『君のためなら世界だって壊してあげる』 ACT 41 『交差した道の行方 −34−』 「・・・・あ・・・・っ、?!・・・やっ、・・・あうぅ・・・!!!」 それからの展開は。 アルヴィスにとって、本当に天地がひっくり返ってしまってもこれ程には――――――というくらい、衝撃的で受け入れがたく、かつ、驚愕すべき行為の連続だった。 解放間近だった自身を、塞き止められたまま。 アルヴィスはファントムの指を、身体の奥深くへと受け入れさせられた。 「・・・ん・・・うっ! やああっ、・・・やーーーー!!!」 性行為の最終地点が、何を目指すのかを知らなかった訳ではない。 男同士の場合は後ろを使うというのだって、知っている。 けれども、知っているだけだった。 それがどんな感覚をもたらし、自分がどうなってしまうのか、そこまで知っていた訳じゃないし実感として分かっていた訳でも無い。 後ろを解(ほぐ)される――――――・・・・後花に指を入れられ掻き回されるという行為によってもたらされる感覚が、どんなモノなのかを知っていた訳では無かった。 解放して貰いたくて、思考が全てそっちに向けられていたから。 指を後ろに挿入される―――――その行為への恐怖は、実際に挿れられるまで味わわずには済んでいたのだが。 「・・っ、も、もう、・・・だめだ、・・・何か、やだっ!・・・ぅあああ・・・・・!!!」 堪らず、叫ぶ。 ハッキリ言って、――――耐えられないと思った。 気持ち悪すぎる。 ファントムが上手いのか、痛みは感じないが苦しい。 奥へと指が差し込まれ、動かされる度に、・・・・物凄い違和感と圧迫感があり。 アルヴィスの先走りの蜜で、充分に内部を潤わされたせいで中がヌルヌルとしていて変な気分になる。 しかも、刺激される度に腸壁が受け入れを拒絶したいのだろう・・・したいに決まっているが、押し戻すような反応をしてしまう。 要するに、指を吐き出そうという動きをするのだ。 つまり、・・・・。 「う・・うっ、・・・駄目だファントム、俺、・・おれもう、・・・・ああ・・・・あ・・・!!!」 切羽詰まり、アルヴィスは泣き声を上げた。 塞き止められているアルヴィス自身は、相変わらず解放を訴えて勃ち震えている状態だが、もう片方の手に差し込まれている箇所が強烈な感覚を与えてくるせいで、相殺どころか打ち消す勢いでイケない切なさより、苦しみが勝っている。 差し込まれる指を何とかしたくて、震える手を伸ばすがあまりの苦しさに力が入らない。 けれどこのままでは、人間としてしてはならないだろう過ちを犯してしまいそうだ。 「・・・っ、駄目、もう、・・・動かさな・・・、なんか、・・・う・・・・・」 勝手に溢れてくる涙のせいで、ぼやけた視界の中。 懸命に瞬きをして、自分に無体をしている男の顔を見つめた。 「・・・・・アルヴィス君・・・・・?」 アルヴィスの必死の訴えに、ファントムがようやく動かしていた指を止める。 「ファントム、・・・俺、もう・・・・!!」 こんなのは嫌だと、ここぞとばかり訴えた。 また指を動かすのを再開されたら、もう拒絶の言葉だって吐けなくなってしまう。 だが、一見アルヴィスの言うことなら何でも叶えてくれそうな、悪魔みたいにキレイな顔した青年は全く動じなかった。 「我慢だよアルヴィス君。ここでちゃんとしとかないと、アルヴィス君が後で辛い思いしちゃうからね・・・・?」 見てくれだけじゃなくて、本当に悪魔かも知れない。 「・・・・・いや俺、・・・いま・・・辛いんだけど・・・っ、・・!!」 「んー、でもねえ。後の方が絶対、もっと辛いからさ? 今我慢しておくべきだと僕は思うんだよねっ」 「・・・・・・・・・・・・・・・」 アルヴィスが、幾らのっぴきならない状況なのだと訴えても暖簾(のれん)に腕押し―――――――ヌカクギ状態。 挙げ句に。 「安心して力抜いていてね? 大丈夫、・・・出ないよ。アルヴィス君、検査続いててご飯抜いて点滴だったし。心配しないで、身体ラクにしていて」 まあ、出ても構わないんだけどね―――――・・・両手が塞がっている為に、顔だけをアルヴィスに近づけ、また軽くキスをしながらファントムはサラリと言ってのける。 ニッコリ笑った顔はいつも通り天使のように美しく、口調は甘くて羽みたいに軽やかだ。 しかし、言っている内容はかなり、―――――えげつない。 「・・・・う、・・・・俺はかまわなく、・・・ない・・・っ・・・!!」 声を出すだけでも身体に力が入り、余計な苦しみを味わいながらアルヴィスは叫んだ。 「・・・そんなの絶対、・・・・無理だあり得ない、・・・いやだーーー!!」 出ないとか、出ても構わないとか、・・・まるでゲームの敵キャラの出現率でも語っているような軽い口調だったが、それはアレの事で、アレな生理現象を指している。 もちろん、出血とかそういった事でも無い。 「・・・・・・・・・もう、・・やだって・・・言ってる、だろっ・・!!?」 