『緋色姫−2−』 「・・・・・戯れ言はいい。出せ」 「駄目」 「カカシ・・・・いいから、オレを出せ・・・・・!!」 出逢った頃より、数段大人びて。 あどけない幼さは、なりを潜め・・・・・踏み荒らされる前の白雪のような肌は、尚いっそう妖しく輝き。 幼い頃より変わらぬ、艶やかな黒絹の髪はあの頃より少し伸びて。 傷付きながらも、可憐さと純粋さを、余すことなく内包していた筈の黒々とした瞳は―――――――・・・今や、見つめた者を虜(とりこ)とするかのように更に猫めいて、妖艶な光を宿している。 教え子だった時代と同じ、飾らぬぶっきらぼうな物言いを発する唇でさえ、白い顔の中で朱色く艶めいて・・・・・見る者を誘うかのようだ。 長い睫毛に縁取られた、猫のような瞳に見つめられると。 瞳術を使われていないのに、僅かにも気を緩めれば・・・・・・・・・・魂ごと全てを、持って行かれそうになる感覚に陥る。 「・・・・・、駄目」 出せとの要求をはね除けるカカシの声は、少し擦れた。 昔から、実はこの瞳に弱いのだ。 耐性は出来ている筈だし、自分だって写輪眼を持ち瞳術にだって免疫はあるのに―――――――サスケの、この目には弱い。 言葉では、決して言わない癖に。 サスケは、・・・・・・・・目にだけは、気持ちを正直に現すから。 絆されてしまいそうになる・・・・頼みを聞いてしまいそうになる。 願いをはね除けたら、確実に自分を嫌うのが分かっているから。 嫌われても良いと覚悟しているのに、・・・・・・・・・嫌われたくないと本当は思っている心を自覚してしまいそうになるから。 昔から、・・・・必死に隠したしバレてはいないだろうが・・・・・サスケのこの目には弱いのだ。 「だってさ、・・・・」 言いながら、カカシはサスケから僅かに目を逸らした。 声にも言葉にも表れていない――――――けれど、此方を見るサスケの目に、確かに『懇願』の色が滲んでいるのに気付いたから。 ここで、絆されてやるわけにはいかないのだ・・・・絶対に。 「オレは、・・・サスケとずっと一緒に居たいから」 だから、目を逸らしたままで言葉を紡ぐ。 「サスケをここから出したら、色んなヤツがサスケを狙うよ」 「! 狙われるのがなんだってんだ!! オレが返り討ちにしてやるし、オレ自身が望んで戦いたいヤツがいる・・・・!!!」 オレの為を思ってこういうふざけた事するって言うなら、オレを出せ・・・・そう叫ぶサスケに、カカシは首を横に振った。 「イタチと戦えば、良くて相打ち。大蛇丸にだって、まだお前の力じゃ勝てないさ」 「!!? 五月蠅い!!! お前の予想なんかオレは聞いてない、勝つのはオレだっっ!!」 「・・・・・・・・・・オレはもう、失くしたくないのよ」 自分の言葉に激昂するサスケに軽く返して、カカシはそっと鉄格子に備え付けられた錠前を外し、中へと入る。 「・・・・・・・・・・・・・・・・・、」 取り繕わずに、うっかりと本音を乗せた声音は、酷く冷たさを持っていて。 それがサスケにも伝わってしまったのだろうか・・・・・・・・・・・興奮状態だった筈のサスケが、押し黙る。 目線を合わせれば、血の色が消え漆黒を取り戻したサスケの瞳が、鏡のように銀髪の男の姿を映した。 笑顔なのに、冷えた眼をしていると自分でも思った。 これでは、サスケが怯えてしまうだろう。 またオレの印象が悪くなったんだろうな・・・・そんな想いが頭を過ぎりながら、カカシはそれでも言葉を続ける。 「・・・・今まで、沢山失ってきたからね。ま、それが忍びってモンだし・・・・仕方ないかなって思いもする。でも、もう・・・・・」 今は、怯えさせてしまっても仕方がない。 