『02. 濡れた瞳は君のサイン』 「ん・・・っ、ファントムっ・・・」 「なあに、アルヴィス君?」 掠れた声で名を呼ばれ、宥めるように頭を撫でやりながら返事をする。 「・・・・・・・・・、」 何か言いたげな、少年の顔。 此方を見つめてくる大きな瞳は、見惚れるくらいにキレイな青。 長い睫毛の下から覗くそのキレイな青は、透明な雫で潤んでいて。 この世で最も清らかな水で洗われている、尊い宝石のよう。 けれど、その澄んだ色の瞳とは裏腹に、少年のキレイな顔は苦しげだ。 寄せられた眉。 辛そうに何度も細められる赤く染まった目元。 何度も吸われ紅を塗ったかのようになった唇は、息苦しさに解けていて。 ―――――─とても、扇情的。 抱き寄せて深くその身の内を穿てば、高い声で啼いて。 その清浄そのものの瞳から、ポロリとキレイな涙が溢れた。 「んう・・・っ、・・ああ・・・・」 ポロリ、ポロリと、白く滑らかな頬を伝って、流れ落ちる涙。 背に回された左手が、縋るように爪を立ててくる。 「つらい?・・・・平気?」 そう問いながら、指を絡め合っているもう片方の手に力を込めれば、必死な様子で握りかえしてきた。 その拍子に、またポロリと涙が零れる。 濡れた青色が、とてもキレイ。 「愛してる・・・」 「ん・・・っ、・・あ・」 まだ慣れない刺激に身体が付いていかず、ただただ翻弄される細い身体。 優しく抱いていても、ポロリポロリと涙を零す。 けれど決して、やめてとは言わない。 ただ、その青い瞳から透明な雫を流すだけ。 濡れた瞳でただただ、見つめてくる。 受け入れる――――と。 全てを許し愛するのだと―――――その目で告げる。 濡れた瞳は、言葉を告げぬ君からの・・・・サイン。 僕はそのサインを受け取って。長い睫毛にキスを贈る。
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