『Bird Cage』






ACT3





「・・・う・・・っ、あぁ・・・!!」

 必死で、声を抑えようとするのに。

「や・・・っ、あ、あ、あぁぁぁっ!!!」

 声が、抑えられない。
 身体が跳ねるのを、抑えられない。
 感じたくないのに―――――身体が言うことを聞かない。

「う・・・っ、う・・・・・!!」

 荒い呼吸を繰り返しながら、アルヴィスは身の内を襲い来る感覚を何とか押さえ付けようと唇を強く噛んだ。






 俯せにされ尻を高く上げられて、あられもない体勢でまた自身を弄られてイカされた。
 血が滲みピリピリと痛む敏感な先端を擦り上げられ、強引にまた吐き出させられた。
 それだけでも苦痛だったのに、ファントムは事も有ろうにアルヴィスですら触れた事の無かった箇所へと指を突き入れてきた。
 信じられない箇所に触れられているという、羞恥を感じる間も無かった。
 入り口を広げられ、本来受け入れる機能を持たぬ場所へと容赦なくファントムの指が入り込んでくる。
 形容しようのない内臓を押し上げられるような気持ち悪さと苦しさ、そして異物を排除しようと蠢く腸壁の感覚に、アルヴィスは息をする事も忘れ身体を強張らせた。




 痛い。

 苦しい。

 漏れそう。

 痛い・・・・。

 吐き気がする。

 気持ちが悪い。

 痛い・・・・。






 ファントムの指先は、アルヴィスに苦痛しかもたらさない。
 余りの苦しさに、アルヴィスは不自由な身体で逃れようと身を捩らせた。
 けれども、顔や肩、そして膝が石畳の冷たい床に擦れるだけで、逃れる事は敵わない。
 生理的に溢れてきた涙や鼻水、そして口許からは再び唾液が伝っているのを感じたが、それに頓着出来るような余裕は一切、無かった。

「力抜いて。・・・じゃないと、痛いよ?」

「あ・・うっ、う・・・!!」

 そう言われても、力など抜けない。
 体内に入り込んでいる指が、それをさせない。

「は・・っ、は・・・っ、ぁ・・・・」

 だってどうしようも無く苦しいのだ―――――─無遠慮に内臓を掻き回されているかのような感覚。
 こんなのを耐えるくらいならば、剣で腹を刺し貫かれた方がまだマシだと思う。
 いっそ、殺してくれ・・・・ひと思いに。





 これ以上の苦痛など、有るわけが無い―――――──そう思ったのが、ついさっきの事だったのに。






「あ・・・・あっ!あ・・っ、あ・・・っ!!」

 体内でファントムの指が、触れただけでどうしようもなく悶えてしまうある一点を掠めるたびにアルヴィスは明らかに苦痛では無い声を上げて腰を揺らした。

「ふふっ・・・此処、気持ちいい?」

「あ・・・うっ!」

 執拗にその部分を指で刺激しつつ、背後からファントムが聞いてくる。

「気持ちいいんだよね・・・こっちのアルヴィス君も、触ってないのにトロトロだもんね・・・」

「ああっ!・・・んっ、・・・ん・・・・・あ、」

 さっきまで、あんなにあんなに――――耐えられないと思うくらいに痛かったのに。
 どうしようもなく気持ちが良い・・・・気持ちが良すぎて、変になりそうだった。
 こんな所に指を突っ込まれて動かされて・・・・それで気持ちが良いなんて信じられない。認めたくないのに。
 びくびくとする身体の反応どころか、声すらも抑えられずアルヴィスは啜り泣いた。

 自分でも直視したことのないような箇所を、ファントムの目の前に晒し。

 獣のような体勢で、感じ入っている自分。

 見て確かめずとも、自分自身が硬く勃ち上がり、先端から止めどなく蜜を零しているのが分かる。

 先程まであれほど苦しかったのに―――――─今は内部で動かされるファントムの指が気持ちよくて堪らない・・・・敏感な粘膜を押し広げるように刺激される度にアルヴィスの中は物欲しそうにヒクついて、彼を締め付けた。

