『Alviss in Wonderland』



 ACT3










「文献では、お前が俺をどこかへ連れて行くことになっていた気がする!! ・・・・早く俺をその何処かへ連れて行け!!」


 この際もう、このウサギと化した少年が誰だとか、もしかしたらこの少年だって意味が分からないままこの役を押しつけられ混乱しているかも知れないなんて事は二の次だった。
 聞かれたって上手く説明出来る気はしないし、そもそもどうしてこうなったのかなんてまどろっこしい説明は、あのムカツク桃色猫がすればいい事である。。

 ―――――――そもそも、あの人騒がせで、何考えているだか分からないチェスの親玉が全部しでかした事なのだから。


 アルヴィスは最優先で、メルヘブンの迷惑しているであろう、『その他の民』を救いたい。

 この少年がその最初の鍵となる『時計ウサギ』なら、もうそれで良かった。


「さあ早く連れて行けっ!! そして早くこのふざけた世界を終わらせるんだ!!」

「えっ!? ・・・でででもっ、・・・何処かって、・・・何処にです??? 何処に連れて行けばいいかなんてボク、・・・・・知らないんですけどっ、・・・・?!!」


 だが、意気込んでそう叫んでも。

 アルヴィスの下敷きにされているウサギ少年は、手足をばたつかせて喚くだけだった。
 その哀れっぽい姿は、まさしく本物のウサギのように無抵抗。
 馬乗りになられたままで、アルヴィスをはね除けようともせず、ただ手足を藻掻かせている。

 端から見れば、立派に動物虐待というか・・・・弱い者イジメな構図だ。

 しかしアルヴィスは、そんな事には一切構っていられない。
 何故なら、この時計を持ってチョッキを着たウサギだけが頼りなのだ。

 この狂ってしまったメルヘブンを元に戻せる鍵は、このウサギだけが握っているようなモノなのである。


「何だと!? お前は時計ウサギだろ! ウサギなら知ってる筈だ! いいから俺を連れて行け!!!」

「た、確かにボクは今ウサギですけどっ、・・・!! でも、知ってるかっていうとそういう訳じゃ・・・・」

「はァ?! 知らない筈が無いだろ!! お前が時計ウサギなんだから!! 何でも良いから思いつくとこに俺を連れて行け!!」

「ですから・・・・!! ボクだって、いきなりこんな姿になってびっくりしてて、何も事情は分かってないんですよ〜〜!!!」


 ウサギ少年が哀れっぽい声で訴えてくるが、アルヴィスはドレスシャツの胸元を掴み容赦なく締め上げた。
 使命感に燃え、現状を何としても打開したいアルヴィスとしては、イジメだの虐待行為だのとは、関知していられないのだ。


「そんな訳ないだろうが!? お前は時計ウサギなんだから、知らなかったら駄目じゃないか・・・・!!!」

「えっ、・・・でも駄目と言われても・・・・っ、・・・・!!」


 しかし、幾らウサギを締め上げても。
 時計ウサギは一向にアルヴィスを、何処へも連れて行ってくれそうになかった。

 ――――――というか、本当に知らないらしい。

 ついに諦めて、アルヴィスはウサギ耳の少年の上から身体を退かせた。


「・・・・・・・なんだ、時計ウサギの偽物かお前? ・・・・紛らわしい!」


 思わず、常の彼らしくなく悪態が突いて出る。


「・・・・・・・・・・」


 ぬか喜びだ。
 ウサギさえ探し出せば、自動的に物語の役割を果たすこととなり――――――・・・延(ひ)いては、この、誰かさんのせいですっかり歪んでしまった世界(メルヘブン)を元に戻せると思っていたのに。

