『Please do not say!−インアルver−』













「・・・・っ、は・・・あ、・・・・んうっ!」



―――――苦しい。



「・・ああっ、あ・・・」



―――――声が、抑えられない。



「ん・・んう・・・、は・・・・ああぁ・・・!!」



―――――─繋がった箇所が熱くて・・・苦しくてどうしようもなく気持ちがいい、から。



「・・や・・・っ! も・・・もう、駄目だ・・・っ、」



―――――─甘ったるい、上擦った声が抑えられない。










「アルヴィスさ・・・ん、まだキツイ・・ですか・・?」

 途切れとぎれに掠れた声で聞いてくる相手は、まだ少年と言った方が相応しいだろう年齢で、大人びた所はあるものの自分よりかなり年下。
 一応年齢的にも経験的にも―――――─自分の方が、リードしなければならない立場な訳で。
 余裕も無く自分と躰を繋げてきた少年に、自分こそが余裕な態度で受け入れなければならない筈だった―――――─のだけれども。

「・・・あ・・・・うっ、・・・・インガ・・・、」

 狭い体内に彼を受け入れた時点くらいから、元々そんなに無かった余裕など、キレイに消え去ってしまっていた。




 遠慮がちに身体中に触れ、いっそもどかしい程の丁寧さで自分を抱く彼に焦らされ、もういいからと性急に己の中へ導いたのはアルヴィス自身である。
 だが、あまり慣らされていなかった内部は酷く狭くて、受け入れる側であるアルヴィス本人は痛みの余り悲鳴こそ上げなかったものの、思いっきり苦痛の表情を浮かべてしまった。

 初めての経験では無かったから―――――──大丈夫なような気が勝手にしていたのだけれど、久々に開かれた身体はそうそう順応性は持たないらしいことを、その時になって理解する。

 しかし、年上で経験ありという立場上、何としてもそんな不甲斐ない様など見せる訳にはいかないとアルヴィスは決死の思いで耐えようとした。
 だがもう、その時点で年上の余裕などは全くない。
 内部から、体内を圧迫する彼自身の感覚を追わないように――――呼吸するたびに疼く、繋がった箇所からの引き裂かれそうな痛みから気を逸らすのに一杯いっぱいで、彼の背中に回した指先が震えながら爪を立て傷を作っていた事にも気付かない程だった。

 最早、表情になど全く頓着する余裕などは皆無だった訳で。

「大丈夫・・・ですか?」

 アルヴィスより大分年下であり経験不足だろう少年に気遣われながら、情けなくも行為を一次中断し。
 痛みに硬直したままのアルヴィスが慣れるまで大人しく二人で抱き合って―――――そして、ようやく痛みが治まってきたのを見計らって、そろそろと彼が腰を使ってきたのだが。
 最初の痛がり方が、よほど彼に遠慮を持たせてしまったのだろう・・・・・自分だって辛いだろうに、少年は決してアルヴィスが言うとおりにしか行為を進めてこなかった。




 つまり・・・・・。




「・・・・ああっ、あ、あ、あ、・・・・・そこっ、駄目っ・・・!!」

 硬く熱い先端が、アルヴィスの内部の弱い箇所を掠め押し上げる。
 すると自然、アルヴィスの口からは嬌声が飛び出し強すぎる快感に、無意識に拒絶の言葉が出てしまう訳なのだが―――――─そうするとインガは律儀にも動きを止め、わざわざ別の箇所を探るように動き出す。

「こっち・・、はどうですか・・? 痛く、ないです・・・?」

「ん・・・んぅ・・・」

 確かに、訳が分からなくなる程に責めまくられて、自分がどうなっているのか分からない程に翻弄されるのは憤死したくなるくらい恥ずかしいし、嫌だ。

 しかし、かといって。

 感じ始め、そのまま忘我の域へと身体が向かい始めたその時点で、絶妙のタイミングでそれを外され続けるのもどうだろう。
 身体にあちこち火がついた状態で、放り出されるようなものである。
 体内を圧迫する質量のものが中心を刺し貫き、敏感な粘膜を擦り上げながら抽送を繰り返しているというのに。
 時折、酷く感じる箇所を掠め―――――その度にアルヴィスは泣きそうな声を上げてしまい、それを拒否と察する少年は、わざわざそのポイントを外して突き上げてくる。

「あ・・・あぁ、う・・・・っ、」




 焦れったい。どうしようもなく焦れったくて気持ちよくて・・・・苦しい。




「・・・アルヴィスさんのここ・・・スゴイ、硬く・・なってる・・」

「ああっ!・・・っふ・・ぁ」

 不意に、インガが彼とアルヴィスの腹の間で挟まれ、欲情している事を如実に物語り勃ち震えているアルヴィス自身に触れてきた。
 先端から溢れ出た蜜を、再び窪みに塗り込めるように優しくやさしく指の腹で撫で上げてくる。

