『Anything is done for you』
初えっち編 ACT8
※ここから本格的に性描写入ります☆
「・・アルヴィスさん・・・・・下・・辛く・・ないです・・・?」
自分の身体の下で、アルヴィスが繰り返す切なそうな吐息に、彼の限界を感じて。
インガはそっと、話を核心に触れさせる。
「・・・さっき・・すごく、濡れてるみたいでしたし・・・」
恥ずかしがるかな、と思いつつもハッキリとアルヴィスの状態を告げた。
ここでその重要ポイントを有耶無耶(うやむや)にしたら、ますますこの後のテンポもゆるやかになってアルヴィスも辛いだろうし、インガも辛いことになる。
いつまで経っても、最終目的とする行為にまで辿り着けなくなってしまうだろう。
「・・・・っ、・・」
アルヴィスがインガの下で苦しそうな声を上げ、ぎゅっとインガのTシャツを掴んできた。
「・・・んっ、・・・・あ・・・だってっ、・・・・なんかもう・・・・・!」
吐き出す言葉は震えて、喘ぎ混じりとなっている。
羞恥を感じる余裕も無いほど、感じ入ってしまっているようだ。
インガに身体を擦り付けるように、腰が揺れ始めているのが堪らなく艶っぽい。
これは、限界だろう。
「やっぱり、このままじゃ辛いですよね・・・?」
アルヴィスの反応で既に分かりきっている状況を、敢えて口で確認する。
こんな状態で拒まれる確率は極めて低いだろうが、断りも無しに、いきなり触れてしまうなんてことはインガには出来ない。
アルヴィスの意に添わない事は、ほんの僅かだってしたくないインガである。
「・・・僕がしても・・いいです・・か・・・?」
自分の頬が、更に熱く火照ってくるのを感じながらそう聞いて。
インガは、アルヴィスがちゃんと意味を把握するよう、片手をそっと揺れてる腰に這わせてみた。
「・・・ぁ・・、」
流石に抵抗されるかも知れないと思ったが、アルヴィスは小さな声を上げ、・・・ますます強くインガに抱き付いてきただけだった。
多分もう、本当に限界が近いのだ。
不安を覚えた子猫が庇護を求め、擦り寄ってくるかのように―――――・・・インガの胸へと顔を寄せ、しがみついてきた。
「・・・・・・・」
その仕草が、あんまり可愛らしくて。
インガも思わず、クスリと微笑んでしまう。
何となくだが、少しずつ・・・アルヴィスの口に出せない『お強請り』が分かってきた気がした。
恋人の初々しい様子を見ながら、インガはアルヴィスの腰からゆっくり手を滑らせ、下腹で息づいている彼自身へと指を絡める。
「・・・っん、」
絡めた瞬間、アルヴィスが小さく息を詰めるのが分かった。
「・・・う、・・・んっ、・・あ・・・」
やんわり握り込んだだけで、アルヴィスの呼吸が早くなる。
上気した顔に浮かべる表情も、困惑げで苦しそうで、泣いてしまいそうにさえ見えるのに―――――明らかな官能の色が浮かんでいた。
普段は清楚な美しさに包まれ、淫らな事象とは一切無縁に過ごしているアルヴィスが、・・・である。
穢れのない天使として生まれた彼も、こうして地に繋ぎ止め、人間であることを思い出させるように身体を愛してやれば――――――その刺激に、啼いて腰をくねらせる。
清廉(せいれん)とした空気しか纏わない、いつだって凛とした印象を周囲に与えている美しい彼が・・・・・欲情の徴(しるし)を晒して、身悶えているのだ。
そのギャップが、生々し過ぎて。
過剰なほどの淫蕩(いんとう)な空気が、室内へと振りまかれているようにさえ感じる。
漂う濃厚な空気と、快楽に支配されつつありながら尚、穢れないと称したくなるようなアルヴィスの身体で。
屹立(きつりつ)し、欲情していることを如実に告げている彼自身のみが酷く卑猥(ひわい)で美しい、別の生き物のようにインガの目に映る。
彼の牡(オス)部分は、アルヴィスの肢体全体から受ける印象そのままに、未成熟さを感じさせる幼い形状だった。
肌色の白さが、こんな箇所にまで現れるのかと感心するキレイな薄ピンク色をしていて、苦しそうに張り詰めているのに、全体がどことなく柔らかい。
撫でる程度に優しく刺激してやれば、それだけでアルヴィスが切なげに腰を揺らした。
「ぅあ・・・・っ、・・・あっ、あ・・・・!」
形をなぞるよう、指先で軽く撫でているだけなのにアルヴィスの身体がビクビク跳ねて、先端からまたドッと半透明の液体が溢れてくる。
本当に濡れやすい・・・・・・まるで、少しの刺激にも慣れていないかのようだ。
――――――もしかして、1人では殆どしてないのかな・・・・?