「あ・・・あっ、あっ、ああっ・・・・!!」

「・・・・中だけでイケそうだね・・・」

 ファントムの指の動きが激しくなる。

「ん・・・っ!! あ・・・あっ、は・・・・」

 アルヴィスの目の前が白くなった。
 石畳に押しつけられた頬や肩、膝が擦れる痛みももう、気にならない。
 力を込めた拍子に、拘束されたままの両腕に絡められている鎖が食い込み痛みを訴えたが、それすらも快感に繋がる。
 無意識にファントムの指の動きに合わせて腰を揺らし、アルヴィスは強い射精感に目を閉じた。

「・・・っ、あ・・・あああっ・・・」




 ひっきりなしに上がる自分の声が、女のようだと思う。
 また出してしまう・・・とも思った。

 こんな場所で。ファントムに見られながら、また。

 けれども、もう無理だから。
 どうしようもなく、気持ちが良くて・・・・狂ってしまいそうだから。

 恥ずかしい・・・悔しい・・・・・でも・・・我慢、・・できない。





「あ・・・っ、出・・・るっ、・・・・」

 達してしまう―――――と思った瞬間。
 アルヴィス自身が、何かにキツク巻かれ締め上げられる感覚に襲われた。

「・・・う・・・っ、あ・・あ・・・・?」

 射精寸前の、膨れ上がった状態で根元を締め上げられ、アルヴィスは激痛に呻きながら身体を震わせる。
 何が起こったのか分からない。・・・苦しい、痛い。

「は・・・っ、あ・・ぁ・・・」

 体内に埋め込まれたままの指の存在も忘れ、アルヴィスは解放できない苦しさに腰を揺らした。

「ごめんね? こうした方が多分、アルヴィス君辛くないと思うから・・・・」

 宥めるように、ファントムの声が降ってくる。

「んうっ、・・?」

 官能に浮かされたアルヴィスの頭には、ファントムの言葉の意味が良く分からなかった。
 分からないまま、ズルッと指を引き抜かれ―――――──代わりに、指とはまったく質量の違うものが宛われる。

「・・・っ、あ・・・ああっ!!?」

 アルヴィスが指を引き抜かれる瞬間の衝撃に呻く間も無く、一気に内部へと侵入してくる。

「ひっ、―――――─!!」

 初めて指を入れられた時などとは比較にならない、想像を絶する引き裂かれるような痛みがアルヴィスを襲った。

「はっ、あ、あ・・・・・・あ」

 痛みの余り、声も出ない。
 挿入された箇所から、切り裂くように―――――内部を引き裂くように、熱く硬い・・文字通りアルヴィスの体内を刺し貫くような凶器がメリメリと押し入ってくる。

「・・・痛・・っ!! 痛いっ痛っ・・・、やめっ、痛、・・・う・・・、あっ!!」

 石畳に頬を擦りつけ、アルヴィスは絶叫した。

 耐えられない。

 殺してくれと思っていたが、これは嫌だ。こんな殺され方は・・・・嫌だ。

「や・・だっ!・・痛っ、・・うあっ! 入るっ・・入っちゃう・・・・あ・・・あああっ!!」

 本当に、串刺しにされて殺されるような気がした。
 差し込まれた箇所から、どんどんどんどん体内を突き進み、そのまま口まで串刺しにされてしまうと本気で思った。
 怖さと痛みから、自然アルヴィスの腰が逃げを打つ。

「ん・・っ、まだキツイね・・。もうちょっと、我慢して・・・」

 それをファントムが腰を掴んで引き戻す。その反動で尚更深々とファントムを受け入れてしまい、アルヴィスはまた悲鳴を上げた。
 ミシミシと内部を軋ませながら、奥へと進む感覚に恐慌状態に陥る。

