『Anything is done for you』





初えっち編 ACT9

※場面的には全然進展は無いんですが、アルヴィスの脳内思考がエロいかも知れません(笑)
無知ゆえな、露骨表現出てきます・・・!!









「アルヴィスさんの・・ここに、・・・・挿れさせて・・ほし・・・・・」


 そんなセリフを言われながら。
 インガが触れてきたのは―――――――アルヴィスが想像もしていなかった、衝撃的な部分だった。

 口を体内への入り口と言うのなら、出口と言い表すべきだろう箇所。

 身体の最も奥まった場所にある、トイレの時くらいしか意識なんてしたことがない部分。


「っ、・・・・・・・あっ、・・・え、・・・!!!?」


 衝撃的過ぎて、顔が引き攣(つ)りマトモな言葉も返せなかった。
 だって今、インガが触れてきている部分は・・・・自分の目でさえ、良く見たことが無い場所なのである。





 ―――――――ここ・・・って、・・・此処っ!!!?





 嘘だろう、という否定の言葉が喉まで出かかった。

 けれども遠慮がちな様子で、まるでドアをノックするかのように。
 ちょんちょん、と突(つつ)いているインガの指の感触が、ハッキリと『その部分』には伝わっていた。


「・・・・・・・・・・・・・」


 インガの、湿った指先の感触が、やけにリアルだ。

 聞き間違いでも無いし、質の悪いジョークを言われているわけでも無く―――――インガは本気でアルヴィスの『そこ』に挿れたい、と言っている。


「・・・・・う、・・」


 インガが、自分の持つ何かを欲しいというのならアルヴィスだって、その『何か』を彼にあげたいと思った。
 インガのことは好きだし、彼の希望なら叶えたいと素直に思う。

 ―――――・・・だけど、こんなのは想定外だ。

 まさか自分の、『こんな場所』を要求されるなんて思っても見なかったのだ。
 こうしてグルグルと考えを巡らせているだけで、・・・・何だか気が遠くなりそうになる。


「・・・・・・・・」


 こめかみを、つうっと冷たい汗が伝う気がした。

 アルヴィスの頭の中は既に、もうとっくに真っ白を通り越し、回線自体がショートしてしまいそうに混乱している。
 もう少しで、バチッと火花が散って回線が切断し・・・そのままブラックアウトしてしまいそうだ。

 そんな場所に触れられているという、羞恥を感じる余裕も無い。

 このまま逃げ出して家に帰り、布団に潜って寝てしまいたかった。
 そうすれば、朝には全部解決してくれているんじゃないかという、極めて自分勝手で都合が良く、そしてかなり馬鹿げた考えまでが頭に浮かぶ。

 何せ、今の今まで全く予想もしていなかった事態が眼前に迫っているのだ。

 頭の中できちんと理解していないまま、未知なる行為を承諾するのは結構厳しい。








 ―――――――・・・ゾウガメがやってたの・・・とは、何かちょっと違ったけど。

 さっきのアレ・・・が、『交尾』みたいなモノ・・・だったんだよな??

 だから俺、インガにもちゃんと・・・同じようにしてあげようって思ったのに・・・・・。







「・・・・・・・・」


 それが、まさか。
 違うモノを欲しいと言われるなんて、アルヴィス考えもしていなかった。

 というか、こんな場所をつつかれるなんて・・・誰が想像出来るだろうか。






 ――――――ここ? 『こんなとこ』が重要なのかっ・・・・!!?







「・・・・・・・っ!!?」


 ショックを受けたことをインガに取り繕えないくらい、気持ちはスッカリ動揺していた。

 アルヴィスも、自分がそういった性的な面の知識が酷く乏しいだろうことは、自覚している。
 それでも、何となくだが分かっているつもりではあったのだ。

 ゾウガメにしろ何にしろ、プライベートゾーンというか・・・・普段は他人には決して晒さない、本人限定な身体の器官。
 それが生殖器という名称で、男の場合なら通常は排泄器官としての役目を負う場所を使って行うことが『セックス』―――――要するにエッチであり、動物的に言えば交尾と呼ばれるモノ―――――だということは、アルヴィスだって分かっているつもりだった。

 そして、男の身体で性器と言えばアレだ。

 子供の時は何の問題も無かったのに、成長するにつれ、ほんの時たまだけれど恥ずかしい衝動に駆られ、モヤモヤした気分にさせたりしてくれる、あの部分。


「・・・・・・・・・・・」


 だから、そこさえスッキリしてしまったら・・・・・それで行為は終わりなのだと思っていたアルヴィスである。

 事実、あんな方法で・・・というか、まさか他人の手でスッキリさせられるとは思っても見なかったのだが・・・・・・・とりあえず、そのお陰で身体は楽になった。
 それで、恥ずかしかったけどインガに自分は楽にして貰ったのだから。