声が途切れ途切れになり時折震えが混じるのは、天使のような顔でファントムが悪魔の所業を致している為だ。 身体の、敏感で弱い部分を文字通り握られ。 体内の奥深くへと、その侵入を許した状態で。 アルヴィスはわき起こる焦りと怒りのままに、身を捩る。 「あ・・・っ、・・・う・・・・!!」 弾みで体内にあるファントムの指が一瞬鋭く、繊細な粘膜の内側を擦りあげて息が止まるが、気を振り絞って藻掻き続けた。 足をばたつかせ、力の入らない腕でファントムの胸板を押し返すようにして抵抗する。 身体の構造的に、この行為は無理だと思う。あり得ない。 それなのに、ファントムは容赦なくアルヴィスの後ろに指を突っ込んで、こんなに苦しいと訴えているのに内臓を引っ張り出すかのような強引さでグリグリと探るのだ。 「ああっ!・・あ、・・・あうっ、・・・もう・・・駄目だ動かさ・・・ない、・・・で・・・・・!!」 自分でも情けない声を出していると思うが、懇願せずにいられない。 必死に藻掻いても暴れても、がっちりと押さえ付けられ固定するかのような勢いで指を挿入されていては――――――もう苦しみの元凶にお願いするしか手立てが無かった。 「んうっ、・・ひっ、・・・やあぁ・・・!! ・・・んっ、・・苦しっ、・・や・・もうホントにっ、・・うああ〜〜・・・!!」 これはもう、人間としての尊厳の問題だとアルヴィスは思う。 恥ずかしいとか苦しいとか、最早(もはや)そんなことを言っている場合ではない。 アルヴィスは動物では無いのだ・・・・いや正確には人間は動物だが、動物とは一線を画す理性や倫理というものがあるのだからして。 「やだっ、・・・やだやだやだっ!! ・・・もうやだって言ってる・・・・・っ!!!」 「アルヴィス君、そんな暴れないで。・・・かえって辛いし苦しくなっちゃうから・・・」 「・・・だったら・・・っ、・・・ぬ・・抜けよ・・・・・っ、・・・んううっ・・・!」 「ほら、力入っちゃうからだよ? ねっ、・・ゆっくり深呼吸しようか・・・早く息吸っちゃ駄目だよ・・・ゆっくりゆっくり、・・はい、吸ってー・・・吐いてー・・・?」 「んっ、・・・そ、んなのいいから、・・・抜けって、・・・言って・・・るんだバカー・・・あああっ、・・・!!!」 紅潮し、涙と鼻水が出てきた顔で睨んでも、少しも迫力は無いだろうが。 ギッと睨んでアルヴィスはファントムが宥めるのも聞かず、泣き声で嫌だと叫び続けた。 今は話で中断して、体内に指はあるが動かされてはいない。 今のウチにこの状況を改善しなければ、とんでもないことになる。 また、動かされ始めたらもう・・・抵抗どころか、言葉すら上手く吐けない。 人前で××するなんて、―――――――絶対に耐えられない。 そんなのがエッチの大前提だというのなら、一生身体なんか繋げなくて構わない。 そんな変態行為を強要するというのなら、ファントムとだって付き合えなくてもいい―――――――アルヴィスはそこまで思い詰めていた。 「ひっ、・・・う・・・ううぁ・・・!! もう・・も・・・やだ・・・あっ、・・ああ・・・ぁ・・・!!」 息が上手く吸えなくて、頭がガンガンと痛み出す。 目の前が白く霞むのは、溢れ出す涙のせいなのか酸欠のせいなのか、アルヴィスにも良く分からなかった。 埋め込まれた指が辛くて、解放を塞き止められたままなのが苦しくて、アルヴィスは身体を震わせて嗚咽する。 何だか身体がぐんぐんと膨れあがり、挙げ句にぱんっ!と破裂して死んでしまいそうな気さえした。 こんなに苦しいのに、喘息の発作が起きないのが本当に不思議だ。 さっきの、帰ってきてすぐに薬を吸引させられたのがまだ効いているのだろうか。 普段効いて欲しい時に効かず、こんな時にばっかり、効くなんて―――――――!!! 「・・・・仕方ないなあ、・・・もう・・・」 そんなアルヴィスの様子を見て、ファントムが柔らかく溜息をつく。 「大丈夫だって言ってるのに。・・・そんなに叫んだら、咳出ちゃうでしょ・・・?」 言いながら、アルヴィスの口を塞ぐようにキスをしてきた。 そして、一瞬の隙を狙ってアルヴィスの体内に埋めていた指を更に深くする。 「!?? ・・・・・・っ、・・・」 びく、と勝手にアルヴィスの身体が跳ねた。 体内深くに埋められた指が、中でくっと曲げられ、ある一点を押し上げた瞬間。 アルヴィスの身体の中心から脳髄まで、あの真っ白になるような快感が突き抜けたのだ。 直接に前を触られていた時より、遙かに強い快感。 アルヴィス自身の根元をファントムが押さえ付けていなければ、今の刺激だけで達してしまっていたかも知れない。 「・・・っ、う・・・っ、・・・ぅ・・・・・!!?」 声もなくヒクヒクと喉を震わせるアルヴィスに、ファントムはその感じる一点を教え込むように優しく指先で触れながら楽しげに口を開く。 唇が触れ合う程の、至近距離。 唇に掛かる吐息にすら反応してしまいそうな程、既にアルヴィスは感じ入っていた。 