「痛っ、・・・ううっ!・・・やだ・・・や・・・だっ、怖いっ・・・・・・!!!」

 もう、アルヴィスには何が何だか分からなくなっていた。
 恐怖と痛みの余り、脳内が発光したみたいに溶けて――――真っ白になる。

 痛い、苦しい、怖い。死にそう。

 叶うことならば、すぐにも逃げ出してしまいたかった・・・・・・矜持も誇りも何もかもをかなぐり捨てて。
 けれど、相変わらず両腕は拘束されたままで。
 アルヴィスの身体は俯せにされ、ファントムに腰を抱えられた状態。
 逃げようがあるはずも無かった。
 せめて、身を襲う激痛のせいで、気を失えれば良かったのに。
 間断なく襲う痛みのせいで、気絶すらも出来ない。

「・・・っ・・・もう少しで、全部入るよ・・・」

「あ・・・あっ、・・・・う・・」

 女のように雄を受け入れ、ただ喘ぐ事しか、出来ない。
 身を震わせながら、アルヴィスはただファントムを受け入れていった―――――。





















「・・・いい子だねアルヴィス君・・・全部、入ったよ・・・」

 ファントムにそう言われ背中に重みを掛けられた時、アルヴィスは既に半分、意識を飛ばしかけていた。

「・・・・・・・・・・」

 叫び過ぎた喉が痛くて、声を出す気にもなれない。
 体内を埋め尽くし圧迫しているファントムは、変わらずアルヴィスを苦しめ痛みを与えていたが、逆らう気力など最早無かった。
 呼吸をして、僅かに身体が動いただけでも引き攣れるような痛みが体内に湧き起こるのだ―――――─そっとそっと、浅く静かに息をして・・・身動ぎひとつしないでいる事くらいしか、アルヴィスには出来なかったのである。

「・・・・・・っ・・・、」

 額に滲んだ脂汗のせいで、髪が貼り付いて鬱陶しかった。けれど、そんなことに頓着する余裕も無く、アルヴィスは青ざめたその瞼をゆっくりと閉じた。
 引き裂かれそうな痛みは相変わらずだったが、今なら気を失ってしまえそうな気がしたので。

「・・・・・・・・・・・」

 しかし、アルヴィスは気を失う事は出来なかった。
 腰を掴んでいたファントムの手に、力が込められたと思った瞬間―――――─ファントムが動いたのだ。

「―――――──あうっ、!?」

 痛みのあまり、喉が鳴った。
 目に火花が散って、身体の中心が灼き切れるかと思うような衝撃が襲った。

「痛っ、いっ・・痛い痛い痛いっ・・・やああぁっ!!」

 受け入れるだけでも限界を訴えていた箇所で、激しく抽出が繰り返される。
 今度こそ本当に、身体が裂けてしまう気がした。
 ファントムを受け入れている箇所が濡れている気がするのは、決して自分が吐き出した体液だけでは無いだろう・・・・出血している。
 息が止まりそうになった。



 痛い。

 痛い。

 身体が裂けてしまいそう。


 内臓も引きずり出され、再び押し込まれるような錯覚がした。
 はらわた全部が、引き裂かれグチャグチャに掻き回され、口から出てきてしまいそうだった。

「あ・・・ああっ!う・・・ぐっ、うっ、痛ぁ・・・・!!!」





―――――─男同士の性行為が、後ろを使うという事は聞いたことがある。
 けれど・・・それは本当に可能なのだろうか・・・・そんな思いが、痛みに霞むアルヴィスの脳裏に過ぎる。
 だって、こんなにも痛い・・・苦しい・・・辛くてつらくて、堪らない。
 腹を割かれ、内臓をぶちまけて息絶えるのじゃないか―――――そんな気がした。




「は・・・あああっ!・・・う・・っ、殺すっ・・なら殺・・せっ!! はや・・・く!!」

 決死の思いでアルヴィスは叫ぶ。
 もうどうでも良かった。・・・・この苦しみから逃れられるのなら。喉の痛みにも構っている余裕は無い。

「苦しそうだね・・・これならどう?」

 その時、不意にファントムの腰を掴んでいた手が逆に変えられ、指がアルヴィス自身に触れてきた。

「―――――っ、」

 びくり、とアルヴィスの身体が強張る。
 有り得ない質量のものを本来受け入れる機能を持たぬ箇所へ深々と挿入され・・・激痛からすっかり萎えたと思っていたアルヴィス自身は、根元を塞き止められたままだったせいか、依然として硬く勃ち上がり透明な涙をトロトロと零していた。
 そのアルヴィスを、ファントムが優しく握ってくる。