「あ・・あっ!あっ、あっ、」

「コレは痛くないですよ・・ね? 気持ちいい・・ですか?」

 少年自身を深々と受け入れたまま、敏感な器官を繊細に愛撫され・・・アルヴィスはろくに言葉も吐けずに仰け反った。

「ああ・・・・っ!・・・んんぅ・・・・・は・・っ、は・・・・あ、」

 どうしようもなく気持ちが良い。今すぐ、イッてしまえそうだった。
 前を弄られると反射的に後ろが収縮し、内部に埋め込まれている彼がより明確に感じられる。

「・・・・・・・う・・・・・・っ、」

 だけど、駄目なのだ。
 それでは、イケない。
 アルヴィスが欲しい、一番奥に―――――彼が来ていないから。
 最奥で、彼を感じたいのに。
 自分を気遣って・・・・少年は、手荒な事を一切すまいと懸命に頑張っている。
 彼だって、堪えるのは結構辛い事だろうに。

「・・・・イン・・・ガ・・・・」

 アルヴィスは快感に翻弄され、涙で潤んだ瞳のまま必死に自分を組み敷く相手を見上げた。




 本当は。
 余裕など、一切無いから。
 経験も、―――――─あるような無いような、夢のような夜の事だけだったから。
 抱かれたのは、一夜だけ。
 だから・・・・・年上なのだけれど、リード出来るような余裕など、全然無くて。
 今更、実は慣れてない・・・などとは言えないけれど。



 こうして、裸で抱き合って。
 全てを見せ合うだけでも、死にたいくらい恥ずかしくて。
 感じてる事を知られるのも、恥ずかしくて。



―――――──まして、こうして欲しいなどというお願いは・・・・・口にしたらそれだけで悶え死んでしまいそうなくらい、恥ずかしい事だけれど。




「あ・・っ、も・・お願い・・だからっ! 気持ちいい・・からもっと・・・動い・・て、」

 下肢から伝わってくる愉悦に、声が震える。
 けれど必死に訴えた。
 もう、身体は耐えることに限界で。
 恥じらい、必死で押しとどめていた理性も限界で。
 繋がった箇所が更に深くなるように・・・・心地よい場所を刺激してくれるように、自分から腰を揺らす。

「・・っ、奥・・っ! 奥に欲しい・・・っ! もっともっと・・・あああっ!!!」

 一度言ってしまうと、堪えていた言葉がするすると口に上った。
 とんでもない事を言っているという自覚が一瞬だけ頭を掠めたが、それもインガが激しく腰を使ってきたことでアッサリと霧散していく。
 両肩を掴まれ、体重を掛けられ、押し上げられた腿裏に少年の腰骨が何度も激しくぶつかる。

「ああっ、奥に・・・っ! んっ、んっ、んんっ、あうっ!!」

 繰り返し、最奥を穿つインガを、アルヴィスは何度ものけぞりながらキツク締め上げた。
 目が眩むような快感に、アルヴィスは自我を失うような神経が白く灼き切れてしまうような喪失感を覚え無意識に嫌だと繰り返し訴えたが、今度は少年は行為を中断したりはしなかった。 逃げようと寝台のヘッドボードの方へずり上がろうとするのを、アルヴィスの腰骨を掴んで押さえ付け、突き上げるたびに締め付けがキツクなる箇所を抉り取るように穿ってくる。
 もう、部屋に響くグチュグチュと濡れた音も気にならない。

「あ・・っ、イイ・・・気持ち・・・いいっ、・・・・・あぁ・・・・あ、あ、あ・・・・」

「アルヴィスさん・・・っ!」

「・・ああっ、インガ・・・っ、も・・・イク・・・・・んうっ!!」

 大きく足を広げ下肢に少年自身を深々と咥え込み、その箇所をギュウゥと締め付けて・・・・アルヴィスはインガの目の前で、勃ち震えていた性器から白濁した欲望の証を放った。
 そして少年も、アルヴィスが達した時の衝撃で強く締め付けられた事により、アルヴィスの体内にその精を解放する。








「・・・・・・・・・・・・」

「アルヴィスさん・・・」

 まだ繋がって抱き合ったままの状態で、お互いに汗ばんだ顔を近づけキスをする。

 まだ、呼吸が苦しいけど。
 全力疾走した後よりも、身体が辛いけれど。
 力が入っていた股関節がバキバキ悲鳴を上げているし、下腹部が何だか違和感を訴えてはいるけれど。