「――――――気持ちよかった? ここはね、前立腺っていうんだよ。・・・男だったら、触られるとイキたくて堪らない気持ちになる場所・・・・・気持ちいい・・・?」 「・・・・あ・・・あっ、・・あああっ、・・・んん・・・・・!!!」 ファントムは相変わらず、その前立腺・・・というらしい箇所を擽るように刺激してくる。 酷く焦れったい動きだ。 すごく感じる場所なのに、的確にその場所を触ってくれているのに、・・・刺激が弱い。 ――――――もっと、強く擦ってくれれば。 ――――――もっと、ぐうっとそこを押してくれれば。 ――――――いっぱい触って、・・・ぐちゃぐちゃに掻き回してくれればいいのに・・・・・!! 身体が求めるままに、アルヴィスの腰はいつの間にかファントムに合わせて揺れ始めていた。 「んっ、・・ああぁ・・・・・」 アルヴィスの気持ちにシンクロするのか、内壁も自然とファントムの指を強く締め付ける。 それがまた刺激になって、アルヴィスは甘い呻きを漏らした。 ―――――気持ちいい。 背筋から一気に脳天へと駆け上り、呼吸も思考も何もかもを止めてしまう程の強烈な甘い痺れ。 そこを刺激し続けさえしてくれていれば、もうどうされても構わなくなってしまうような・・・抗う意識を霧散させる悦楽だ。 それなのに、ファントムは優しくしか触れてくれない。 もう少しだけ、強く触れてくれれば。 もうちょっとだけ、奥に・・・・・。 「・・あああ・・・っ、もう、やだ・・・・!!」 さっきとは別意味で、アルヴィスはまた泣き声を上げた。 「それ、・・それじゃ・・・やだ・・・・ぁ、あ、・・・・ああっ、・・・!!」 本当に、先ほどから泣いてばかりな気がする。 男なんだから、泣くなんて情けないと思うのに勝手に涙が出てくるのだ。 「――――そんなに泣かないでアルヴィス君。もうちょっとだけ。もう少し我慢してね・・・慣らさないとだから・・・」 ファントムにそう言われ唇で涙を吸い取られても、後からあとから水は溢れる。 だって、・・・焦れったい。 イキそうなのに、イカせてくれない。 もっと強く触って欲しいのに、・・・してくれない。 おかしくなりそうだった。 こんな感覚、知らなかったのに―――――――知らないままで良かったのに。 「・・・う・・・っ、やだ、・・・もう、・・・おかしくなる・・・・っ、・・・・!!!」 嗚咽が漏れる。 涙が後からあとから溢れ、止まらない。 身体も勝手にびくびく震え、まるで力が入らない。 頭の中は、気持ちよくしてもらう事しか考えられなくなって、身体の中心が何かを欲しがって強く疼いている。 けれど、どうすればこの疼きが収まるのか分からない。 埋め込まれた指で触れられている箇所を、もっと擦り強く押して貰えばすごく気持ちよくなれる気はした。 だが、その後にどうかなってしまいそうな不安もある。 こんな感覚を知ったのは初めてだから、押されて気持ちよくなったらどうなってしまうのか想像が付かないのだ。 じゃあ、――――――イけばいい? ファントムが塞き止めている、この指を外して貰えれば。 それで、ラクになれるのだろうか・・・・・・・・・・? 「・・・もう、やだ・・・っ、・・・指、指はずして・・・・・っ、・・・・!!!」 理性が溶けてしまった脳で必死にそう結論付け、泣きながら訴える。 どのみちもう、限界だ。耐えられない。 ファントムの指をきつく喰い締め、自ら腰を揺らして求めている事にも気付かぬまま、アルヴィスは訴えた。 「・・中、のも・・・取って・・・・!!」 張り詰めている自分自身が解放できず、それが苦しくて堪らず。 中に埋め込まれた指が擽るように撫でている一点が、切なくて焦れったくて苦しくて堪らない。 「じゃないと・・・・変に、・・・なる・・・・っ、・・・!!」 苦しすぎて、本当にもう神経が灼き切れそう―――――――と思った時。 ようやくファントムは、アルヴィスの中から濡れた指を引き抜いてくれた。 「・・・・・・・・・、・・・・・?」 けれど予想に反し、身体の疼きは収まってくれない。 相変わらず、ひくひくと敏感な粘膜が誘うように蠢き、疼きは増す一方だ。 疼いて粘膜が蠢く度に、中に塗りつけられた蜜がグチャグチャと濡れた音を立てる気がして、アルヴィスは身を震わせた。 「・・・・んっ、ファントム、・・・こっち・・・も、・・・・」 前を解放してしまえばラクになれる筈と、アルヴィスは喘ぎながらファントムの自分を塞き止める指に手を這わせる。 しかし、ファントムは戒める指を緩めてはくれなかった。 「この方が、アルヴィス君が痛くないと思うから・・・・」 「・・・・・?」 解放を塞き止められている辛さに、泣き顔のままファントムを見つめるアルヴィスに。 ファントムは意味不明な事を言いながら覆い被さってきて、もう一度深いキスを仕掛けてきた。 「愛してるよ。僕に、アルヴィス君を頂戴・・」 「・・・・ん・・・・っ、・・・・?」 