可哀想に思ったり、サスケの想いに同調して絆され、解放するような愚行をするくらいなら怖がっていた方が都合もよい。 「大事なモノは、失くしたくない。だから、・・・・・」 言いながら、カカシはサスケの細い顎をすくった。 手足を枷で拘束された状態で、尚かつ、枷はチャクラの発動を押さえ込む術式が練り込まれたモノだからサスケは抵抗出来ない。 つまり先ほど写輪眼になった所で、サスケはカカシに対して術は使えなかったのである。 サスケがすぐに写輪眼を引っ込めたのも、カカシを操る事を諦めたと言うより・・・・押さえ込まれる力に反抗出来るだけの力が尽きたからだ。 「・・・・・・・・・・・・・」 抵抗出来ないまま、悔しさを滲ませてカカシを睨む瞳が本当にキレイだと思う。 真っ白で清廉で、穢れなくて――――――守ってやりたいと思うと同時に、酷く汚して滅茶苦茶にしてやりたくなるような美しさ。 サスケの白い肌を思わせる、まだ誰にも踏み荒らされる前の雪を・・・・そのままにして眺めておきたいような、荒々しく踏みつけ跡形もなくしてしまいたくなるような・・・・そんな矛盾した衝動に駆られるキレイさだ。 「サスケ、・・・・オレね」 華奢な顎をすくったまま、至近距離でカカシはにっこり笑った。 「積もったばかりの真っ白な雪を見たら、真っ先に踏み荒らしたくなるし・・・・・・・」 「・・・・・・・・・」 「キレイな花を見つけたら、すぐ摘み取りたくなるタイプなんだよ」 「・・・・・・?」 カカシが何を言いたいのか、計りかねたのだろう。 顎を掴まれ、不快そうに顰めていたサスケの眉尻が、少し困ったような形に下がった。 それに構わず、カカシは言葉を続ける。 「だって、・・・キレイだってボンヤリ眺めてる間に、他の誰かに先越されて踏まれたり・・・・摘み取られたら悔しいでしょ?」 「・・・・・・・・・・・」 「だから、見つけたら真っ先にオレが・・・ねっ?」 先越されるのとか、我慢出来ないでしょ・・・・そう言ったら、サスケが何故か余計に怯えた顔を見せた。 けれどそれにも構わず、カカシは更に言葉を続ける。 今度は、笑みは浮かべない――――――・・・笑って言える程、軽い気持ちの物言いでは無いからだ。 「イタチも、大蛇丸も・・・・里の皆も、サスケを探してる。もちろん、ナルトも」 「・・・・・・・・・・・・・」 「だけど、誰もサスケの事は見つけられないよ。オレが、ここにずっと隠しておくからね」 「・・・・・・・!??」 サスケが今度こそ、顔色を白くしてカカシの方を凝視したが、カカシは笑みを消した顔でじっと元・教え子を見返す。 「それがサスケの為だし、・・・・オレの為だから。絶対、サスケはここから出さないよ」 「・・・・・アンタ、・・いったいオレを・・・・どうするつもりだ・・・・?」 黒曜石のような、真っ黒な瞳を見つめ。 カカシは、静かに言い放った。 「どうする? 決まってるでしょ・・・・・サスケはね、ここでオレに飼われるんだよ」 「なっ、・・・!!」 「ご飯もあげるし、下の世話だってしてあげるし、言うこと素直に利けるようになったら枷も外してあげるよ。でもそれまでは、このままかなー」 「・・・・・・・・・!!」 「オレが命がけで、せっかく大蛇丸の所から攫ってきたんだから、逃がすわけないじゃない」 見た目が極上のお姫様みたいに美しく、そしてその身体に秘められた能力も尋常じゃない上に希少性が高いから。 サスケは、様々な人間から色々な意味で狙われている。 サスケの兄イタチに限っては、サスケの方から行方を捜し打ち倒したいと願っている相手ではあるが・・・・幼い頃の、容易に殺せただろう時に命を奪わず、長じた後も、何度も殺す機会に恵まれただろうに手を出さなかった事を考えれば―――――――それなりの思い入れも、執着も弟にあると考えておいた方が良いだろう。 