『05 これは恋かもしれない』 出逢った瞬間、可愛いなと思って。 自分を受け入れないニンゲンなんて、どうでもいいから滅びてしまえと思ったけれど。 拒絶されても、嫌がられても―――――何だか酷い事言われて自分の事を全否定とかされちゃったりしているんだけれど。 どんな事を言われても、諦め悪く反抗し続けていても、僕の大嫌いなニンゲン達や今のメルヘブンを守ろうなんて愚かな事を頑張り続けていても―――――───どうしてかな? 君の事だけは嫌いになれない。 昔から、何でも拾うのが大好きで、でも飽きっぽいから忘れてすぐ放り出してしまうのが得意な僕なのに―――――───君だけは何年経っても、忘れたりなんかしなかったよ。 生き返って、一番最初に思い浮かべたのは君のキレイな青い目だった。 あの子はどうしているだろう・・・? それが一番、気になったよ。 だってまだ、タトゥが完成してないからね―――――─もし死んじゃったりなんかしてたらどうしようかって本当に心配してたんだ・・・・だから。 「・・・・・こうしてまた逢えるようになって、本当に嬉しいよ」 レギンレイヴ城の、アルヴィスに宛われた個室―――――───に、夜中勝手に姿を現したファントムは、窓に腰掛けつつ楽しげに言った。 「俺は決着の時までは、別に逢いたくないんだが?」 6年前、可憐で天使のように可愛らしかった子供は大きく成長し・・・・今や神秘的な雰囲気を醸し出すクールな美少年となっている。 鮮やかな紺青の瞳の色は幼い頃そのままに、猫を思わせる少し吊り上がり気味の瞳は怒気に溢れ見る者を凍り付かせるような鋭さを湛えていた。 「え、僕は逢いたいなあ。毎日だって君の顔見ていたいし・・・触ってたいし」 「寄るな! 触るな!」 ベッドから起きあがった状態でいたアルヴィスが、ファントムと逆・・・寝台に乗ったまま壁の方へジリジリと後ずさりをする。 「もう、照れ屋さんなんだからアルヴィス君は」 「照れてなんかないッッ!!」 後ずさりした拍子に寝間着が捲れ上がり、剥き出しになったアルヴィスの白い足と形良い足の裏を楽しげに見やりながらファントムは何が楽しいのかニコニコ顔を崩さない。 「・・・ね、運命的だよね僕たち」 「・・・・・?」 「きっと僕たちは出逢うべくして出逢ったんだよ。僕は君のことだけは大切だし、守りたいと思ってる。君のことだけは、過去の儚い存在として忘れ去ったりしてしまいたくない」 「・・・・・・・・」 「僕たちは永遠に一緒にいるべきなんだよ? 君は、他の愚かで弱くてどうしようもない人間達と違うんだから」 「俺は・・・永遠なんか、欲しくない!」 ―――――───ああ、また、否定するんだね僕のこと。 でも、それでもいいんだ。君はいつかきっと、分かってくれるから。 キレイな子猫は、まだ世界のことなんて何も知らない。 知らないから、大好きだって言えるんだ。守りたいとか、思っちゃうんだ。 でもね。本当はとてもとても―――――───この世界は穢れているから。 それをちゃんと分かっている僕が、守ってあげなくちゃね? この世界から隔離して、大事に大事に・・・閉じ込めてあげるから。 「僕は、君がとても大切なんだよアルヴィス君」 「・・・・・・・・」 「ウォーゲームも、キングもクイーンも、チェスすらも―――――君と比べるなら、どうでもいいくらいにね?」 「・・・なんで・・・・っ、なんで俺に、そんな・・・・」 大切で愛おしいのだと伝えているのに、まるで死刑を宣告されたかのような、怯えた顔。 どうして分かってくれないのだろう。 こんなに大切に、可愛いと思っているのに・・・・そう思いながらファントムは、困ったように眉根を下げ・・・それでも笑って見せた。 「何でだろうね? 君のキレイな顔も目も、声も仕草も、身体も全部・・・・まるごと君が欲しいんだ。傍に置きたいと思うんだよね・・・・・ああ、もしかしたらこれが・・・・」 「?」 言いかけてそのまま口を噤むと、アルヴィスが怪訝そうな表情を浮かべたがファントムははぐらかすようにニッコリ笑った。 「とにかく、僕は君が大好きだよ。君が何と言おうと拒絶しようと―――――─君は、僕のモノだ」 今日は、この辺で帰るけれどね。 また逢いに来るよ・・・・君が僕の元へ来てくれるまで。 そう言いながらアンダータを発動させれば、最後に聞こえてきたのは、やっぱり自分を拒絶する悔しそうな声だった。 ―――――─来なくていいし、俺は誰のモノでもない!!―――――─── 今は、それでいいよ。 僕が君を好きなんだから。 ああきっと、これが。この彼を大事だと思う気持ちこそ―――――───。 恋なのかもしれないね。 ++++++++++++++++++++ 言い訳。トム様はマジでアルに恋してるんだと思います。だから自分なりに目一杯大好きだよ!な気持ちを伝えているのですが・・・・・残念ながらアルヴィスとの間にはかなりな温度差が(笑) でも、アルヴィスの心の中が、ファントムで全て占められているのは紛れもない事実です・・・恋愛感情かというと・・・微妙ですけど。トム様的にはどうでもいいんでしょうね、そこは(爆) |