 お返しに、今度はアルヴィスがインガをスッキリさせてあげるべきなのだ――――――と、考えたワケなのだが。


「・・・・・・・・・・・」


 何だか、雲行きが非常にアヤシイ。
 良く分からないけれど、今の状況は何だか、それだけでは済まない雰囲気だというのがアルヴィスにも分かる。






 ――――――そういえば俺、エッチって具体的にどうするのか考えたこと無かったな・・・・。






 よくよく考えて見ると。
 アルヴィスにはそういった行為に関して、漠然としたイメージしか無かった。

 エッチというモノは具体的に何をすればいいのか、知らなかったことに今さら気付く。


「・・・・・・・・・」


 テレビで見たゾウガメの交尾は、とりあえずオスがメスに乗っていた。
 その他の動物たちの場合も、大抵、似たり寄ったりだった気がする。

 じゃあ、・・・人間の場合は?






 ――――――いや、人間のなんて・・・・やっぱりテレビとかに映さないよな!

 ゾウガメみたいに放映したら、公然わいせつ罪になるだろうし・・・・。






「・・・・・・・・・・」


 基本、あまりテレビを自分から見ようとは思わないアルヴィスには、そっち方面の知識を得られるチャンスが余り無かった。

 クイズなどのバラエティならギンタが見るついでに一緒に見ることはあるが・・・せいぜいその程度であり、ドラマなども殆ど見ないから―――――恋愛モノの作品にはかなり疎いアルヴィスである。

 自分から進んで見ようと思うのは、知識欲が満たされるような情報系の番組のみ。
 そういった系統の内容には、全く興味が無かったのだから仕方がない。
 そしてもちろん、テレビ以上に目を通している書籍関連だって・・・・選んでいる内容は、そういった恋愛要素など殆ど無いようなモノばかりだった。

 アルヴィスの持てる知識を総動員して対処したくても、そもそも引き出しに『ソレ関連』のデータが入っていない状態だ。






 ―――――――・・・でも待てよ? 

 ・・・そういや昔に、何か聞いたことがあったような・・・??





 アルヴィスが、まだ中学生だった頃。

 当時のクラスメイトが何かそれらしきことを教えてくれた・・・・ことが、あったような気がする。


「・・・・何だったっけ・・・・・?」


 それがふと、考えを巡らせてる内にアルヴィスの記憶の端に引っかかった。














 ――――――なーなー! アルヴィスってさ、エッチのヤリ方知ってる?


 ――――――えっち? って、・・あ・・赤ちゃん作ること・・・だろ?



 突然の性的な質問に、赤くなりながらアルヴィスが答えたら。
 そのクラスメイトが、ニヤニヤしながら言って来たことがあるのだ。




 ――――――それもあるけどさあ、そうじゃない場合でもスルだろ普通!
 で、アルヴィスはそのヤリ方ちゃんと分かってるのかって聞いてんだよ。


 ――――――う・・・ん、まあ・・・授業でちょっと聞いたし・・・。


 ――――――じゃあさ、男同士でどうやってスルか知ってるか?
 女とスルのは授業でやるけど、同性同士とかなんてサラッとしか教えないじゃん。




 同性婚も普通に認められているが、それでも男女間での結婚がまだ相当数を占めている世の中。
 授業では、クラスメイトが言うように異性間交渉をメインに教えており、同性同士の行為に関しては極々軽くしか触れられていない。




 ―――――――知らない・・・けど。




 まだ中学生で、今以上にそういった行為に関して興味が無かったアルヴィスは、アッサリと首を横に振った。

 こういった会話をしてるだけでも、なんだか恥ずかしくて。
 イケナイことをしている気分になって、先生にバレたら怒られるんじゃないかと、胸がドキドキしたのを覚えている。

 そんなアルヴィスに、クラスメイトは意味深に笑って告げたのだ。





 ―――――――男同士の場合はさ、・・・尻(ケツ)の穴使うんだぜ・・・?



 ―――――――え、・・・けつ、?





 意味が、良く分からなかった。

 クラスメイトの言葉を、聞き間違えたのかと思った。
 使うと言われても、いったい何をどう使うのか、意味が分からない。




 ―――――――だからさァ、ち○○をそこに挿れんだよ。



 ―――――――・・・? ・・・・??