インガにしがみつくアルヴィスは、その手の動きに間断なく切ない声を上げ続けている。
恐らく、インガの手が自身に絡みついて愛撫される度に、自分の腰を艶めかしくクネらせていることも感知出来ていないに違いない。
「気持ち・・いいですか・・・?」
アルヴィスが感じる部分を探るように、インガは徐々にアルヴィス自身の先端の方へ手を移動させ・・・最も快感を覚えるだろう箇所を、指の腹でくすぐってみた。
先端の丸みを確かめるように、溢れ出してインガの指や彼自身に伝っていく蜜を窪みへと塗り込めるように・・・・優しくやさしく、撫であげてやる。
「・・・・んっ、あ・・っ、ああ・・・っ!!」
一際(ひときわ)高い声が、アルヴィスの喉から迸った。
「あっ、も・・・もうっ、駄目っ、あ・・・出ちゃ・・うからっ、・・離し・・・!!」
白い首元を逸らし、アルヴィスが切羽詰まった声を上げる。
インガの下にあるアルヴィスの身体が、明らかに強張って四肢を突っ張らせた。
もう達してしまいそうなのだろう・・・そう思い、ドキドキしながらインガは解放を即してあげようと、指の動きを早めた。
「・・・っう、・・・だ・・めだ、・・!」
ところが、抱き付くように縋り付いていたアルヴィスの手が、インガの手を剥がすように重ねられてくる。
こんなに張り詰めて苦しそうなのに、・・・達したくないのだろうか。
「でも・・離したら・・・」
―――――アルヴィスさんが、辛いと思うんですけど・・・・。
そう思いながらも、アルヴィスの手が彼のそれから引き剥がすような動きを見せるので、素直に指の動きを止めた。
こんな状況でも、やっぱり無理強いなんて出来ないインガである。
「・・・・・・アルヴィスさん、ご自分でされるん・・ですか・・・・・?」
けれど、どうしたってアルヴィスの状態が辛そうで。
ドキドキしつつ、心配も相まってインガはアルヴィスの様子を伺った。
後戻り不可能な程に、身体の状態は高められてしまっている。
このままで耐えられる筈が無い。
「っ、は・・・っ、は・・・・あっ、・・・・あ・・・・・」
眉を寄せ、苦しそうに息を吐くアルヴィスはもう、言葉を返す余裕も皆無・・・といった様子である。
それはそうだろう―――――解放間際で、それを塞き止めてしまったら。
男なら誰だって、その耐え難い疼きに苦しみ悶える羽目になる。
「・・・うっ、・・う・・」
苦しげに声を漏らし、その瞳にうっすらと涙さえ浮かべて、アルヴィスは小刻みに身体を震わせていた。
吐息がとても荒く・・・そして熱くて。
眉間にシワを刻み、辛そうに長い睫毛を何度も伏せる様が――――――喘ぐたび、薄く開き中から赤く薄い舌の覗く様が・・・・強烈な色香を放つ。
「アルヴィスさん・・・そんなに我慢したら、体によくないですよ・・・?」
アルヴィスの艶っぽさに目を奪われ、その刺激に脳まで灼かれながら、インガはもう1度このままで大丈夫かと念を押した。
大丈夫なワケが無いと知りつつの、言葉だ。
けれどもアルヴィスの許可が出なければ、インガは彼を解放させてあげられない。
重ねられた彼の手が離されない限りは、自分からその震える手を放し、解放を手伝ってあげることは出来ないのだ。
「・・・あ・・・っ、インガ・・・・」
不意にその手が、縋るようにインガの手を握ってきた。
「・・・お・・れ、・・・俺もう、・・・っ・・・・」
途切れ途切れに、それだけを言って。
アルヴィスの手が、インガの手の甲から滑るように落ちた。
同時にアルヴィスが僅かに顔を上向かせ、インガを見つめる。
「・・・もう俺、・・・!」
それしか言わない、のでは無く。
もうそれしか言えないのだろうと察せられる、・・・逼迫(ひっぱく)した響きが篭もったアルヴィスの言葉だった。
「・・・・・・・・・」