 でも、・・・・心地良い。

 ちょっと恥ずかしいけれど―――――それよりも、何だか幸せで。

 こうやって抱き合って、くっついて眠る。
 汗かいてるのに・・・暑いのに、気持ちがいい。

 とても、安心した。

 汗で湿った頬をくっつけ合って、手と手を握り合って、隙間無いくらい身体をギュッと寄せ合って。







―――――─1人で寝るよりずっと・・・・イイ夢が見られる気がした。





















 色々、それなりに自分なりに必死で頑張って。

 結局全然余裕なんて無かったけれど、どうにかこうにかなった訳で。
 これでもう、最大の山場は乗り越えたのだから二人に何ら障害は無い―――――──筈だったのだが。



「・・・・・・っ、痛っ!?」

 さえずる小鳥たちの声を聞きながらウトウトと微睡んでいた中、突如として下肢から響いた激痛に、アルヴィスはガバリと跳ね起きようとして。

「―――――─っ!!!?」

 更に襲いかかってきた鈍痛に、腰を押さえてシーツの中に倒れ込んだ。

「アルヴィスさん!?」

 シーツの上から慌てた声が降ってきて、顔に掛かった布を取り除かれ銀髪の少年が焦った表情でアルヴィスを見る。

「・・・・・・・・」

 閉め切ったカーテンの隙間から朝日が漏れ、銀色の髪がキラキラしていてキレイだ・・・・じゃ、なくて。

「・・・痛い・・・」

 昨夜散々、久しぶりに酷使してしまった箇所が酷く痛む。
 それも、疼痛じゃなくてズキズキとした傷の痛み―――――さっきの突然の激痛からだ。

「す、すみませんアルヴィスさん。痛かった・・・ですよね・・」

 心配そうに、聞いてくる。

「・・・・・・・・・・・・・?」

 謝ってくるという事は、インガのせいなのだろうか。
 いやでも、昨夜の事は合意であって―――――って、今の痛みは・・・・。
 寝起きの頭では、思考が上手く纏まらない。

「・・・・・・・・・・・」



 まだ、眠かったのに。
 気持ちよかったから、まだウトウトしていたかったのに。
 痛かったから・・・・目が覚めてしまった。

 なぜだ?


「・・・・・・・・・・・・・・」

 自然、顔を顰めてしまうが、目が半分開いてないからあんまり迫力は無いだろう。

「その、・・・・・・・」

 銀髪の少年・・・・インガは下半身のみシーツにくるまった格好のまま、まだ全身をシーツに覆われた状態で寝転がっているアルヴィスを見下ろし言いにくそうに口を開いた。
 心なしか、顔が赤い。

「昨日、・・・・僕達、・・・あの状態のまま寝ちゃいましたから・・・・」

「・・・・・・・・・・・・・・・」


 あの状態? とは、どの状態か。


「で、あの・・・アルヴィスさんを起こして、それから――――と思ったんですけど・・・・」

「・・・・・・・・・・・・」


 何が、『それから』?


「アルヴィスさんの顔見てたら、スゴクその・・・・」

「?」

 話すインガの顔こそ、『スゴク』真っ赤だ。

「―――――反応、しちゃいそうでして!」

「・・・・・・・・・・・・・」


 何が『それから』で『スゴク』で『反応』???


「だから、慌てて・・・・抜いちゃったんですけど!」


 抜 い た ?


「・・・・・・・・・・・・・・・っ、!?」


 ようやく、インガの言いたい事を理解して、アルヴィスは一気に顔をボンッと赤くした。

 そうだった―――――─昨日は、二人して果てた後、そのまま抱き合って・・・・繋がったまま・・・・・・眠ってしまったのだ。
 した直後なら、解れもするし受け入れた箇所が柔らかくなっている筈だから、引き抜く時の衝撃はあれど―――――痛みは、無い。
 けれども、時間が経ちその部分が乾いた状態の時にいきなり引き抜かれてしまったら―――――───そりゃあ痛いなんてものでは無いだろう。
 腰が痛くて重怠いのも当たり前だ・・・・・それだけの事を、したのだから。

「すみません・・・痛かったですよね・・・大丈夫ですか?」

「・・・・・・・・・・・・」

 心配そうに聞いてくるが、この場合何と答えればいいものか。
 痛いと正直に言うのは、目の前の少年を困らせてしまうだろう。
 ここは大丈夫だと言うべきなのかも知れないが、・・・とてもじゃないけれど今、起きあがれそうもないから、バレてしまうのは時間の問題だ。




 どうすればいい?