「・・・ああっ!?んっ・・んあっ、やだ・・・っ!!!」

 途端アルヴィスの口を突いて出たのは、今までとは違い苦痛の響きの声では無かった。

「―――――感じる?」

 その反応に、背後でクスリとファントムが笑うのを感じた。

「あ・・あっ、あ・・・・・んんっぅ!!」

 腰の動きと連動して、ファントムはアルヴィスの敏感な先端を擽り窪みを指で刺激し官能を煽ってくる。
 その手の動きに翻弄され、アルヴィスは指が自身を撫で上げるたびに、苦痛で仕方がなかった筈のファントムを受け入れている箇所が締まるのを感じていた。

「そ、・・・・んなっ、・・・・・あああっ!!」

 混乱し、アルヴィスは上擦った声を上げる。
 どうしようもなく痛くて辛かった筈なのに―――――─後ろが締まるたびに、込み上げてくる感覚がある。
 後ろに埋め込まれたファントムを感じるたびに・・・締め付ける度に、その箇所から背筋を通って脳天まで突き上げるような強い悦楽を覚えた。

「あ・・ああっ、あっ、あっ!! や・・・だっやだ・・・・あ!!」


 痛いのに気持ちがいい。
 痛くて苦しいのに、それが気持ちいい。
 受け入れている箇所は、相変わらず痛みを訴えているのに。
 穿たれた奥は、引き裂かれそうな激痛を覚えているのに。
 それが、気持ちいい。
 敏感な粘膜を擦られ押し上げられ、硬い先端に切り裂かれる痛みが・・・快感を呼ぶ。

「は・・・あっ、あ・・・っ、ああ・・・・」

 前を握り込まれ、何度も何度も最奥を突き上げられる度に、頭の中が白くなる。

「気持ちよくなってきたみたいだね・・・じゃあ、こうしたらどうかな・・・?」

「―――――っ、!?」

 アルヴィスの中に深々と挿入されたファントムが、先程指で刺激され泣きたい程に乱れた箇所を押し潰すように動いた。

「・・・あ、・・・・・・・・あ、ぁ・・・・、」

 声も無く、アルヴィスは身を震わせる。
 息が止まるかと思った。
 内部で押された部分から強烈な痺れが起こり、それは強烈な津波のように全身へと到達した。
 ファントムの手の中で張り詰め泣いていたアルヴィス自身が、ビクビク震え解放を求める。

「あ―――――、う・・うっ!」


 気持ちいい。気持ちよくて、堪らない。・・・・出したい。

 さっき、無理矢理扱かれて吐き出させられた時は―――――屈辱感で一杯だったのに。
 こんな獣みたいな体勢で、冷たい石床の上に白濁を放ってしまった時は、死にたいくらい恥ずかしくて・・・・憤りを感じたというのに。
 いっそ、こんな淫らな器官など無くなってしまえばいいとすら・・・・思ったのに。

「・・あ・・・あんっ、う・・・・んんっ・・・!!」

 出したい。出したくて出したくて、気が狂いそう。

「・・あ・・んっ、も・・・、触らな・・・いでっ、」

 勃ち震える自身の根元を、キツク締め付けるモノが与える痛みすら快感に変わる。
 苦しさに腰を揺らせば、敏感な内部が更に擦り上げられて灼熱感を伴う快楽が生まれる。
 それだけでも発狂しそうなくらいなのに、ファントムの指が繊細に動いて、更にアルヴィスを狂わせるのだ―――――──。
 これ以上、イケないままに弄られていたら、本当に気が狂ってしまう。
 いや、吐き出せたとしても、余りの快楽にどうなるのか分からない気がした。