インガが恋人の状態を伺えば何とも切なげで、苦しそうな表情を浮かべたアルヴィスと目が合った。
けれどすぐ、恥じらうように長い睫毛が青の瞳を覆い隠し・・・目元に、濃い影を映す。
「アルヴィス・・さん・・・」
その様子がやたらに扇情的で、インガはますます自分の気分が高揚してくるのを感じた。
ずっと見たかったアルヴィスの官能に溺れた顔が今、間近にある。
普段の彼からは想像もつかない―――――・・・強烈に、見る者の欲情を誘う艶めいた姿だ。
「・・・・・・・・・・」
けれど、見惚れてばかりいるワケにはいかない。
アルヴィスの身体はもう相当に追い詰められているようで、かなり辛そうである。
「それじゃあ、出しちゃいましょう・・・?」
宥めるように優しく言って、インガは再びアルヴィス自身へと指を絡めた。
「・・・っ、・・」
待ち構えていた刺激にアルヴィスが小さく喘ぎ、身悶える。
「ほら・・もうこんなに震えてますし・・・
先端も、こんなに・・・気持ち良さそうに蜜が溢れてるじゃないですか・・・」
そう言いつつ、無意識に逃げを打とうとするアルヴィスの身体を抱き締め捕まえながら。
インガは絡めた指先をそっと、蠢(うごめ)かせた。
「・・・っあ!・・・んっ、あ・・・っ、あっ、あ、あ!・・・・で・・・出るっ、・・出ちゃ・・・・う、・・・・・・!!!」
途端、アルヴィスがまた切羽詰まった声を上げて、四肢を突っ張らせた。
切なそうに伏せられていた瞳を大きく見開いて、唇を戦慄(わなな)かせる。
「いいですよ・・・? 我慢しないで下さい・・・?」
アルヴィスの首筋に軽く口付けながら、インガは解放を即してあげようと、先端部分を軽く押し潰すように刺激した。
丸みを帯びた先端に指の腹を押し付け、溢れ出る透明な粘液を拭うように何度も擦り上げてやる。
「あ・・・っ、あっ、あっ、ああっ・・・・・・!!」
アルヴィスの身体が一瞬強ばり、次いでビクビクと激しく震えた。
「・・・・んああ・・・っ、・・・あ・・・・!!」
そして悲鳴のような声を上げて仰け反ったかと思うと、インガが握り込んだ先端から勢いよくアルヴィスの腹へ、白濁した液体が数回吐き出される。
「・・・・・・・あ、はあ・・・は・・っ、・・・はぁ・・・!」
呼吸の荒さにアルヴィスは言葉も出ないようで、胸を激しく上下させて喘ぎつつ、グッタリとベッドに身体を預けきってしまった。
波打つ腹に飛び散った快楽の証が、ゆっくりとアルヴィスの白い肌を滑り、シーツへ伝い落ちていく。
「・・・もう少し・・・出ます?」
「ぅあ・・・っ、・・・!?」
まだ残滓(ざんし)があるかと、力を失ったアルヴィス自身を軽く絞るように扱けば、驚いた顔でアルヴィスが呻き声をあげた。
「・・・・う、・・」
扱いた途端に、少量残っていた液体が先端部分で小さな玉を結んだが、同時にアルヴィスの目尻からも透明な雫がポロリと零れ落ちる。
「あっ・・・!」
その涙にドキリとして、インガは慌てて手を離した。
「アルヴィスさん、どうしました・・・!?」
「・・・・・・・・・・・」
アルヴィスは、答えない。
頬を真っ赤に染めたまま、途方に暮れたような顔をして―――――ただ、涙に濡れた長い睫毛を伏せるだけだった。
涙に浮かぶ青の瞳は、まるで水の中で揺らぐ青い宝石のように美しく。
伏せられた長く濃い睫毛からそれが垣間見える様は、思わずそのままウットリと眺めてしまいそうな程・・・キレイである。
美人は泣き顔だってキレイだと、実証例として挙げても良い位にはキレイだ。
しかし、その表情を引き出したのが自分ならば、そんな悠長なことは言っていられない。
「ボク、無理させてしまいましたか・・・?」
アルヴィスの為を思って解放を急いだのだが、やはり性急すぎたのだろうか?