アルヴィスの片足が持ち上げられ、膝裏をぐっと押される。 そして次の瞬間、疼いている箇所の入り口に指では無い何かが押しつけられるのを感じた。 「・・・・・・・・・・・!?」 熱くて、入り口よりも明らかに大きな質量の何か。 それは、アルヴィスの狭い入り口を押し広げるようにして中へと進入してくる。 「・・・あ・・・・・・っ、・・・!」 その時になってようやく、アルヴィスは実感を持って己の立場を自覚した。 そう、・・・初めて尽くしで翻弄されすぎて、何が何だか分からなくなりかけていたが―――――――これはセックス。 自分の体内へ、ファントムを受け入れなければ終わらない行為なのだ。 「・・・・・・・・・・、」 だが、無理だろう。――――――入る訳がない。 知識としては知っていたが、感覚的に無理なのが分かる。 きっと知識として伝わっていたアレは、・・・嘘だ。紛い物だ。 誤報だったのだ。 ・・・・・質量的に絶対、無理。 指であんなに苦しかったのだから、絶対に不可能。 第一、受け入れる器官ではない――――――そんな事が、医者である筈の彼に分からない筈がないと思うのに。 アルヴィスの焦る気持ちと裏腹に、その狭い入り口に突き破ろうとする圧力が掛けられる。 「・・・・っ、・・・ん、・・・やっ、・・・!!」 入るはずが無い――――――そう思うのに。 その圧倒的な質量の塊は止まることなく、ぐうっとアルヴィスの内部へと突き進んできた。 「・・あっ、・・あうっ、・・・・うああぁ・・・!!」 ―――――苦しい。 先ほどの指など、比較にならない圧迫感だ。 耳ではなく体内から、メリメリと受け入れている箇所が軋む音を感じる。 狭く閉ざされている箇所が、無理矢理に肉の刃によってこじ開けられている音だ。 「・・・う・・っ、あ・・・・痛っ、・・・痛ぁ・・・・っ、・・・・あ・・・・・!!」 悲鳴のような声が、自然と口から迸った。 苦しくて、―――――痛い。 内臓が口から出てきそうな圧迫感と、切り裂かれる痛み。 目の奥で、火花が散った気がした。 腰が進められる度に、目の奥がチカチカする。 「・・・・っ、・・・あ・・・・あああ・・・・痛いっ、・・・」 足ならば、足を押さえて。 手が痛いなら、手を押さえて。 腹が痛いなら、腹を抱えればいい。 そうすれば、ラクになる。少しは気が紛れる気がする。 けれど、この痛みはどうすればいいのだろう。 どうしたら和らげられるのか、分からない。 身体の中心を引き裂くような、激しい痛み。 それはどうしたら紛らせられるのか、耐えられるのか――――――分からない。 「はっ、・・・う、・・・ああ・・・・・ぁ・・・・・!!」 痛すぎて、呼吸すらままならなかった。 上手く息が吸えない。 喉が詰まる。 「――――――・・・・」 耳元でファントムが何か言っているのが分かったが、その言葉の意味を理解する余裕は全く無かった。 「・・・・っあ・・・・あ・・・・うっ、・・・う・・・・・!!!」 痛いから止めてと訴えたいのに、言葉が紡げない。 身体を強張らせ、喉を反らしながら呻くのが関の山だ。 「んう〜〜〜っ、・・・あ・・ああぁ・・・・・・!!」 自分に苦痛を与えているのがファントムだというのに、その背をしっかり抱き締め爪を立てながらアルヴィスはただ身体を裂く苦痛に身悶えた。 もう自分が何に縋っているのか、どういう体勢でどういった状況なのかを把握するだけの余裕などまるで無い。 ただもう、必死だった。 縋りつく腕に力を込め、息を詰めて、少しでも身体から痛みを逃れさせようと――――――それだけしか考えられなかった。 「・・・・・ごめんね、もうちょっとだから・・」 ファントムは、塞き止めていたアルヴィス自身への愛撫を再開してくる。 苦痛にすっかり萎え、元気を失った若茎の先端に、また蜜を塗り込めるように撫でやわやわと優しく扱き始めた。 「・・・あ・・・うっ、・・・・・・」 激痛の中で生じた快感に、アルヴィスは混乱して身を捩った。 「もう少しで全部、・・・はいるから」 「・・あ・・・っ、ああっ、・・・やっ、・・・んっ、・・・ああああ・・・・・!!!」 前を触られる心地よさと連動して、後ろがファントムを締め付ける。 締め付けると、体内にあるファントムをはっきりと感じてしまい、圧迫感や痛みそして苦しさに呻く羽目になるのだが、―――――――そこでまた絶妙な間隔で前を刺激され、アルヴィスは啜り泣いた。 痛いのか気持ちがいいのか、分からなくなる。 自分がどっちで泣いているのかも、分からなくなってしまう。 「うっ、・・あ・・ああ・・・・あ、あ・・・・・!!」 「・・・力、出来るだけでいいから抜いていてね・・?」 ―――――入ってくる。 身体の奥の疼いている箇所に、ズブズブと深くふかく入り込んでくる。 「・・あ・・・っ、あっ、・・やっ、・・・やああああっ、・・・あーーーー」 内蔵を深々と穿ち、柔らかな粘膜を擦り上げ、ねじ込むように。 