大蛇丸は、サスケの能力と器として身体を欲しがっている。 木の葉の里のメンツは、里を抜けたサスケを決して許しはしないだろうし・・・・『うちは』の血を宿す希少種として、捉えた後は血を保管する為にサスケを幽閉しかねないとカカシは踏んでいる。 恐らくナルトだけは、・・・・・・・純粋にサスケの身を案じ・・・彼のことを思って連れ戻したがっているのだろうが。 しかし、それが分かっているだけにカカシとしてはナルトにこそサスケを渡したくない。 ナルトとサスケ、お互いに。 相反しつつ、惹かれ合うモノを感じているのが―――――――・・・幼い頃から2人を見て指導してきた立場であるカカシには、分かっていたから。 何度も、和解し合えるタイミングはあったし、ナルトとサスケが互いに歩み寄れる機会もあった。 けれど、それをずらし・・・機会をことごとく潰したのは他ならぬカカシである。 ナルトとの繋がりが深ければ、もしかしたらサスケは里を抜ける事も無かったかも知れない。 仲間のことを大事に想い、復讐を忘れる道も選べたかも知れなかった。 その余地はあると、カカシも思った。 ―――――――・・・けれど。 どうしても・・・・・・・・・・その道だけは、選べなかった。 「・・・好きな子の幸せ1番に考えてあげられる程、オレは寛大じゃない・・・・」 「・・・・なに、・・・?」 いきなり、こんなセリフ言われても、恋愛ごとには殊更(ことさら)鈍いサスケでは絶対に理解出来ないだろう。 理解出来ないと分かっていて、カカシは本音を暴露する。 「ほら、オレも結構生まれた時から割と不幸だったのよね。・・・だからさ、大人になった今・・・少しは幸せ貰いたいなと思って」 「・・・・・?」 「指咥えて見てたら、間違いなく失うって分かってるモノがあったら―――――――・・・そりゃ手を伸ばすべきでしょ!」 「? ・・・・お前が何を言いたいのか、・・・・分からない・・・・」 「要するにね、サスケ・・・・」 困惑顔を隠せないサスケの顔を、カカシは掴んだ顎で引き寄せ・・・その唇に自分の唇を合わせた。 教え子じゃなくて、指導する教師でもなくて。 下忍と、それを先導する上忍の立場でもなくて。 ずっとずっと、・・・・・・・こうして触れたかった。 嫌われたくなくて・・・幻滅されたくなくて、サスケからせっかく得ることの出来た『信頼』を壊したくなくて――――・・・・『教師』の仮面を被り続けてきたけれど。 でも、そうやって。 先生ぶって、サスケの望む大人を演じていたら・・・・サスケは何処かへ行ってしまったから。 今だって拘束を解いたら、すぐに逃げて―――――――・・・手の届かない場所へ行ってしまうだろうから。 もう、・・・躊躇わない。 嫌われて構わないから・・・・・望んでるまま、行動する。 2度と後悔したくないから、――――――・・・・サスケをこのまま、自分だけのモノにする。 「!?」 驚いた顔のまま、固まって声もないサスケに。 カカシは、顔にいつも貼り付けたままになっている、定番の『笑み』を浮かべ・・・そっと囁くように言った。 サスケが里を出た時に、もう逢えないのかと本当に悔やんだから、今度は絶対に離さない。 「・・・・・オレが、幸せになりたいの。オレの幸せの為に・・・サスケはずっと、此処に居てね」 酷く、身勝手なことを言ってるという自覚はあった。 醜い独占欲と、執着欲でしかない行為だということも。 復讐に駆られ、身の程をわきまえずに強敵に立ち向かおうとしている教え子を、守ろうとしているとか。 器と能力を手に入れんが為に、サスケを狙っている輩から守る為だとか。 裏切り者を捉え、血の保存の為に里の奥深くに閉じ込めようとしている里の者達から守りたいからとか。 