身体の反応に、アルヴィスの心がついて行けていない可能性は充分にあり得る。
「・・・っ、違・・・う、・・・」
けれど謝ろうとしたインガに、アルヴィスは違うと首を横に振ってきた。
「・・・ちょっと、・・・なんか出た、だけ・・・・だ・・・からっ、」
「・・・・・・・・・・」
たぶん、泣くつもりは無かったけれど涙が出てしまった、・・・と言いたいのだろう。
なかなか熱を解き放てず辛さに滲んだ涙が、解放の余韻で気がゆるんだ拍子に溢れ出た・・・という所だろうか。
やはり、無理もないとは思うがまだ緊張状態のようである。
「アルヴィスさんの涙は、すごくキレイですけど・・・」
落ち着かせるように、インガはアルヴィスの涙を、先程まで彼自身に触れていたのと逆側の手で優しく拭った。
そのまま、その手で幼い子にするようにしてアルヴィスの頭を撫でる。
「・・・でも、辛い思いはして欲しくないんです。
アルヴィスさんが嫌だって思うことは、したくないですから・・・」
「・・・・・・・・・・・・・」
少しは気持ちが落ち着いたのか、アルヴィスはされるがままジッとしていた。
何とかアルヴィスの気持ちを解(ほぐ)せたと、インガも胸をなで下ろす。
ここでもう嫌だ、続きはしない―――――とでも言われてしまえば、今度はいつこんなチャンスが巡ってくるか分からないのである。
「だけど、・・・よかったです。アルヴィスさんに気持ちよくなってもらえて・・・」
安心したら、先程の刺激的なアルヴィスの反応を思い返す余裕も出てきた。
「・・・たくさん、出ましたよね・・・」
などと口走り、自分の手の平を満足そうに眺める。
手を濡らす、その白濁した液体はアルヴィスの快楽の証だ。
この手でアルヴィスを乱し、絶頂に導けたのだと思えば感慨もひとしおである。
イク瞬間のアルヴィスの表情の色っぽさは、想像以上だった。
キレイで可愛くて艶っぽくて、そして淫らで――――――堪らなくソソる姿だった。
思い返しただけで、下半身に更に熱が集まるのを感じる。
「!?? ・・・――──っ、・・・!!」
だが何故か、その言葉を言った途端にインガの下でアルヴィスが身体を強張らせた。
顔を真っ赤にして、口をパクパクする様子は・・・・さっきも思ったが、まるで愛らしい金魚みたいだ。
「・・・・・・・・・」
熱を解放し身体が楽になったことで、1度押し退けられていたアルヴィスの羞恥心が戻りつつあるのだろうか。
「・・・アルヴィスさん・・・」
ここは、インターバルを置かない方が得策だろうと判断し。
インガは、少し神妙な様子で言葉を切り出した。
「・・・・・・次はボクの番・・・なんて言ったら、怒ります・・・?」
言いながら、すっかりとアルヴィスの痴態に煽られて張り詰め切っている自身を、布越しに少しだけ彼の下腹に押し付ける。
「・・・あっ、・・・・・・」
アルヴィスが小さく、驚いた声を上げた。
「・・・・・・・・・・」
露骨すぎたかな、と多少気が引けつつアルヴィスを伺えば、アルヴィスは真っ赤な顔のまま驚いたようにインガを見つめている。
「・・・そ、そうだ・・・な!」
だがその次の瞬間には、目の前の唇がぎこちなく、そんな言葉を紡いで。
「次は、・・・インガだ・・・」
アルヴィスがムクリと身体を起こしてきた。
「・・・?」
行為続行を許してくれたみたいな返事だったけれども、アルヴィスが身体を起こす理由が分からない。
「アルヴィス・・さん・・・・?」
分からないまま、インガはアルヴィスの行動を見守った。
「・・・・・」
起き上がったアルヴィスは、何か決意の篭もった目でインガをギッと睨み付けたかと思うと。
何と、インガのパジャマの下に手を掛けてきた。
「!?」
そしてインガがギョッとして反応出来ないでいる内に、グイッとウエストに通された紐部分を引いて、前を緩める。
――――――・・・もしかして?