「・・・・は・・・あっ、あ・・・! んっ、やっ、・・・や・・・あっ、・・・」 その刺激に、アルヴィスは身悶え。 無意識に身体をベッドの上の方へとずらそうとしたが、ファントムにしっかりとシーツに縫いつけられるように固定されており、丁度、標本などで蝶がピンで貼り付けにされているのと同じ状態で身動きはままならない。 幾ら締め付けても、アルヴィスの中心を穿つそれはゆっくりと、だが確実に身体の最奥へと進入してくる。 「――――・・・いい子。頑張ったね・・・アルヴィス君の中に、僕が全部入ってるよ・・・?」 やがて。 全てを挿入し終えたらしくファントムがよしよしと、労(ねぎら)うように頭を撫でてきたが、アルヴィスには言葉を返す余裕など無かった。 「・・・・・・・・・、」 ハッキリ言って、・・・疲れ切ってしまった。 解放を塞き止められたまま、イキそうでイカない程度に散々前を刺激され。 挿入の激痛と、イキたくて堪らない快感を交互に与えられて、痛みと快楽のどっちを認識すればいいのか混乱し戸惑い、・・・・疲れ切ってしまった。 そのお陰でファントムを深々と受け入れているという、相変わらずの物凄い違和感と圧迫感、そして苦痛が多少和らいでいるのか――――――・・・挿入されたままなのに、苦痛で泣き叫び続けなくても良くなってはいたけれど。 この非日常的な行為の中で、少しだけ。 アルヴィスは今、落ち着くことが出来ている。 「・・・・・・・・、」 ――――――・・・もう嫌だ! 話せる程の余力は無いから、内心で。 アルヴィスは、強くそう思った。 「・・・・・・はぁ・・・」 のし掛かられ、こんな風に串刺し状態なのは苦しかったが、ファントムが動かないでいてくれるので、少しだけ安堵の息を吐く。 もうちょっと。 もうちょっとだけ、このままなら。 苦しいけれど、何とか我慢出来る気がした。 身体の奥がジンジンと疼くように痛んでいるが、我慢できない程では無い。 ――――――ファントムが、動かなかければ。 エッチって、・・・・・これで終わり、・・・だよ・・・な・・・・・!? ・・・・もう、いい。 塞き止められている自分自身も、今なら何とか、鎮められそうな気もするし。 挿れて、抜いたらそれで終わり。 それでこの、恋人の儀式とやらは終わる筈なのだ。 抜く時にまた、・・・・さっきの挿入時の痛みが襲ってくるかも知れないと思ったら、それはすっごい、嫌なのだけれど。 「・・・・・・・・・・・・・・」 自らの乏しい性知識を総動員して、アルヴィスは必死に考えを巡らせる。 大好きなファントムがすることだから、アルヴィスだってそれなりに受け入れたいとは思った。 恥ずかしいことでも、拒絶したくなるような行為でも、大丈夫するのが当たり前だよと言われたら、―――――――頑張ってみようとは思った。 だけどやっぱり、・・・これは無理だ。 覚悟した次の瞬間には、その覚悟自体を撤回したくなる羽目になってるし、自分自身がもう訳が分からない状態に追い込まれ過ぎる。 確かに今まで経験が無いくらい程の快感を知ったし、自分の本能とも言える生理的欲求も目の当たりにした・・・・・・けれど。 でも無理だ。 本来受け入れるべき器官では無い場所で、ファントムを受け入れられただけでも奇跡だ。 これ以上されたら、本当に死ぬ。 ――――――死んでしまう。 今だって、身の内にファントムを納めているだけで、体内がいっぱいになっている感じがして酷く苦しいのだ。 ちょっとでも身動きしたら、限界まで広げられ隙間無くファントムを包んでいる粘膜が悲鳴を上げることだろう。 無理だ、限界なのだ。 耐えられなくて、・・・・・・・・・死んでしまう。 せっかく、退院出来て生還出来たというのに天国へ逆戻りだ。 ファントムに自分なんかのせいで、殺人の罪など犯して欲しくない。 だから。 「・・・・・ファントム、・・・・っ」 言葉を伝えようと身体に少し力を込めただけで、後ろが勝手に締め付けてしまい呻きながら。 アルヴィスは、必死に声を振り絞る。 「・・・・もう、・・・駄目だ、・・・おれ・・・」 我慢できない。 だから、痛くないように抜いて――――――と震える声で訴えようとしたアルヴィスに。 ファントムは繋がったままの状態で、今頃になってようやく自らの上半身の服を器用に脱ぎながら、鬼のような内容のセリフを口にした。 「・・・もう馴染んだ? そろそろ動いてもいいよね・・・?」 「・・・・・・・・・・・・は?」 耳を疑う。 アルヴィス的にあり得なさすぎて、言葉の意味を掴み損ねた。 ――――――意味は掴み損ねたが、アルヴィスはファントムの行動でしっかり身体で理解する羽目となる。 「じゃあ動くよ・・・・? 初めてだからね、うんと優しくしてあげる・・・」 「・・ぅああ・・・・・っ、・・・!?」 あろう事か、ファントムはアルヴィスの腰骨を掴んで、そのままガツガツと腰を打ち込んできたのだ。 ご丁寧に、アルヴィス自身を塞き止めた指は、外さないままで。 