『06. 君の吐息は僕の媚薬』 「ん・・・っ、あ、あ、・・・・・っ」 深々とその白い身体の中心に、侵入し。 甘く啼く声を聴きながら、その感覚を堪能するのは至福の一時だ。 苦しげに寄せられた眉、潤んだ目元、必死に噛み締めようとしては身の内から沸き起こるのだろう悦楽に甘く解ける唇―――――─普段は表情の乏しい人形のようにキレイな顔が歪むのを見る様は、何物にも代え難いとファントムは思う。 下肢を絡めたまま、その肉付きが薄い白い肌の下にある肋骨を撫で上げるように手の平でなぞり、淡く色づいた胸の突起に口づけると。 青年は耐えられない、というようにゆるゆると首を振った。 「・・・・う、あ・・・・やだっ、そこ・・・!!」 掠れた声を上げ、ファントムの頭を押しのけるように両手で髪を掴んでくる。 同時に身体もビクビクと震え、ファントムを受け入れている箇所が収縮を繰り返す。 「嫌じゃないでしょ? ・・・・・アルヴィス君、ココ触られるの好きだもんね?」 「あ・・・っ! やっ、あ、あ」 「・・・・ココにキスすると、いっぱい僕を締め付けてくれるよ・・・?」 「・・あーっ、あ、ああ・・・っ、んっ!」 アルヴィスの両手には押しのけようとしているのか、縋っているのか分からないような力しか篭もっていないので、ファントムはされるがままにしておきながら青年の背に回している手とは逆の方の手でもう片方の突起を摘んでやる。 「あーーーー・・・っ、やっ!やだやだっ、それ・・・んんっ!!」 唇で軽く吸い上げながら、もう片方に優しく爪を立ててやると、啜り泣くようにアルヴィスの声のトーンが高くなった。 互いの下腹に挟まれ、蜜まみれになって堅さを増していたアルヴィス自身が更に膨れ上がるのを感じる。 あと少しの刺激で弾けてしまいそうだった。 ファントムを締め付ける後ろも断続的に痙攣を繰り返し、奥へ奥へと誘うような淫らな反応を示している。 「・・あ・・・んっ、も・・・・摘まな・・っ・・、出・・・るっ」 泣きそうな声をあげて、アルヴィスが縋るようにファントムの頭から手を離し首に縋り付いてきた。 耐えきれなくなってきたのかファントムを更に奥へと誘うように腰を揺らして、腹の間にある自身を擦り上げてくる。 「気持ちい・・・っ、出る・・・、んっ、あ・ああ・・・・」 無意識に訴えてくる痴態が、酷く扇情的だ。 その姿はとても可愛くて、・・・・お望みのままにしてやりたい所なのだけれど。 「――――ごめんね、」 ファントムはそう言って、首に縋り付いていたアルヴィスの腕をそっと解くと上体を起こし・・・・・・解放間近で勃ち震えている青年自身の根元を強く握りしめた。 「・・・・あうっ、・・・・!?」 アルヴィスの溢れそうに透明な水を湛えた、大きな瞳が見開かれる。 濡れた睫毛と、眼球の表面に零れ落ちそうな程張られた涙が、アルヴィスの瞳を極上の蒼い宝石のように魅せる。 ファントムは腕の中の恋人に、柔らかく微笑んだ。 「・・・一緒にいこ? だからもうちょっと我慢、・・・ね」 「・・・や・・・っ、!?」 優しく言って、青年の膝裏に回した腕で押し上げるようにして、片足を肩へと担ぎ上げた。必然的にアルヴィスの腰が持ち上がり、もう片方の足もファントムの肩近くまで上げられる。 「んっ、あ、あ、あ・・・・・や・・・・っ、・・・?」 自然、体制的に結合部分も深くなり、青年は戸惑うような声を上げながら頭を仰け反らせた。 手で握り込んだアルヴィス自身と、ファントムを咥え込んでいる敏感な粘膜が同時にビクビクと痙攣をする。 