 繰り返されたクラスメイトの言葉を、やっぱり理解出来なくて、アルヴィスは眉を寄せた。

 それで、ちゃんと聞き直そうとしたのだが。




 ―――――――嘘だと思うなら、俺と試してみるか・・・?





 そう言ってきたクラスメイトの言葉と。





 ―――――――おいテメ、アルヴィスにナニふざけたこと吹き込んでやがる!??





 たまたま、その話を聞いたらしいギンタの怒号が重なって。

 そのまんま、会話は立ち消えてしまった。
 ギンタがそのクラスメイトに飛びかかり、大げんかとなって――――――それどころでは無くなってしまったからである。















「・・・・・・・思い出した・・・」


 あの時は、クラスメイトが何を言いたいのか良く分からなかったけれど。
 今ようやく――――――漠然とだが、言っていたことが分かった気がした。

 男同士のエッチの場合・・・・・多分、あのクラスメイトは『ココ』を使うと言っていたのだ・・・・!


「・・・・っ、・・・!??」






 ――――――うわ、無理。ぜったい、・・・・無理!!






 悟った瞬間。

 上気していたアルヴィスの顔色は、見る見るうちに青ざめた。






 ――――――・・・待て。・・・・落ちつくんだ俺。

 落ち着いて、ゆっくり考えてみるべきだ・・・・!!

 動揺し過ぎて、変な方向に思考が飛んじゃってるだけかも知れない!!





「・・・・・・・・・・」


 必死に、気持ちを落ち着ける。

 インガがそんな、無茶なことを言い出すとは思えない。
 きっとこれは、自分が変な勘違いをしているに違いない・・・そう思い直して、冷静に考えてみる。






 ――――――えーと、・・・俺とインガは付き合ってて。

 キスとか、・・・そういうコトしちゃってる間柄で。

 恋人なんだから、・・・・えっちも・・・するべきなんだ・・・よなっ?






「・・・・・・・・・・・・」


 ここまでは、OK。
 多分、間違っていない筈である。







 ―――――・・・で、問題はその『えっち』だ。

 性行為で、セックス・・・で、交尾。
 いや呼び方はどうでもいい、・・・・重要なのはヤリ方だ・・・!

 でも、・・・あそこからアレを、だ・・・出すだけじゃ、・・・駄目・・なんだよな?

 それでもって、・・・俺の・・・こんなトコをインガの指がつついてる、ってことは。


 やっぱり、『ココ』は無関係じゃない・・・・?







「・・・・・・・・ひっ、・・・!??」


 導き出された答えに、アルヴィスはまた気が遠くなる気がした。

 これじゃあ、最初に勘違いと決めつけた内容と少しも変わらない。







 ――――――・・そうだ・・・そうだった! 後ろ・・・使うって。

 挿れるって・・・・確かそう、あの時に言ってた気が。


 え、本当に『ココ』に挿れちゃうのか・・・・っ、・・・アレを!!?






「!!」


 そこまで考えて、アルヴィスは完璧に思考がストップした。

 だって、普通は出す場所に何かを挿れるなんて、それだけでかなり怖い。
 座薬だったら、小さい頃に熱を出した時に挿された記憶はあるけれど・・・・あんなのですら、何だかすごく違和感があって嫌だった。

 そして今、アルヴィスの『その部分』に挿されるのは、絶対に座薬なんて問題にならないようなサイズだろう。
 もしインガが、普通サイズ以下だったとしたって・・・・座薬ほどの小ささなワケは有り得ない。

 あり得たら、それはそれできっと問題だ。


「・・・・・・・・・」


 ゾウガメのメスが、何だか苦しげに鳴いていた理由が分かったような気がしたアルヴィスである。

 アレは、上に乗られて重かったからじゃなかったのだ。

 今まで具体的には何も考えた事がなかったが、交尾なんだから、ただ身体を密着させてるだけの筈も無いのである。
 どっちかがどっちかの体内へと、何らかの手段で入り込みでもしなければ・・・受精だって出来っこない。

 そのことを、アルヴィスは今ようやく本当の意味で悟った。

 この差し迫った事態では意味は無く、遅すぎた理解だったけれど。






 ――――――でっ、・・・でも本当に、・・・そんなことヤルのか!!?