「・・あ・・っ、・・あっ、あっ、・・ああああっ、・・・・や・・・・・・、アアーーーーーーッ・・・!!!」 目の奥でまた、激しく白い火花が散り。 喉から勝手に、大きな声が迸り出た。 思考がまた、ストップしてしまう。 「・・・んああっ、・・・あっ、・・ああああっ、・・・やめ、・・・動かな、・・・あああーーーー!!!」 ぐちゅっ、ぐちゃっ。 濡れた音がアルヴィスの耳を打ち、敏感な粘膜の内側をファントムが強く擦り上げる。 ねじ込むように奥へと突き上げられ、内臓を引き摺り出す勢いで抜かれる抽送が繰り返されアルヴィスは激しく喘いだ。 「あ・・っ、うう・・・!! ああっ、・・・あああっ、・・・やっ、・・・・痛いっ・・・・」 「・・・嘘つき。痛いだけじゃないよね・・・?」 「っ、・・・うそ、・・・じゃな・・・・あっ、あ、あ、・・・・!!」 逃れようと身悶えるアルヴィスを押さえ付け、ファントムが中を探るように腰を使ってくる。 粘膜の感じる場所を的確に狙い、ファントムが中をぐっと穿ってくると頭の中が真っ白になりそうなほどの快感を覚えて、アルヴィスは啜り泣いた。 「・・やぁ・・・ん、そこ、・・・・そこ、しない・・・・で・・ぇ・・・・!!」 「気持ちいいんでしょ、ここ? ・・・・すごく締め付けてくるよ。気持ちよくて、もっともっとって言いたいんだよね・・・?」 「んっ、・・・や・・・そん・・なことないっ、・・・やだっ、・・・やだやだやだ・・・・っ、・・・!!!」 ファントムの言葉に羞恥を煽られ必死に否定するが、身体はアルヴィスを裏切って、イイ部分を突かれると厭らしくヒクヒクと締め付けているのが分かる。 「アルヴィス君の中、気持ちいいよ・・・? ここ擦ってあげるとすごい締まる・・アルヴィス君も僕のが気持ちいいんだね・・・」 「・・・やっ、・・・あ・・・・あぁ・・・・・!!」 握りしめられたままのアルヴィス自身が解放を求めて、穿たれる刺激に連動し切なく先端を震えていた。 「・・・・んっ、・・・う・・・・あああぁ・・・・・」 内側から押し上げられ膨れあがった欲望が、出口を塞き止められているせいで解放出来ずに体内で荒れ狂う。 「・・・・や・・・っ、もう・・・おかしく・・・なる・・・・・っ、・・・・!!」 感じるままにファントムを締め上げ、アルヴィスは泣き声をあげた。 「・・・・・うっ、・・・ぅ・・・・!」 受け入れている箇所が、限界以上に広げられピリピリとした痛みを訴え。 体内深くに穿たれている杭が、尋常ではない圧迫感と灼熱感を与えてくる。 相変わらず内蔵を押し上げるような気持ち悪さが付随していて、気を抜くと吐いてしまいそうな気がする――――――のに。 「・・・あっ、・・ああ・・・んっ、・・・やあああっ、・・・!!」 びくびくと身体が跳ねて、苦痛じゃない響きを帯びた声を上げてしまうのは。 さっきファントムが、指で刺激したある1点―――――前立腺部分を、突き上げてくるからだ。 敏感な粘膜を擦られると、息が止まりそうな程の快感を覚える。 「・・んっ、・・・こうするの好き・・? すごく僕を締め付けてくれる・・・」 「あああっ、・・・や・・・っ、・・・・駄目、そこ、・・・そこ・・・・やめっ、・・!!」 堪らずにアルヴィスは絶叫する。 指先で軽く押されただけで、頭が真っ白になるくらい感じてしまった場所だ。 そんな箇所を、指など比較にならない存在感を持つモノで強く擦り上げられ、切っ先を押しつけられたら――――――気が変になりそうなくらいの刺激を受けてしまう。 「あうっ、・・あっ、あっ、ああっ、・・・・や、や・・・あぁ・・・・・!!!」 痛い。 苦しい。 それなのに、・・・・奥が気持ちいい。 「あ・・・・んっ、・・・あうっ、・・あ・・・・あーーー・・・・!!」 ファントムにその部分を突かれる度に、身体が勝手にビクビク跳ねた。 限界なのに。 少しも余裕が無いくらいに受け入れているのに、後ろも勝手にファントムを締め上げ余計な刺激に声が出てしまう。 「・・あっ、もう・・・やだ・・・っ! 動か、な・・・いで・・・・・、・・・・・!!」 内蔵を掴まれて揺さぶられているような、とても受け付けられない感覚だというのに。 背筋を凄い勢いで這い上り、脳天を焼き尽くすかのような強い快感が次から次へと生じてくる。 痛いのに、酷く気持ちがいい。 中で動かされる度に、粘膜を擦られる度に、息が詰まりそうな程の悦楽を覚える。 「ねえ言って、アルヴィス君・・・・」 耳元で、ファントムが甘く囁いた。 「嫌じゃない、気持ちいいって。・・アルヴィスにもっと挿れてって、・・・僕にお願いして・・・?」 「・・・う・・っ、・・そ・・んなことっ、・・・あっ、あっ、・・・あああ・・・・・・!!」 耳朶を柔らかく噛まれ流し込まれる、毒液のような言葉すら、今のアルヴィスには快感になる。 とんでもない物言いだと思うのに、怒るどころか流されてしまいそうになった。 