「ん・・・っ、スゴイ締め付けてくるよ・・・気持ちいい」 「あ、・・う、ファントムっ、・・・・苦し・・・っ、も、・・・・!!」 身の内を深々と穿たれながら、ファントムをトロトロと柔らかくけれどキツク締め付ける蠕動を繰り返しつつ、アルヴィスが身悶えた。 身体を二つ折りされるような体勢で、胸部を圧迫しないようにはしているものの重心を掛けて体内深く挿入され、尚かつ解放間近だった己自身を塞き止められていてはアルヴィス的には堪ったものでは無いだろう。 しかし、苦痛とも取れる青年の喘ぎをファントムはサラリと聞き流し、言ってやる。 「・・・苦しいだけじゃ・・無い、でしょ。アルヴィス君、僕がこうやって突いてあげる度に、・・・ドクドク脈打って・・・先端から厭らしい液がたくさん出てきてるよ・・・?」 「!? あああっ、・・・あーーーっ、あ、あ、あ、、・・・」 律動を止めないまま、根元を戒めている手の親指を少しだけ緩め、またキツク締め上げてやれば悲鳴じみた喘ぎと共に、先端から半透明になった液体がじゅくじゅくと溢れてきてファントムの指を濡らした。 それと連動し強い締め上げが来て、ファントムも奥歯を噛み締めてその衝撃に耐えながら、アルヴィスに結合部分の反応を教えてやる。 「・・アルヴィス君がいっぱい感じて・・・気持ちよくなってくれてるから・・・、こっちまでその蜜が垂れてきて、いっぱい濡れてるよ・・・・」 「・・・あ・・・あっ、ああ・・・・んっ、・・・ああーーーー・・」 繋がった箇所からはグチュグチュという淫らな水音が聞こえ、シーツにシミを作っていたがアルヴィスにはもうそれを気にする余裕などは無いようだった。 アルヴィスは盛大に喘いで、もっと奥に欲しいと言わんばかりに、無意識なのだろうがファントムの腰に足を絡めてくる。 性交時にはゴムを付けて欲しいといつも訴えている彼だが、いつもの如く装着されていない事にももう、頭が回っていないらしい。・・・あとでムクれるクセに。 その一杯いっぱいな様子がまた可愛くて、ファントムのお気に入りではあるのだけれども。 「・・・あ・・・っ、も・・・・! ・・・出し・・たいっ、あ・・・あ、あ、あ・・・・!!!」 アルヴィスが切羽詰まった声を上げた。 そして強請るようにファントムへと手を伸ばし、首の後ろへと回してくる。 そうすると二人の間は更に密着し、アルヴィス的には更に身体を折り曲げるような体勢となってしまうのだが、もう、それに頓着するような余裕も青年には残っていないらしかった。 「あっ、あっ、・・・・ああ・・・・・っ」 ファントムの首を引き寄せ、苦しそうに喘ぐ。 「よしよし、イイ子だね・・・」 膝裏を抱えたまま、ファントムは腕を伸ばし華奢な背骨を撫でるように上下にさすってやった。 戒めている手を伝う蜜が更に量を増し、ファントムを断続的に締め上げる内部の間隔も狭まってきている。限界が近い。 けれども、ファントムのアルヴィスを塞き止めている指はそのままだった。 「――――うん、一緒にイコウね・・・」 耳元に甘く囁き、ファントムはアルヴィスに合わせて腰を使ってやる。 「・・ひっ、あ・あっ、あっ、あああっ、・・・・・!!」 指で数回押し上げてやるだけで、簡単に達してしまう箇所を狙い、何度も何度も突き上げてやる。 「あ・・・んっ、ああっ、あっ、あっ、あっ、・・・・出るぅ、出し・・・たい・・・!!」 アルヴィスは切なげに目をギュッと閉じ、細い顎先を震わせた。 普段恥ずかしがって、なかなか口に出せない言葉を頻繁に言うようになってきた辺り、かなりもう余裕がないようだ。 「―――――うん、もうちょっと。