだから諦めろよ!!」 もうヤメテくれ・・・!! と、恥ずかしくて内心悲鳴をあげていたアルヴィスの心境とは裏腹に。 ひときわデカイ声で、しかもアルヴィスの名前を挙げてギンタが言い放つ。 「ほう? すると、なに・・・? アルちゃんは一生恋人作らずフリーやって、キミが決めつけるん? 兄弟かも知れんけど、キミにそこまでの権限あるんかいのぅ・・・?」 ナナシの声はギンタに比べれば低くて抑え気味だが、聞き耳を立てている野次馬達には問題なく聞こえる大きさだ。 もう嫌だ――――――そう思ってげんなりして肩を落としたアルヴィスだったが、次の瞬間。 更に泣きたい羽目に陥(おち)いる事となる。 「ウルサイっ!! とにかくアルヴィスは誰とも付き合わないタカネのハナなんだよ!!! キンカイのカタマリより高ェんだから諦めろっての!!!!」 「!? ギンタっ、・・・・!!!」 慌てて名を呼び制止をかけたが、もう遅かった。 「!?・・・あ、悪ぃ・・・・」 ばつが悪そうにギンタも口を閉ざすが、もはや飛び出た言葉は回収出来ない。 「・・・・・・・・・・・・・・・・」 この際、ギンタが口走ったタカネのハナが『高嶺の花』で、高い山にあり手が届かない花の事でなく、決して高い値段の花ではない事とか。 キンカイで『金塊』・・・既に金の塊(かたまり)である事なんかは、ギンタの頭の程度を周囲に知らしめるだけなのでアルヴィスとしては、どうでもいい事だったのだが。 ――――――――思いっきり、周りにアルヴィスがフリーだと言いふらしてくれた事が大問題である。 今までの経験上、そういった関係の有無をアルヴィスが明かさないでいる内は割と、周囲も平穏なのだが・・・・・・・・アルヴィスが誰とも付き合っていない、とバレた途端に何故か騒がしくなってしまう事が多い。 放課後の呼び出しなど日常茶飯事だったし、宿泊研修や修学旅行、炊事遠足・・・部活の合宿などなど、・・・・学校行事の都度、告白される機会も頻繁になる。 幼い頃から人一倍、そういった恋愛関連への興味が無いどころか拒絶すらしていたアルヴィスなのに、なぜだか人一倍・・・というより二倍も三倍も十倍も・・・相手から望まれることが多いのだ。 そしてフリーだという事が大っぴらにされたら、その率が更に何倍にも跳ね上がるのが常だったのである。 だが実際のところ、アルヴィスはもう既にファントムという恋人が居るのだから、フリーでも何でもないし今ここでギンタに訂正すればそれで済むことなのだが・・・・。 「・・・・・・・・・」 アルヴィスにはどうしても、その事実が言えなかった。 ギンタの性格上、ファントムと自分が付き合ってるなんて知ったらまた、絶対に場所も考えずに驚き騒いで、また周囲の注目を浴びる羽目になってしまう。 更に、今知り合ったばかりだが、ナナシの言動を見る感じではギンタと一緒に騒ぎそうな気配が濃厚だ。 フリーな事を否定しないと、後々で面倒な事になったりする気がとってもしていたが―――――――それでもアルヴィスは、この注目されている状態で余計に目立つような行為がどうしても出来なかったのである・・・。
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