 ―――――無駄な労力を費やしてしまった。


「いえ、・・・偽物、・・じゃなくて、・・・・・けほ、・・・」


 アルヴィスに胸ぐらを掴まれ締め上げられていたせいか、軽く咳き込みながらウサギ少年が口を開く。


「ボクは確かに今、『時計ウサギ』の役を担ってるみたいで。女王様とやらの所へ行かなくてはならないらしいんですけど、・・・・」

「!?」


 それを聞いて、アルヴィスはすぐにウサギ少年の腕を掴み立たせようとした。

 女王様。

 ・・・・そう。うろ覚えだが、お話の中では確か時計ウサギは、その為に急いで城へ向かっている筈だったのだ。
 それを主人公の少女・・・不本意にも今は自分らしい・・・が、追いかけるという流れだった気がする。

 『女王』というキーワードを口にする以上、やはりこの少年は単なるウサギじゃない筈だ。


「・・・・なんだ、行く場所分かってるんじゃないか。 じゃあ連れて行け!」

「あ、いえいえ、違いますよっ・・・・!!」


 慌ててウサギ少年が、首を横に振った。


「ボクが分かってるのは、そこまでで!・・・・・女王が何処にいるとか、・・・どんな様子のヒトだとかは・・・・全然分からないんです・・・」

「・・・・・・・・・・・・・・・」

「その、・・・気付いたらこんな格好になってまして・・・驚いていたら」

「・・・・・・・・・・・・・・・」

「・・・・どっかの誰かにイキナリ『女王からの呼び出し状』とかいう、紙切れを突き付けられて。・・・・・それで、ボクが何らかの役目を強引に押しつけられちゃってるらしいっていうのは分かったんですけど。でも、そう判断出来ただけで他は何にも分からないんですよ・・・っ!」

「・・・・・・・・・・・・・・」

「・・・・たぶん、ARMが暴走してしまったせいだと思うんですが・・・・・」

「――――――・・・ARMの暴走?」


 長々としたウサギの言い訳を、アルヴィスは黙って聞いていたが。
 ARMの暴走という言葉に、眉をしかめる。

 このトチ狂った世界が出来上がったのは、紛れもなく、あのフザケたチェスの司令塔のせいだ。
 暴走というより、あきらかに世界が狂うだろうことを期待して発動させたのだろうが、その事情を知っていると言うことはやはり・・・・・・・・・・。


「お前、・・・・チェスの人間だな・・・!」


 自然、顔が険しくなった。
 今はもう、敵だとか味方だとか言っている状況じゃなくなっているのは理解していたが、それでも敵(チェス)側に属する存在だと思うと近寄りたくはない。


「えっ? あ・・・違います!! 違いますよ!!」


 確信し、即座に掴んでいた腕を離し身構えながら、ウサギ少年を睨み付ければ。
 少年はびっくりしたように長い耳を揺らして、激しく首を横に振った。


「ボクはカルデアの民です! チェスなんかとは一切関係ありませんよ!!」

「カルデア・・・・・・?」


 魔法国家カルデア。

 メルのメンバーであるドロシーの、故郷。
 外界から隔離され外部からの干渉を一切受けず、またその国の民が外界に出ることは滅多に無いという・・・・・酷く秘密めいた場所。


「そうです、ボクの名前はインガ。・・・れっきとしたカルデアの民ですよ!」


 長い耳をピンと伸ばし、ウサギ少年・・・インガと言うらしい・・・は、胸を張って誇らしげに言い切った。


「・・・そのカルデアの民が、何故このような場所に居る・・・・?」


 警戒を解かずに、アルヴィスはウサギ少年を見据える。

 仲間のドロシーは例外として、カルデアの民が通常外界に出てくることはそうそうあり得ない。
 つまり、如何にあのはた迷惑な司令塔がふざけた事をやらかしたからと言って―――――――・・・ARMの影響を受けたからといっても・・・・カルデアから思い切り離れているこの場所に(・・・とはいえ、今居る場所が何処だかは見当が付かないので、離れているかも、・・という勘なのだが)、カルデアの民である彼が居るのはおかしい。