そんな綺麗事な理由は、ナルトにも隠してここでサスケを監禁している事で、・・・・・・・全てが崩れ去っている。 けれど、手を離したら他の誰かと一緒に何処か行ってしまうと分かっているのに。 ナルトなら、サスケを闇から救い出し・・・・共に光の道へと歩き出せるだろうと分かっているのに。 どうして、閉じ込めた檻から彼を出せるだろう? その光の場所へ行くには、カカシは手を血と闇に染め過ぎている。 自分が行けない・・・二度と手が届かない場所へ、サスケが行ってしまうと分かっているのに――――――・・・どうして、彼をナルトの元へ行かせられるだろう。 例えその光の中を進む事が、サスケにとって唯一本当に、幸せな道で。 たった1つ、彼の心が救われる道なのだとしても―――――――・・・カカシは、サスケを手放せない。 「此処に居たら、サスケはオレだけのモノだよ。誰にもやらなくて済むんだ・・・・」 「・・・・・・・・・・・・・・」 「サスケは、オレが見つけた・・・たった1つの『失くしたくない』モノだからね」 黒絹の髪、白い肌した・・・真っ黒な瞳の、キレイなキレイなお姫様――――――・・・・謳うように、カカシはサスケに言い聞かせる。 カカシの狂気めいた物言いに当てられたのか、サスケは白い顔を更に青白くしてただ小さく身を震わせ、押し黙っていた。 「サスケはね、オレが見つけたお姫様だよ。お姫様はね、・・・・誰も来られないような深ーいふかーーい、奥まった場所に匿われているものなんだ」 「・・・・・・・・・・・」 「それで、大切に匿って貰って・・・・・・・・・・そこで言いなりになって暮らすの。それが、お姫様の幸せなんだよ」 「・・・・・・・・・・・そんなので、お前は本当に幸せなのかカカシ・・・・・・・・・」 乾いた声で発せられた問いに、カカシはニッコリと眼を細める。 「幸せだよ?」 嫌われても蔑まれても――――――・・・心が得られなくても、サスケが居てくれるならカカシはそれでいい。 「オレは、サスケを傍に置ければいいんだから。それに・・・・・・・」 もう一度サスケの顎をすくいあげながら、カカシはその切れ長の瞳に冷たい光を宿した。 「それに・・・・誰かに奪われるくらいなら、オレはサスケを殺した方がマシだよ」 失うくらいなら、この手で全てを終わらせて永遠に自分だけのモノにしたい。 血と肉を啜り、骨をかみ砕いて・・・・サスケの全てを自分の中へ取り込んで。 自分だけのモノにする。 そうすれば、もう誰もカカシからサスケは取り上げられない。 奪われることは、絶対にない。 それはとても、・・・・強い誘惑だ。 けれど、そうしてしまったらサスケに触れることが、出来なくなるから。 やはりこれは、最終手段だとカカシはひっそり思い直す。 サスケの美しい姿は、全てを眺め、触れ・・・愛でてこそ価値がある。 「・・・・・・・・・サスケの為なら、オレは他全部捨てられる」 「・・・・・・・・・・・!!」 サスケの瞳が驚愕に大きく見開かれるのを見つつ、カカシは二度目の口付けをした。 「サスケさえオレの傍に居るなら、もう他はどうだっていい・・・・里だって家族・・はもう居ないけど、居たとしても家族だって何だって、売ってやるし裏切るよ。サスケ以外は、要らない」 キスの後にそう、一気に捲し立て―――――――唇を離した途端に顔を背けたサスケと目線を合わせるように、無理矢理、髪を鷲掴んで上向かせた。 「だからサスケも・・・・・オレに全部、くれるよね?」 「・・・・・・・・っ、・・」 ああ、・・・・・・理不尽な仕打ちに怒りに燃える黒い眼(まなこ)が、本当に美しい。 黒々とした瞳を、今にも紅蓮の炎が現れて灼き尽くし―――――・・・・血色に虹彩を染めそうな、キツイ眼差し。 