ボクのをアルヴィスさんが、・・・・触ろうとしてる!??
「っ・・・!? あっあの!!
・・・こんなの、先輩にさせるわけには! あっ・・・!」
アルヴィスがしようとしている行為に気がついた瞬間、インガは全身の血液が沸騰して、身体中の毛穴という毛穴から血が噴き出すかのような興奮状態に襲われた。
――――――アルヴィスが、自分のに触れようとしている。
それは、想像すらしたことが無かった、凄まじく刺激的な光景である。
――――――だ、ダメだそんなの! 冒涜(ぼうとく)だ・・・冒涜過ぎる!!
アルヴィスさんが、ボクのせいで穢れちゃう・・・・っ、・・!!
「・・・・っ」
頭の中では、そんな叫びが繰り返されているが、余りな事態に動揺しすぎて声も出ない。
身体だって、動かないままだ。
「・・・・・インガ、その・・・・もう少し、腰・・・あげて・・・くれ、」
けれど、アルヴィスが。
驚いた弾みに、尻餅をつく形で後ずさったインガの、足の間にちょこんと座り込み。
恥ずかしそうにモジモジと、そんなことを言ってきたら。
「・・・じゃないと、その・・・・出来ない・・・からっ、・・・」
「・・・・う・・っ、」
遠慮がちに、上目遣いなお願い目線で、言ってきてしまったら。
「こう・・・ですか・・・?」
なんて言いつつ、言われた通りに腰を上げるインガである。
駄目とか嫌だなんて、――――――言える筈も無いのだった。
そもそも、自分だってアルヴィスのを触ってしまったのだし、逆が駄目とは言いづらいものがある。
それに、アルヴィスに触れて貰えること自体が嫌なのでは無くて。
あくまで、アルヴィスがインガにそんなことをしてくれるということに、僭越(せんえつ)過ぎて気が引けているのと・・・・ちょっぴり恥ずかしいだけなのだから。
「・・っ、その、俺・・・あまり、自分・・もしてないしっ、・・・」
だが、当のアルヴィス自身はインガが心配していることなどは、まるで意に介していないようだった。
耳まで真っ赤に染め、緊張感も露わな上擦った声で、弁解めいたことを口にして。
せっかくインガが言われるまま腰を上げたのに、ズボンに手を掛けたまま固まっている。
「・・痛くて、途中で終わっちゃったりしてて・・・
インガみたい・・に、上手く出来ないかも知れない・・・けど、・・・あ、いや・・・その・・・・・・」
緊張の余りか、普段の自分の自慰の頻度や状況までも暴露してしまっていることを、アルヴィスは気付いていないだろう。
インガ以上に、アルヴィスはテンパっているのだ。
だが、それでも何とか頑張ろうと健気な決意をしてくれているらしい。
ギュッと目を閉じたかと思えば次の瞬間、アルヴィスがいきなりズボンを下げて来た。
「・・・・・・・・っ!?」
流石にちょっと、驚く。
けれど、アルヴィスが戸惑いながら恥ずかしいのを我慢して、インガがしたのと同じ事をしてくれようとしているのは・・・とても嬉しい。
慣れていない仕草も、ズボンだけ脱がせて下着がまだ残っているという詰めの甘さも、何もかもが可愛らしくて愛おしかった。
きっと、この先だって辿々しく・・・・そして可愛らしい仕草で、インガに触れてくれるだろうことが容易に想像出来る。
それは、とても光栄で。
アルヴィスの想いが感じられて、幸せだとは思うのだが。
――――――・・・やっぱり、ずっと欲しいと願っていたモノが欲しい。
もう少しで手に入りそうな、ずっとずっと欲しかったアルヴィスの全部が貰いたい。
「あっあの! ・・アルヴィスさん・・・の、その申し出はすごく嬉しいんです・・けど」
脱がし掛けたズボンに手を掛けたまま、この先はどうすればいいかと考え込んでいるらしいアルヴィスに、インガは思いきって声を掛けた。
「・・・違うモノ・・頂いても・・いいですか・・・・・・?」
インガの言葉に、アルヴィスがキョトンとした顔をする。
「・・・・え・・・・違うもの・・・?」
今までの恥ずかしそうな顔とは打って変わり、素で不思議がっている表情だ。
どうやら全く、インガの言わんとする内容を理解していないらしい。
「すみません・・あの・・あの・・・っ・・・!」