「・・・それに、ファントムは元々、カルデア生まれだ。・・・・・疑わしいな」


 だから同郷ということで仲間じゃないのかと暗に問うと、ウサギ少年は文字通りピョンと跳び上がらんばかりに驚いた様子を見せた。


「・・・・・え、・・・えぇ・・・・っ!??」

「本当だ。俺が子供の頃の話だが・・・・押しかけてきた本人が勝手にベラベラと喋っていったからな」

「・・・・・・・・・・・・・・・・」

「・・・ダンナさんと相打ちになるまでは、毎日のようにクロスガード本部に押しかけてきて、嫌がる俺に長々と思い出話やらその日にやったらしいおぞましい行為などを楽しげに話していった。その話の中で、確かに自分はカルデア出身だと言っていたよ・・・ファントムは」

「・・・・・・・・・・・・・・・・」

「アイツは本当に信用のならない、ムカつくゾンビだが。・・・・・俺に嘘は付かない」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・」


 アルヴィスが説明する度に、ウサギ少年の耳が垂れてしょんぼりとしていく。

 その様子に、アルヴィスはどうやら彼が本当にチェスと関係ないらしいと判断した。
 仮にもチェスの一員ならば、司令塔が自分と同じ出身であると知れば却って誇らしく感じるだろう事はあっても、ショックを受けることは無いだろう。


「(・・・・ファントムがカルデア出身だったなんて。・・・そんな、それじゃディアナもそうだし、ウンヴェッターもだし・・・カルデアの人間ばかりがメルヘブンに災厄もたらしてたんじゃないか・・・!)」


 ウサギ少年・・・インガが、しかめ面で何事かをボソボソと呟いた。

 だが、小さすぎてアルヴィスには聞き取れない。
 なにか、表情といい態度といい、恨み言のような内容みたいだったが・・・・。


「・・ん? 何か言ったか・・?」

「え? あ、いえいえ!! なんでもないです・・・・」


 アルヴィスが聞き返した途端に、ウサギ少年はキレイな銀髪と長い耳を揺らして首を横に振る。
 それから、何とも複雑そうな顔でアルヴィスを見返した。


「・・・・でも、アルヴィスさんは本当に、ファントムと親しかったんですね・・・・」


 長く真っ白な耳を、まるで水が無くて萎れた花のように根元からクタリと垂れ下げ。
 澄んだアクアブルーの瞳を悲しげに潤ませて、此方を見る様子はさながら・・・・『構って貰えず寂しがって、悄気(しょげ)ているウサギさん』そのものだ。

 背格好から言ってアルヴィスと同い年くらいの少年なのだが、その長い耳と表情のせいかとても愛らしく見える。
 思わず、小動物好きなアルヴィスがキュンと来るくらいの可愛らしさだ。

 ・・・・・あくまで、ウサギとして見て、の印象だが。


「はあ!? ・・・親しいだと!??」


 しかし、アルヴィスは声を荒げた。
 様子は可愛いが、言われた言葉はどうにも聞き捨てならない。



 自分とファントムの関係が、一体いつどんな時に見られれば。

 あんな頭のネジが全て外れ、世界中の邪悪な要素ぜんぶをブチ込んで魂をムラ無く染め上げられたかのような男と!!