「あ・・・あっ!・・あああっ・・・!!!」

 気持ちよすぎて苦しくて、神経が灼き切れてしまいそう。
 アルヴィスは戒められたままの手の平を握り込み、無意識に爪を立てた。
 爪は皮膚を食い破り指先に僅かなヌメリを与えたが、そんなものなど目の眩むような快楽の前には、何の役にも立たなかった。

「アルヴィス君・・・気持ちいい・・・?」

 ファントムが追い被さるようにして、肩口に顔を寄せてくる。

「僕に抱かれて・・・気持ちいい・・・?」

「あ・・・あうっ!・・・あっ、あっ、・・・・」

 けれど、そうしてくる間もファントムは腰も手も動きを止めないため、アルヴィスは嬌声を上げるしか出来なかった。

「ねえ、気持ちいい?」

「・・・ん・・・っ、う・・・・・!」

 気持ちがいいとは、口が裂けても言いたくは無い・・・・溶けた頭でそう思った。
 だが、身体の中心を深々と貫かれ・・・反応しきっている前を握り込まれた状態では、最早時間の問題だろう。
 もう、限界だった。

「は・・・っ、あ・・・ああっ!」

 殺したい程憎い敵に犯され、身体を蹂躙されているというのに―――――─進んで身体を差し出し受け入れたがっている。
 後ろから体内に挿入され、抽出を繰り返すファントムが気持ちよくて堪らない。
 最奥に突き入れられる度に、目の奥に光りがちらついて見えるくらい・・・快楽を覚える。
 握り込まれたアルヴィス自身も、根元を塞き止められたままで、漏らしてしまうような快感を訴えびくびく震えていた。
 敵の男に全てを晒し―――――自分でも見たことの無い箇所を限界以上まで広げその性を受け入れ、それに反応して反り返っている己自身も・・・隠したい所を隈無くその目に映している。

 もう、限界だった。


「・・あ・・・うっ、も・・・許し・・てっ」

 泣きながら懇願した。
 恥じらいも屈辱も何処かへ飛んでいった。
 自分の中へ入ってくるのが気持ちいい。中を擦られるのが堪らない。


 気持ちよすぎて変になりそう・・・・だから、イカせて。


「も・・・変、になる・・っ、出し・・たいっ・・・」

「イキたい? アルヴィス君・・」

「ん・・・っ、もぉ、・・・ねがい・・だからっ、ああ・・・あっ!」

「いい子だね。・・・じゃあ、言ってみて? 『入れられて気持ちよくてイキそうです。イカせて下さい』って・・・」

「・・んっ、・・・う・・・無理っ、・・・・・あ・・あっ」

 羞恥からでは無く、快楽に沸騰した脳ではファントムの言葉を覚えきれず、アルヴィスは泣き声を上げた。
 だが、ファントムは許さない。

「言えるでしょ・・? もう恥ずかしがらなくていいんだよ。・・・アルヴィス君が淫乱な子だって、もうバレバレなんだから・・ね?」

「うあ・・っ、だ・・って、も・・・・・っ!!」

 言いながらファントムが煽るように、指で先端を擽ってくるのでアルヴィスはもう、ろくな言葉も吐けなくなってしまう。

「あ・・・・あっ!あっ、あっ・・・・・、」

 あまりの辛さに、不自由な体勢のまま、アルヴィスは身体を痙攣させて子供のように泣き出した。

「だ・・って、・・も・・・、」





―――――─気持ちが良すぎるから。


―――――─触れられる度に、漏れそうなくらい気持ちがいいから。


―――――─身体の奥を突かれる度、目の奥が白くなるくらい・・・感じるから。




「あ・・あんっ!・・いいっ、・・気持ちいい・・・っから、も・・やだぁ・・・っ」

 びくっ、びくんと背を大きく震わせて、アルヴィスは泣き声で訴える。
 もう自分でも、何を口走っているのか分からない。
 どうでも良かった。
 この苦しみから解放されるなら―――――快楽を終わらせる事が出来るなら。