あまりにアルヴィスが無防備な様子で、インガを見つめてくるものだから。
インガは、まるで天使に向かって卑猥(ひわい)な言葉を口にするかのような、ばつの悪さを感じてしまう。
「・・・・・・・・・・?」
天上の青とでも称すべき、澄み切った瞳で見つめられ―――――――その穢れのない繊細な美貌を向けられていると、・・・決心が鈍って萎(しぼ)んでいくのを感じた。
「えっとですね、その・・・あの、・・・」
「・・・・・・・・・・???」
なあに? と言わんばかりに見つめてくる美しい大きな瞳が、この時ばかりは少々恨めしい。
「・・・・っ、」
だが、ここで怯んでいたらきっと、一生清いお付き合いで終わってしまうことになる。
今までの、決して少ない数では無い撃沈した記憶を思い出し・・・・インガは、勇気を振り絞った。
「だ、だからですね、その・・・・!」
声が上擦るのを必死に抑えつけながら、言葉を切り出し。
インガは、座り込んでいるアルヴィスの背へと手を伸ばし、するっ・・・と、その下――――――丸みを帯びた臀部(でんぶ)へと、濡れた指を滑らせた。
「アルヴィスさんの・・ここに、・・・・挿れさせて・・ほし・・・・・」
そして――――――その間(あわい)の奥に息づく、秘められた箇所へそっと触れる。
「っ、・・・・・・・あっ、・・・え、・・・!!!?」
触れた途端、アルヴィスの顔が今までにないくらい強ばり、大きな瞳が限界まで見開かれた。
一糸まとわぬ姿だというのに、無頓着にインガの眼前に寄ってきていた身体も、ぎくりとした様子で固まる。
予想は付いていたアルヴィスの態度だが、ここで退いたら全ての決意が無駄になってしまう。
インガとしても、なるべくなら、もう少しやんわりとお願いを口にしたかったのは山々だった。
けれどそれでは、こういった内容にはすこぶる疎いアルヴィスには伝わらない。
だから、ムードも情緒もかなぐり捨てて――――――直接的なサインで分かって貰うしか無かったのだ。
アルヴィスがショックを受けるだろうことは、覚悟の上なのである。
「アルヴィス・・さん・・・・ダメ・・ですか・・・?」
目の前の少年が、まだショックから覚めやらず冷静な判断が出来ないだろうことは承知で、インガはお伺いを立てた。
「ボク、・・・此方を頂いても・・・いいですか・・・・?」
アルヴィスの悦楽の証で濡れた指を、彼の後ろへと触れさせたままで。
インガはそれと逆側の手でアルヴィスの頭を引き寄せ、そっと触れるだけのキスを唇に贈る。
そして目線を合わせ、うっとりと呟いた。
「アルヴィスさんを・・・下さい・・・」
瞬きも忘れたように、じっとインガの方を見て固定された瞳が、相変わらず吸い込まれそうな美しさだ。
このキレイな目をした人の、全部が欲しいと思う。
抱きたい。
1つになりたい。
隙間無く密着して、・・・・・出来る事ならDNAレベルで繋がりたい。
「―――――アルヴィスさんが、欲しいです・・・」
「・・・・・・・・、」
目の前の唇が、何か言葉を紡ぐ前にインガは再び唇を重ねていた。
拒否の言葉は、今は聞けないから。
言われてしまう前に、・・・・・・・・唇ごと言葉を奪い去る。
「ねえアルヴィスさん・・・貰ってもいいですか・・・?」
そして、深いキスで自然と身体の力が抜けてきたアルヴィスに。
インガはそっと、もう1度お願いを口にしたのだった――――――――。
NEXT ACT9
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言い訳。
大分、インアルえっちも佳境に入って参りました!(笑)
次の次くらいで、インガが本懐遂げられるかなーって思います(爆)
大分えっちな展開になってきましたが、その前にもう1度、アルヴィスの葛藤をお楽しみ下さい(爆笑)
その後は、怒濤の激しいエロ展開です☆
インアルって初々しいのに、しっかり濃厚なことやらかしてくれる辺りがスゴイ萌え・・・!!(笑)
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