 親しいなんて判断されてしまわなければならないのか???! ・・・・全く持って、心外だ。



 憤慨して、アルヴィスは元からキツク見える眼差しを更に吊り上げて、ウサギ少年を睨み付けた。


「俺がいつ、あんな変質者と親しくなったっていうんだ!? 俺は子供の頃から、アイツに酷い仕打ちばかりされ・・・・・!!」

「―――――だけど、ファントムは貴方のことが好きなんですよね。だから幼い貴方に、タトゥを入れた。・・・・そして、貴方だって・・・・・・・・」


 ウサギ少年は寂しそうに、アルヴィスにとっては怖気(おぞけ)が走る不気味な結論付けをして、静かに此方を見つめる。


「・・・・・・・・・・・・・・・・、」


 アルヴィスは反論しようと口を開き、・・・・言うべき言葉が見つからずそのまま閉ざしてしまった。
 呆れて、ものも言えないとは、この事だ。


 何故自分が、ファントムに好かれなければならないのか。
 まして、自分がファントムを好きだなんて・・・・・この少年は頭がおかしいのだろうか。

 アルヴィスがファントムに、呪いのタトゥを入れられたのは僅か10歳の頃の事だ。
 当時、既にファントムは成人した今の姿だったから・・・・・・2人の年齢差は優に2桁はあっただろう。

 小さな子供を攻撃し、しかもゆくゆくはゾンビ化する呪いを掛けるなど嫌がらせ以外の何物でもない。

 更にアルヴィスが実力で適わないのを承知しているくせに、今ならボクを殺せるよとばかりに、しょっちゅうチョッカイを掛けてくるという・・・正に悪魔そのもののような男である。
 ファントムはアルヴィスのことなど、ちょうど良いからかい相手としか思っていないのだ。

 ウォーゲームを始めたのと同じ理由だ――――――・・・・退屈しのぎの、単なるオモチャ扱い。
 そして、そんな相手をアルヴィスが憎んだり嫌ったりするのは当然だが、好きになる道理は断じて無いのである。


「・・・・・・・・・・お前な、・・・・何を知ってるのか知らんが・・・・・・・・・」


 呆れているという態度を隠せないまま、ウサギ少年を見つめ。
 アルヴィスは聞き捨てならない言葉の撤回を求めようと、口を開き掛けた。


「そんな勝手な憶測をだな・・・・、・・・・」

「・・・・・・・・ファントムは良く、個人的に貴方に逢いにレギンレイヴ城ヘ来ていたという話ですし・・・・次の対戦相手の事を貴方には明かしたり、時にはARMを贈ったりもしていたとか・・・」

「!!?」


 だが、遮るように言われた言葉の内容に驚愕し、そのまま口を閉ざしてしまう。

 紛れもなく、事実そのものだった。
 けれど何故、このウサギは誤解とはいえアルヴィスとファントムの関係を知っているのだろう?

 考えてみればアルヴィスの名前や立場はウォーゲームの様子を映す月を見て、知っていても不思議は無いし――――――・・・ファントムにタトゥを入れられた経緯(いきさつ)だって、試合中に暴露する羽目になったので分かっているのは不自然じゃない。

 だが、――――――・・・敵の司令塔が個人的に自分に逢いに来たりしている事まで、知る筈はあり得ないのに。


「・・・な、・・・」


 何故知っている? との詰問の言葉は、あんまり目の前の少年が寂しそうで辛そうな表情を浮かべていたので再び声には出せなかった。

 元気を無くし、弱り切ったウサギのような少年(実際ウサギ耳が生えているから、ウサギといえばウサギなのだが)をキツク怒鳴ったりすれば。
 そのまま、ひっくり返ってショック死してしまいそうな気がしたからである。


「――――――すみません、ボクが言うべきことでは無かったですよね。ボクが今、貴方に何を言う訳にもいかない立場なのは分かってます。時間(とき)の流れは変えちゃ駄目ですからね・・・・」


 問いただすタイミングを失ったアルヴィスに、ウサギ少年は更にキッカケを潰そうとするかの如く話題を終了させようとしてきた。


「ときのながれ、・・・・・・・・・・・?」

「いえいえ何でもないんです! 気にしないでください」


 意味が把握出来ずオウム返しにするのが精一杯のアルヴィスに、ウサギ少年は笑顔になって何かを吹っ切るかのように明るく言い切る。
 しかし、長い耳を悲しそうに垂れたまま悲しそうな、全然吹っ切れていない笑顔で言われても・・・そうなのかとは全く納得出来ないのだが。