見つめていると、クラクラする程に気分が高揚する。 「嫌だって言っても、ここからは出してあげないけど」 「・・・・・・・・・・・・・」 紅玉色に染まる瞳が、至近距離で見たくて。 わざと煽るようにそう言ってやれば、思った通りサスケの眼差しが更にきつく吊り上がり・・・・・徐々に虹彩が赤みを帯びてくる。 「嫌だって言っても・・・・サスケの全部を、オレは奪うけどね」 紅玉の瞳に、キレイに浮かび上がった三つ巴紋の美しさに見惚れながら。 だから大人しくオレに飼われてね―――――――・・・笑みと共にそう言ったカカシを、サスケはどう思ったのか。 「・・・・・・・・・・・・・・・・」 サスケは、良くできた雛人形のような白く美しい顔を強張らせたまま、ただじっと言葉も無くカカシを見つめていた。 そこに拒絶の色を見て、カカシは冷笑を浮かべる。 美しい顔は、どんな表情を浮かべていてもキレイだ。 サスケの鼻っ柱の強さと、諦めの悪さはカカシもお気に入りである。 これから色んな手管を使って懐柔し、屈服させ、新たな表情を見るのもまた楽しいことだろう。 今度来る時は、緋色の打ち掛けでも用意してやろうか。 着せたらさぞかし・・・・・本人は嫌がるだろうが、見事だろう。 サスケの白い肌と黒髪には、緋色の着物は良く似合う。 黒目の時でも、今のように写輪眼を発動している時でも、緋色は壮絶に似合うだろう。 サスケには、赫色が相応しい。 着物でも、女に差す紅でも、・・・・・・・・・迸らせたばかりの、真っ赤な鮮血でも。 その白い肌に、黒絹の髪に、妖艶で氷のように鋭く冷たいその双眸に――――――・・・・緋色はとても良く似合う。 「・・・・・・・・・・・サスケは、オレのものだよ」 誰にも見せない、触れさせない・・・・・その存在の全ては、自分だけのモノに。 此処に、一生閉じ込めて匿えば―――――――・・・何者であろうと、サスケを手にすることは叶わない。 1度目に手放した時に・・・・・本当に後悔したから。 今度は絶対、離さない。 復讐心に囚われ、いつ里を出奔してしまってもおかしくない・・・・そう危惧した時に、こうしていれば。 嫌われても構わないから、強引に掴まえて自分だけのモノにしておけば、サスケは里を抜けずに済んだ筈だったのに。 自分の独占欲を知られるのが嫌で、年甲斐もなく執着している事を悟られたくなくて―――――――大人として距離を置いた対応が、あの悲劇を生んだ。 本当に、サスケに2度と出会えなくなるのではと心底から怯えた日々を過ごす羽目となったから。 ならばもう、後悔しないように。 2度目に手に入れることが叶った今は―――――――――決して、サスケを解放すまい。 そうカカシは、心に誓う。 ありったけの愛情と執着と・・・・それで足らなければ物質的な鎖や薬を使ってでも、サスケは手放さない。 「お前のことが、大好きだよ」 腕の中で強張っている、成長期の青年にしては随分と細い身体をカカシはそっと抱き締めた。 「愛してる。・・・・サスケの兄さんより他の誰より、・・・・・ナルトよりもね」 「・・・・・・・・・・・」 腕の中の、愛しい存在は答えない。 けれどカカシは、満足だった。 自分の腕は今、愛しくて堪らない唯一のモノを抱いている。 今は身体しか手に入らないけれど・・・・・・・・いずれ心だって、手に入れるから。 だから今は、こうして抱き締めて触れられるだけでいい。 だってサスケは永遠に、ここでカカシだけを待つのだから。 他の誰にも、取られる心配は無いのだから――――――――――。
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