「―――――・・・!!!?」


 想像したら怖くて、思わず叫び出しそうになった。

 既にパニックを起こして、身体がガチガチに固まった状態だったのは幸いだったかも知れない。
 でなければ、インガの気持ちも考えられずに脱兎(だっと)の如く、悲鳴を上げて逃げ出してしまっていただろう。

 けれども。


「アルヴィス・・さん・・・・ダメ・・ですか・・・?」

「・・・・うっ、・・・」


 インガにそう言われてしまうと――――――・・・アルヴィスの中での優先思考順位が、闇雲に怖がることから、彼の期待に応えたいという想いの方へと入れ替わる。

 怖くても、何が具体的にどうなるのか分かっていなくても・・・インガが望むなら、アルヴィスはそれを叶えたい。

 好きだから、インガを失望させたくなかった。
 できるだけ相手が望むことをしてあげたいと、自然に気持ちがその方向へ傾いてしまうのだ。






 ――――――そう・・・だよな。恋人同士・・なんだし。

 するのが当たり前、で。・・・ここでOKって言わないのは・・・良く無い・・・よな・・・・?






「駄目じゃ、・・・無いさっ!」


 咄嗟に、声をひっくり返させながらそう答えてしまう辺りはもう、条件反射かも知れない。

 子犬が、飼い主の機嫌を伺う時のソレのような。
 何だかとにかく抱き上げて、よしよしと頭を撫でたくなるようなお願い口調のインガには、とてもとても弱いアルヴィスである。

 しかし、これで逃げ道が無くなったのも決定だ。


「・・・・・・・・」


 アルヴィスは自分でハッキリと、今インガに触られている箇所を使うことをOKしてしまったのである。


「・・・・・・・・」


 だがそうなると、自分でも意気地(いくじ)がないと思うけれども、やっぱり怖さが増してきた。






 ――――――・・・苦しいのかな・・・やっぱり、痛いんだろうか・・・・?






「・・・・・・・・」


 脳裏に残っている、ゾウガメが苦しそうに鳴いていた光景が、アルヴィスの気持ちを挫(くじ)かせる。

 鳴いていたからには、やっぱり苦しかったんだろう。
 カメは会話なんかしないだろうし、つまりは何らかの原因があったから鳴いていたいに違いない。

 で、あの場面で鳴いてたということは、苦しかったからそれを訴えていたのだろう。

 いや、苦しいんじゃなくて痛かったのかも知れないのだが・・・・。


「・・・・・・・・・」


 考えれば考えるほど、アルヴィスは怖くなってきた。

 だって、どう楽観視しようとしても・・・・この部分に何か挿れるなんて、物凄く痛そうだ。

 指を切ったとか、膝を擦り剥いたとか、そんなレベルじゃ絶対無いだろう。

 怖い。怖すぎる。
 エッチが、こんな恐怖を伴うモノだったとは知らなかった。






 ――――――・・・出して身体が楽になって、終わりだと思ったのに・・っ!






 カタツムリなんかは、雌雄同体(しゆうどうたい)で、交尾をせずに卵を産むのかと思っていたが、実際は交尾をするほうが多いのだという。

 けれどその方法は、別にアレをソレに挿れるとかそういうんじゃなくて。
 精子の入った袋を、互いに渡し合うモノらしいと以前に本で読んだことがある。


「・・・・・・・・・・っ」


 人間も、そんなだったら痛かったり苦しかったりしないんだろう。

 なんて。
 今現在、全く関連性のない無駄知識なんかを思い出してしまうのは、逃避しているのかも知れない。





 ―――――――俺にも(受け渡しができる)袋があれば良かったのに・・・・っ!!






 未知の行為への、怖さのあまり。
 心中でそう叫んで嘆いたアルヴィスだったが、ふと、ある思いつきが脳裏に浮かんだ。





 ――――――・・・そうだ。

 要は、・・・・インガだって楽になれれば・・・いい、・・んだよな・・・?






「・・・・・・・・・・、」


 照れた風に此方を見ているインガを見つめ、ゴクリと唾を飲む。

 さっきインガは、次は自分の番・・・と言っていた。
 それはつまり、アルヴィスに彼がしてくれていた通り、アルヴィスがインガを楽にして欲しいという意味だろう。


 だったら、―――――――。


 アルヴィスは意を決した目で、眼前の青年を睨むように見つめた・・・・。











NEXT ACT10



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言い訳。
長かったので、いったんココで話切りました(笑)
アルヴィスの葛藤部分が長過ぎて、場面的には一切進んでないんですけど、長くなっちゃいましたー☆
でも、初めてえっちのコトを具体的に知ったら、きっとこんな感じだよね!(爆)
ゆきのはチョットした理由で、小学1年の頃には既にエッチが何たるか知ってしまったんでこういう初々しさとは無縁でしたg(殴)
小学校高学年の頃、知らない子に教えてあげたら・・・何か露骨にショック受けられた覚えがあります・・・。