「・・・・・だけど、・・」


 気にするなと言われたら、余計に気になるのが人間である。

 ARMの暴走やら、ときの流れ?やら、ファントムと自分のことにやたら詳しい事といい―――――――気になる事が山盛りだ。
 どうやら本当にチェスでは無いらしいが、何故カルデアの民がココに居るのかとか、やっぱり謎だらけである。

 謎だらけの、しかもアリスであるアルヴィスに道標(みちしるべ)にもならないらしい・・・・役立たずの時計ウサギだ。


「・・・・・・・・・・・」


 混乱しながら。
 アルヴィスは胡散臭(うさんくさ)いウサギの正体を見極めようと、上体を起こした体勢の少年に四つんばいで近づき顔を凝視―――・・・しようとした途端、誰かにグイッと後方へと思い切り肩を引っ張られた。


「・・・うわ・・・・っ!!?」


 盛大に、引っ張られるままに後ろへとひっくり返る。

 だが、下草に強(したた)かに背を打ち付けると思われたアルヴィスの身体はボスッと柔らかく・・・その誰かの腕に抱き留められた。


「―――――――浮気は、許すつもり無いんだけど・・・・・?」


 聞き覚えのある、甘く柔らかな声が降ってきて。
 アルヴィスは反射的に、顔を後ろへ振り仰いだ。

 サラサラとした、細い銀糸のようなキレイな髪。
 アメシスト色の、キレイなアーモンド型の瞳。
 キレイなキレイな、・・・・白く玲瓏(れいろう)とした天使面(中身は悪魔)の美少年。

 目に痛い、派手なしましまピンクの猫耳が、銀髪頭からピョコンと見えている。


「・・・ファントム!!」


 認識した瞬間、アルヴィスは後ろから伸ばされた腕を振り払い、素早く飛び退(すさ)った。


「お前っ、・・・何処からっ、・・・・!?」

「やあアルヴィス君vv さっきぶりだね・・・ご機嫌いかが?」


 突然の出現に、驚いてまだドキドキしている心臓を押さえ付けながらアルヴィスが怒鳴れば、ファントムはいつもの飄々とした様子で屈託のない挨拶をしてくる。


「・・・イキナリ現れるなっ! ビックリするだろうがーーーー!!!」

「え、だってボクはチェシャ猫だもん。何処にでも現れたり消えたり出来るのが、ボクの能力なんだよねー」

「だからって・・・・・・・、」


 うっかり押し黙りそうになりつつ、アルヴィスは気力を振り絞る。

 もっともな言い分だが、ここで言い負かされてはならない。
 今までの経験から、ここで押し黙れば良いように言いくるめられてまたオモチャにされることが決定なのだ。
 これまで口でファントムに勝てた試しなど無いが、諦めたらそこで終わりになってしまう。

 ―――――抗い続ける事こそが、大事なのだ・・・・多分。


「・・・そ、それに浮気ってなんだ・・・・! 俺はお前と付き合ってるつもりは一切無いんだが??」

「やだなあ、ボクとアルヴィス君は運命的な絆で強く結ばれているんだよ? アルヴィス君が10歳の時から、ボクがちゃんと目を付けておいたんだからvv 一緒に永遠を生きる為の、ボクからのプロポーズのプレゼントだって順調に育っているし・・・それってつまり、結婚前提で付き合ってるって事と同じだよ! だから浮気なんか許さないんだからねっ?」

「・・・・・・・っ」


 1を指摘すれば、倍どころか10倍にも100倍にもなって、ふざけた言い分がどっさりと還ってくる。
 こんな還元大セールなんか要らない!!・・・・と思いつつ、アルヴィスは聞き捨てならない言葉の数々に怒鳴り返した。


「・・・・・プレゼントじゃないだろアレはっっ!!? 呪いがプレゼントってあり得ないだろアレは嫌がらせだっっっっ!!! そもそも俺は男だし、例え出来たとしてもお前なんかと結婚なんてする訳が・・・・・!!!」