・・・ね、我慢・・・」 その顎先に宥めるように口づければ、ついに忍耐も限界に来たらしいアルヴィスが大きな瞳からボロボロと涙を零して泣き出してしまう。 「・・や・・・・っ、も・・・な・・・んで、いじわるっ、・・・!」 「つっ、・・・ごめんごめん、もうちょっと、だから・・・」 しゃくり上げながら、焦れて首筋に爪を立ててきたアルヴィスに苦笑しつつ、ファントムは涙を拭うように目尻に口づけた。 イカせてあげたいのは山々なのだが、射精にはかなり体力を使う。 事前に薬を使い、アルヴィスの呼吸状態を見計らいながら抱いているとはいえ、途中であまりにも体力を消耗させてしまうと発作を起こしてしまう危険性がある。 だからファントムは基本的にアルヴィスを、複数回イカせるつもりは無いのだ。 それがアルヴィスにしてみると相当に辛いらしく、いつも結局泣かせてしまう事になるのだが・・・・なまじ感度が良いらしい上に互いの経験値が違うから、こればかりはなかなか楽にはさせてあげられない。 アルヴィスには可哀想だが、やっぱりタイミングを合わせて貰うしか無いのだ。 戒めた指をやっぱり緩めないまま、ファントムはアルヴィスが感じる箇所を集中的に穿ってやる。 「気持ち、い・・っ、あっ、あっ、・・・中、擦れっ、・・あああっ!!!」 それだけでアルヴィスはもう、ファントムを責める言葉も吐けなくなって、高い声で啼いた。 「も・・・変、にな・・・っ!!」 腕の中で身をくねらせ、狂ったようにファントムに縋り付いてくる。 その汗で湿った首筋の薄い皮膚を吸い上げながら、ファントムは徐々に腰の動きを早めた。 「あーっ、あっ、あっ、・・・も・・、許し・・・・っ」 アルヴィスの呼吸が浅く速くなり、ファントムに縋る指の爪がまた、首の後ろを引っ掻く。 もう、アルヴィスにしてみれば限界を超えているのだ。 「・・・・・・・・・・・・・」 ファントムは目を細めて、恋人の乱れる様子に見入る。 自分に抱かれ、身悶えるアルヴィスの姿が、ファントムは何よりも好きだ。 官能の色を濃く含んだ、掠れた声も。 涙をぽろぽろ零し、焦点が合わなくなった大きな青い瞳も。 苦しそうに歪められ、救いを求めるような切ない表情も。 全て、―――――余す所無く、自分だけのモノ。 耳元に掛かる、熱くて切ない吐息がファントムの官能を煽る。 焦らすのはアルヴィスの身体を考慮しての事だが、ファントムは焦らした時の身悶えながら喘ぐ、恋人の表情と吐息が何よりも気に入っていた。 だって、僕だけ。 君のその表情も、熱い吐息も―――――知っているのは、僕だけ。 君の目は僕だけを見ていて。 君の耳は僕の声だけを聴いていて。 君の身体が、感じているのは僕の事だけ。 君の反応を引き出しているのは・・・僕。 君が求めているのは、僕のことだけ。 ―――――───そう、感じられるから。 「―――――意地悪してごめんね・・・、一緒にいこ・・・」 「・・あーーーーっ、あっ、あっ、あ・・・・・!!!」 優しく言いながら塞き止めていた指を外せば腕の中でアルヴィスの身体が激しく震え、熱い飛沫が二人の身体の間で弾ける。 「・・・・・・っ、」 それと同時にアルヴィスの中がきつくきつく収縮して、ファントムはその最奥に自分自身を解放した。 「・・・・・んう・・・っ・・・」 アルヴィスが微かに呻いて、身体の力を抜く。 ズルリ、と縋り付いていたファントムの首から両手が外れた。 「・・・・・・・・」 繋がった体勢のまま、ファントムは青年の様子を伺う。 荒い呼吸を繰り返しながら、アルヴィスはグッタリと目を閉じ、脱力していた。 ちょっと焦らしすぎたようで、強烈な解放の余韻に意識が遠のいているようだ。 