「言えたら、・・・もっと気持ちよくしてあげる。アルヴィス君の気持ちいいとこ、もっともっと、・・・いっぱい突いてあげるよ・・?」 「・・・・ん・・・っ、・・・ああ・・・・ん、むりだ・・・言え・・・ない・・・・っ、・・・」 僅かに残った理性で、必死に首を振る。 もう、ファントムの言葉の内容すら、はっきりとは理解出来なくなっていた。 酷く卑猥な言葉を囁かれているんだろう、とは思うのだが・・・・快楽に浮かされた頭では意味が掴めない。 「ああっ、・・・やあっ・・・気持ち、い・・・!!」 気持ちがいい。 気持ちが良すぎて、何も考えられなくなる。 馬鹿の1つ覚えのように、思っていることを口走る事しか出来なくなる。 「ああ・・・あ、・・・あ・・・・・ん、・・・・あっ、・・いい・・!」 体内に深々とファントムを迎え入れ、先ほどまで酷く苦しくて辛くて痛かった筈なのに、・・・・圧迫感は相変わらず存在するのに、――――――今はそれが堪らなく気持ちがいい。 ぎりぎり一杯まで押し広げられた粘膜を、軋むようにして擦られるのが堪らなくいい。 張り詰めたアルヴィス自身のちょうど裏側にある、内壁を押し上げられると頭の中が真っ白になるほどの快感に息が止まりそうになった。 目が眩むほどの悦楽とは、こういう事を言うのだろう。 「ああ・・・っ、・・・・あうっ、・・・・気持ち、・・・い・・・・・っ、・・・!!」 アルヴィスは無意識に足を開き、ファントムをもっと迎え入れたいというように腰を揺らした。 「あ・・・んっ、中・・・気持ちいい・・・っ、・・・ファントムの、挿れられるの、・・・気持ちい・・・・っ、・・・ああ・・・・!!」 「うん、・・・気持ちいいね。僕も気持ちいいよ・・・2人でもっと、気持ちよくなろうね」 「擦れるの、いい・・!! あ、もっと・・・もっと・・・・!!」 ファントムの言葉にも、半分意味が分からなくなりながら素直に頷く。 アルヴィスはファントムにしっかりと抱きつき、自らその腰に足を絡ませた。 こうすればもっと気持ちが良くなるのだと、身体が理解しているのだ。 「アルヴィス君をいっぱい気持ちよくしてあげる・・・。覚えていてね? アルヴィス君をこうやって、気持ちよくしてあげられるのは僕だけだよ? だから僕以外とこういうことしたら駄目だからね・・・?」 「・・・・んっ、・・・うん、・・・わか・・・ったから、・・・もっとぉ・・・・!!!」 思考を灼き尽くす悦楽に、何も考えられなくなる。 繋がった箇所から伝わる愉悦に脳が支配され、2人をより深く交わらせていく。 感じているのはお互いの事だけで、それ以外は何も存在しない。 相手のことだけを見つめ、感じ、快楽を分かち合う―――――――それだけが全てになる。 程なくして。 快感にはさして耐性のないアルヴィスが限界を訴えて、また音(ね)を上げた。 「ああんっ、・・・あっ、・・・もう、・・・もうイキ・・たい、・・・出したい・・・・っ、・・・ああ・・・あ・・・」 塞き止められていなければ、既に何度達していたか分からないだろうアルヴィス自身は、まだ1度しか解放を許されていない。 体内を激しく掻き回され強い悦楽を味わいながらも、達することが出来ないままで。 アルヴィスは耐えきれずもう完全に理性を失い、ファントムに強請った。 「・・・ふふっ・・アルヴィス君のここ、すっごく堅くなってるね・・・もう我慢できない・・・?」 腰の動きを止め、ファントムが根元を塞き止めている手を少しだけ緩めて、軽くアルヴィス自身の先端を擦ってくる。 「っああ・・・!!」 アルヴィスがびくっと震えた弾みに先端の窪みが呼吸するように口を開き、白く半透明になった蜜がトロトロと溢れ出てきた。 「あれ? ・・・もうイッちゃってた? 女の子みたいだ・・・」 「・・・・っ、・・・うっ、・・・う・・・・」 少しだけ驚いたようなファントムの言葉にも、アルヴィスはもう返せる余裕は無かった。 解放されない辛さに身体が震えてきて、また息が上手く吸えなくなってくる。 自分が既にイッてるとかイッてないとか、そんなのは分からない。 ――――――ただ、辛い。 塞き止められ、中で荒れ狂う波がアルヴィスの身体を食い破ってしまいそうな程に・・・・下腹を押し上げ解放を望む衝動が突き上がってくるのだ。 熱くて、苦しい。 どうにかなってしまいそうだった。 「・・・っ、・・・ファ・・・ントム、・・・・」 壊れた蛇口のように涙を流し続ける両眼で、アルヴィスは自分を抱く青年を見つめる事しか出来ない。 「ごめん、・・・意地悪過ぎだったよね」 ファントムが腕を伸ばして、アルヴィスの頭を撫でてくる。 その顔は、少しだけ困ったような・・・いつもの笑みを浮かべていた。 「アルヴィス君が、あんまり可愛い顔してくれるから・・・もっと見たくて、ちょっとだけ意地悪しちゃった」 ちゃんと一緒に気持ちよくなろうね――――――そう言って、ファントムは唇にキスをしてくる。 