「心配しなくても平気だよ、ボクがメルヘブンを手に入れたら法律なんか改正しちゃうし! 照れなくて良いんだよアルヴィス君、キミの気持ちはちゃあんとボクが理解してるからねっvvv」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・もういい。お前と話してるとこっちの頭がおかしくなる・・・・!!」


 激しい舌戦を繰り広げた後、アルヴィスはすっかり降参して口を閉ざした。
 結局、とっても不本意だが今回も言い負かされてしまった。

 ファントムとの言い合いは、いつものことだが不毛なだけである。
 幾らアルヴィスが否定したって、ファントムが全然それを理解せず自分勝手な法則を持ち出して言いくるめてくるのだから、無駄なだけなのだ。

 だから、相手にするまいといつも思うのだが―――――――どうしても聞き捨てならない事を口走られると、言い返さずにいられない。
 言い負かされればオモチャにされるのが分かっているから、ついつい勝てないだろうなと頭の片隅で思いつつも・・・・駄目なのだ。

 毎回、やっぱり言い負かされてアルヴィスが釈然としない想いを抱えながら黙り込む羽目となるのだが・・・・・。


 どう考えても、コレはイジメの一種だとアルヴィスは思う。
 ファントムは、口の上手くない自分を虐めて楽しんでいるのだ。

 嫌がらせとしか、思えない。


「・・・・・・・・・・・・・・・・」


 アルヴィスは、遠巻きに自分たちの言い合いを見ていたウサギ少年へと視線を向けた。


 ――――――どうだ、ほら嫌がらせされてるだろう?

 これのどこが、俺がファントムに好かれてる状況だって言うんだ・・・・?!


 情けないが、見られてしまったついでにせめて、不本意な誤解(ファントムに好かれているという誤った見解)を撤回して貰うべく。


「・・・・・・・・!!」


 しかし、ウサギ少年はなおさらショックを受けたように耳を垂れさせ、ぴったり顔の両横にくっつけるようにしながら、ジワッと涙がにじんできそうな瞳でアルヴィスを見ていた。


「やっぱり・・・・! アルヴィスさんはこの時代からもう、その男とデキてたんですねっ!!?」


 何処をどう見たら、そう映るのか。
 悲しそうに叫ぶウサギに、二つの声がほぼ同時に重なる。


「ああっ!? なんだって!!!?」

「なに、・・・このウサギ?」


 予想に反し、ものすごく許し難い言葉を聞き思わず大声を出してしまったアルヴィスと。
 そのアルヴィスを後ろから抱き締めつつ、紫の瞳を細め胡乱(うろん)な表情を浮かべたファントム。


 異世界のおとぎ話の国に迷い込まされた少女(元・少年)と、少女を更に謎へと引き込む不思議(で底意地の悪い悪魔)な猫、そして案内役の筈の(でも道も分かってない駄目?)ウサギ・・・・・・・・・奇妙なトライアングルが完成しつつあった――――――。







 NEXT ACT4

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言い訳。
段々、話が怪しくなって参りました☆
これもう、アリスじゃな・・・(爆)
次回はきっと、猫とウサギを引き連れた桃太ろ・・・じゃなくてアルヴィス嬢(笑)が、更に別のアリスキャラクター達と出逢う話・・・になるかも知れません。
でもキャスト、誰を何にするんだったか微妙に忘れてんですよねー(死)
どうしましょう(笑)
―――――――あ、念押ししておきますが、この話はファンアルが基本です^^
ゆきのがインアルも好きなので多少フラグは立ちますが、・・・つかアルヴィス総受フラグですけど、ファンアルです(笑)
なんかすっっごいアルヴィスがファントム嫌がってますけど、そこはまあ原作ベースということで☆
嫌よ嫌よも好きの内・・・ってヤツですねvv