額に貼り付いてしまった黒髪を払いのけてやりながら、ファントムは肩に乗せていた青年の片足をゆっくりとシーツに降ろし、なるべく刺激を与えないように自身を引き抜く。 酷使した箇所が薄桃色に染まり、中からトロリと白濁した体液が白い臀部を伝いシーツに零れるのが、酷く扇情的だった。 「・・・・・・・・んっ、」 その感覚にアルヴィスが再び艶っぽい声を上げ、重そうに瞼を開き顔を顰める。 散々泣かせてしまったせいで目元は赤く染まり、キレイなブルーの瞳が少し紫色がかっていた。 「・・・・・なか」 キレイな顔した恋人は、ポツリと不服そうに掠れた声で言う。 「あ、うん。出しちゃったね」 「・・・・・・・・・!」 アッサリ頷いて肯定すれば、アルヴィスは更に目を吊り上げて睨んできた。 「また・・・ゴム・・・・!!」 アルヴィスはいつも、行為の時にはゴムを付けて欲しがる。 だがそれは、中出しをしてそのままにすれば腹を下しやすいから―――――とかいった問題ではなくて、単に後始末を嫌がっての要求だ。 けれどもファントムは必要に迫られる時以外は、決して使ってやる事はしなかった。 つまり、後始末が出来ないような拠ん所ない状況での性交、以外では。 毎回、同じ会話を事後に繰り返しているというのに、まだこの恋人は諦めていないらしい。 事の最中には頭がその感覚で一杯になり、一度だって自分から付けろと口に出来た事も無いくせに。 それが可愛くて、ファントムは自然と顔を綻ばせてしまう。 「付けないよ」 しかしそれには言及せず短くそう答えて、ファントムは横たわったままのアルヴィスの隣に、添い寝するかのように寝ころんだ。 そして、耳元で言ってやる。 「君の中に挿入るのは、僕だけでいいんだから。・・・例えゴムでもね・・・僕と君の間を隔てるモノは必要ないって言ってるでしょ?」 「・・・・・・・・・・・・・・・・」 「大丈夫、後始末は僕がちゃんとしてあげるから」 「・・・・・・・・・・・・・・・・・」 そう口にすれば、アルヴィスは耳まで赤くしながらそれが嫌なんだとボソボソ答えた。 そんな態度が可愛くて、ファントムは青年の華奢な身体を抱き締めつつ、もっと可愛い表情を見ようと卑猥なセリフを囁いた。 曰く。 ―――――─奥から全部、・・・掻き出してあげるから。 「!!」 腕の中の身体が、声も無く強張り、ビクリと身体を震わせる。 「・・・なっ、!?」 「―――――愛してるよ」 真っ赤になって叫ぼうとした可愛い唇をキスで塞いで、ファントムは腕の中の存在を大切にたいせつに抱き締めた。 目も鼻も口も、顔も、身体も足も、何処もかしこも―――――全部可愛い全部大好き。 素直じゃない言葉を吐く口も、まだ少年らしさを残した可愛い声も、抱いている時に魅せてくれる艶っぽさも、官能に震える吐息も―――――全部ぜんぶ、愛してる。 君じゃなきゃ駄目。 君だけがいい。 君だけに夢中になれる。 ―――――──君の吐息は、・・・・・・僕の媚薬。 ++++++++++++++++++++ 言い訳。 『君のためなら〜』縛りな、お題第三弾。・・・・はい、単なるエロですね。 微エロなお題なんですけど、意味はき違えてます(爆) 全然『微』なんか付かない、ただのエロですよー、と自己申告しておきます(死) 何となく正常位→屈曲位な体位で書いてみましたが、・・・良く考えると 胸圧迫しちゃうからホントは喘息患者とかには良くないですね(爆) 一応トム様、気は遣ってたみたいですけど・・・うーん(笑) 途中まで書いちゃってから、気付きました☆←あとで慌てて加筆修正したのです。 |