そして、それが合図だったかのように、ファントムは再び腰を使い始めた。 塞き止めていた指を外し、両腕でアルヴィスを抱き締めて抽送を開始する。 「・・あ・・・・っ、あ、あ、あ、やっ、・・・・アアアーーーーーー・・・!!」 手を外され、アルヴィス自身はあっけないほどの早さで2人の腹の間に挟まれたまま弾けた。 だが、ファントムがアルヴィスの体内を穿つのは止まらない。 「ああ・・・っ、・・あっ、・・ああ・・・んっ、・・・あうっ、・・あああぁ・・・・!!」 達した反動で、断続的にぎゅうっとファントム自身を締め付けながら、アルヴィスは激しく喘いだ。 自分とファントムの腹の間でアルヴィス自身が捏ねられ、体内深くにファントムを受け入れて敏感な粘膜を擦り上げられる――――――その激しい快感に狂いそうになる。 「ああ・・・っ、・・・あっ、・・・やっ、また・・また気持ち、良くなる・・・っ、・・うあ・・・あ・・・」 脳が溶ける。 気持ちいい。気持ちがいい・・・・それしか、考えられなくなる。 挿れられて、擦られるのが気持ち良くて堪らない。 「もっと、・・・して・・・俺の中、・・・もっと、・・・んっ、・・・グチャグチャ・・・して・・・ぇ・・・!!」 自分からも強く抱きついて、また反応し堅くなり始めたアルヴィス自身を擦り付け腰を揺らしながら、ファントムをきつく喰い締める。 「んっ・・・すごい、締まる・・気持ちいいんだねアルヴィス君・・・」 「・・・うん・・・うん・・・気持ち、・・いい・・・もっと、ファントム・・・もっと・・・・!!」 もう自分でも、何を口走っているのかよく分からなくなっていた。 「・・・可愛いよ、気持ちよくなってるアルヴィス君、すごく可愛い・・・・!」 抱き締められ、何度もキスをされながら体中を愛される。 「・・・あ・・ああっ、ふぁんと・・・む・・・・!」 身体が二つ折りになるような、窮屈な体勢。 きつく抱き締められ、体内に深く楔(くさび)を穿たれて。 息が詰まりそうなくらい、熱くて苦しい。 すごく疲れて、身体の節々だってギシギシ悲鳴を上げている気がするのに。 脳が溶けそうなくらいの、真っ白になる快感のその奥に―――――・・・妙な充足感があった。 受け入れているのはアルヴィスの方なのに、包まれているような。 満たされていると感じる――――――・・・悦び。 「・・・・・ん・・・・うっ、・・・」 自分の乱れた呼吸に重なる、いつもより荒い息づかい。 いつもより、熱い身体。 余裕そうに見える表情の奥で、・・・時折だが真剣で、苦しそうな色を覗かせる紫の瞳。 手を伸ばせば、すぐに掴まえられる距離で。 互いの息が混じり合う位の近さで。 キスを繰り返しながら抱き合って、繋がっている。 ――――――今、アルヴィスと彼はひとつなのだ。 それが何より、・・・・・・・・・心地いい。 銀色の髪の毛先がアルヴィスの首筋を擽り、ファントムの汗が肌を滑っていく。 広いベッドの上で、シーツに縫いつけられるように組み敷かれながら、アルヴィスは再び絶頂を迎えた。 「あんっ、・・あ・・・ああっ、・・・んっ、・・・気持ちいい・・・気持ち、い・・・っ、・・・イク、また・・・イク・・・・うっ、・・・・・あーーーーー!!!」 また、頭の中が真っ白になる。 最奥に注ぎ込まれた熱さに、体内から灼かれるような快感を覚えながら白濁を吐き出した。 「――――――・・・っ、・・・」 ふわふわの雲の上から、急に突き落とされ真っ逆さまに落ちていくような感覚に陥り。 アルヴィスは必死に、ファントムの背に縋った。 「・・・・・・・・・・」 霞む視界の中。 甘い光を湛えたアメジスト色の瞳が、優しく笑う。 ――――――大丈夫だよ。 ――――――大好き。愛してるよ。 柔らかく抱き締められて、髪を撫でられた。 ――――――頑張ったね、えらかったよ。 不安が急速に消えていく。 傍に居ると示されるだけで、アルヴィスの中から不安が消えていくのだ。 「・・・・・・・・・・・・・・・」 ぎゅうっと全身が包まれて、頬にそっとキスを落とされる。 身体からまた力が抜けて、強烈な眠気がアルヴィスを襲ってきた。 「・・・・・・・・・・・・・・・・」 朧(おぼろ)な意識の中、アルヴィスはそれでも懸命に抱きついている腕に力を込める。 大丈夫だよ、というようにまた頭を撫でられて・・・アルヴィスは今度こそ全身の力を抜いた。 微かに汗ばんだ、白い首元に顔を埋め安心して目を閉じる。 覚えのあるシャンプーの香りと、柔らかな髪の感触。 抱き締められている腕に、安堵して。 ――――――疲れちゃったよね、ずっとこうしててあげるから眠っていいよ・・・・・・・。 大好きな、甘くて優しい声に即されて。 アルヴィスはそのまま、酷く安らかな心地で意識を手放した―――――――。 NEXT 42
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