「・・出した・・いっ、はっ・・ああっ! ん・・・・も、おかしく・・・なるっ・・・・!!」

 苦しくて切なくて気持ち良すぎて。
 アルヴィスは無意識に身の内にあるファントムを喰い締めた。
 そして、それによって更に体内を深く穿つ存在を感じてしまい、尻を高く突き出した獣のような体勢のまま啜り泣く。
 ファントムを受け入れた箇所がドロドロに溶けて、融合し、そのまま腹を突き破ってしまうかのような錯覚に襲われた。
 内部がひくひくと誘うように痙攣を繰り返し、それに連動して握りこまれたままのアルヴィス自身が根元を締め付けられた状態にもかかわらず、とろとろと細く白い蜜を垂らす。

「ん・・・っ、気持ちいいよアルヴィス君の中・・・」

「あっ、あっ、あっ・・・ああぁっ!!」

 アルヴィスの反応はファントムにも官能を与えたらしく更に激しく腰を使われ―――――アルヴィスは床に顔を擦りつけながら喘ぎ続けた。

「・・・あ・・・・うっ!」

 脳の血管が膨れ上がりそのまま切れてしまうかのような感覚を覚え、アルヴィスが苦しげに歯を食いしばった瞬間、ファントムの手がアルヴィスの根元を戒めていた鎖状のARMを外す。

「―――――───っ!!」

 アルヴィスの目の前が、白く染まった。
 腰を強く掴まれて、連続して最奥を突かれ、・・・・・・息が出来なくなる。

「・・・・っ!・・・・・・っ、・・・!!!!」

 射精感が止まらなかった。
 狭く細い敏感な管の内部を、ドクドクと快楽の証が脈打ちながら通過していく感覚。

「は・・・ああ・・・あっ、あっ・・・あ・・・・・!!」

 吐き出す感覚がいつまでも終わらなかった。

「ん・・っ、う・・・・!!」

 ファントムが内部からアルヴィスを押し上げる度に、どくっどくっと脈打って、細く吐き出しているのが分かる。

「あ・・・あああっ!!」

 気が狂ってしまうような快感だった。


 気持ちよすぎて、―――――狂ってしまう。

 気持ちよすぎて、―――――苦しい。



「・・・すごいねアルヴィス君・・・ずっと出てる・・・イキっぱなしだね・・・」

「あ・・あっ!・んう・・・・もう・やぁっ、」

 恥ずかしくて憤死してしまいそうなファントムの言葉にも、もう言い返す余裕など無かった。
 気持ち良くて気持ちよすぎて苦しくて・・・・・このまま息絶えてしまいそうな気がした。
 体内の水を全て出し切って、乾いて死んでしまいそうな気さえした。

「は・・・っ、は・・・・あっ・・・・・」

 目が眩むほどの快感。
 暗闇に真っ逆さまに落ちていくような恐怖と・・・喪失感。

「・・・う・・・・っ、」

 快楽に浮かされながら、アルヴィスは目を潤ませた。



 怖い――――どうにかなってしまいそう。
 けれど、縋りたくとも両手は戒められたままなのだ。


「・・・や・・だっ、も・・・・嫌・・ぁ・・・」

「どうしたの・・・アルヴィス君こんなに気持ち良さそうなのに・・・」

 どんなに藻掻いても、埋め込まれたモノの律動は止まない。

「や・・・っ、も・・・死・・ぬっ!・・・」

「―――――死なないから大丈夫だよ」

「あ・・っ、ああっ!! うあっ!・・・も・・助け・・・怖いっ・・・・!!!」


 焦点の合わなくなった瞳で、アルヴィスは必死に叫んだ。







―――――落ちる。落ちていく。

―――――頭の中が白く灼き切れて・・・・真っ暗になって・・・・落ちていってしまう。

―――――もう、這い上がれない。そのまま――――・・・壊れてしまう。

―――――怖い。怖いコワイこわい こ わ い ・・・・・・・・。





「あ・・・あああっ!! も・・・もう・・・っ! あーーーーっ・・・・」



 ビクビクと断続的に体内のファントムを締め付けながら、アルヴィスは意識を手放した―――――───。





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