「・・・・・・・・・・・」

 アルヴィスの眉根が再び、決して痛みからでは無い理由で寄せられた。
 それを誤解して、慌てたのはインガである。

「アルヴィスさん!? 大丈夫ですか?? 腰、痛いですか見せて下さいっっ!!」

「え? あ、ちょっ・・・・待っ・・!!」

 いきなり血相を変えると、アルヴィスがくるまっているシーツを全部剥がす勢いで取り去り、腰の痛みで丸くなっていた身体を仰向けに転がした。
 無論、二人とも(インガは一応まだ腰にシーツが絡まっているが)一糸まとわぬアラレもない姿である。
 そして恥じらう暇もあればこそ。

「・・・・・・・・・・・」

 グイッと腿裏を掴み押し上げられて、一点を凝視される。

「―――――───っ、イ・・インガッ!!?」

 その時点でようやくアルヴィスは我に返った。

「お前、何考えっ、んっ!!」

 今までと比較にならない程の羞恥を感じ、慌てて阻止しようと手を伸ばし掛けたその途端、まだ痛みを訴えて疼く箇所に指が触れてきて―――――つぷりと差し入れられてしまった。

「・・・っあ、・・・や・・・やだっ!」

 ピリッとした痛みと共に、探るように指が中でそっと動かされる。
 ぐちゅっ・・・と、濡れた音が確かにした。

「・・・っ!?」

 そして、臀部をトロリとした何かが伝う感触。

「―――――─・・・・」

 昨日、自分の体内で吐き出された、体液の名残―――――─そう悟り、アルヴィスは羞恥の余り抵抗する気力も無くして両手で顔を覆った。
 耳が熱い。きっと顔だけじゃなくて耳まで赤くなっているのだろう。
 身体を開くということは、相手に全てを暴かれ、見られてしまうということ。
 分かっているつもりだったけれど・・・・・それでもやっぱり、死にたくなってしまうくらいに恥ずかしい。

 だが、昨日すでに抱かれて全てを見られているというのに今朝は駄目、というのも言いにくく。 しかも彼は、心配して、―――――見てくれているようなのだから。

「・・・・・・・・・・・・・」

 けれども体内を探る指先と、その部分に微かにかかる吐息にすら、反応してしまいそうになり。
 アルヴィスは必死にその感覚を遮断しようと、目を閉じた。

「・・・ちょっとだけ・・・血が出ちゃったみたいですけど・・・そんなに切れてないようですから、大丈夫です。クスリ、付けましょうか・・・」

 インガは相変わらずアルヴィスの内部を探り、敏感な粘膜を擽るように撫でている。何かネットリとした感触が加わったから、言ったとおり薬を塗ってくれているのかも知れない。

「―――――っ、・・・・」

 だが、本人はそのつもりは無いのだろうがアルヴィスにしてみると地獄だった。
 感覚を遮断しようと目を閉じてみたのが返って失敗だったのだろうか・・・・遮断されたのは視覚だけで、むしろインガの指の感触はダイレクトに脳に伝わってしまう。
 指を受け入れている内壁がヒクヒクと痙攣し、締め付け始めていることに彼は気付いているのだろうか。
 いや、それよりも―――――反応しかけているアルヴィス自身が、彼の目に入っているのでは無いだろうか。

「・・・・・・・・・・」

 そろりと指の間からインガの顔を伺うが、彼は何も言わない。
 ただ優しく、内部を確かめるように探っているだけだ。
 反応するのは、してしまうのは―――――─恥ずかしい事だろう。

「・・・・う、・・・・・・・・・っ」

 必死の想いで、堪える。
 本当は、制止の声を掛けたい。けれど・・・・・声を出せば感じてしまっていることが簡単にバレてしまいそうで。淫乱だと思われたくなくて、必死で耐える。

「・・・・・・・・・・・・・」

 頭を冷やそうと、今のメルヘブンの平和を守るためには何が必要か・・・・どういう風なスタンスで世界を守るべきなのか・・・今持っているARMで充分なのか、など関係のないことを脳裏に思い浮かべた。

 けれど。

「あっ? あっ、あ・・・・・・・!!」

 内部に埋め込まれたインガの指が、ある一点を掠めた瞬間、アルヴィスは思わず声を上げてしまったのである。
 ビクリと身体が跳ね、押さえ込まれていた足が震えた。

「―――――──っ、う・・・・!!」

 必死の想いで息を噛み締め、反応を殺そうとするがままならない。
 うっかりすると、『抱いて欲しい』と口をついてしまいそうになった。
 昨日、抱かれたばかりだというのに。

「は・・・っ、は・・・あ、・・・・う」

 荒い息を吐きながら、早くこの衝動が収まって欲しいと心底願いつつ・・・・アルヴィスは顔を覆っていた両手の指先に力を込めた。
 既に下半身はしっかり反応して、インガの指を喰い締めアルヴィス自身は先走りの蜜が溢れ始めている事だろう。
 バレバレだ。でも―――――今更、もうどうしようもなかった。

「・・・・こっちが気持ちよさそうに反応してるから・・・・触ってあげたいんですけど・・・・」

「・・っああ・・・っ!」

 足の間で、インガがそっとアルヴィス自身に触れてくる。やはり、気付いていたようである。
 途端に走った、背筋を突き抜けるような快感に大きな声が漏れた。

「―――――─でもアルヴィスさんは、こっちの方が好きなんですよね・・?」

 再び、インガの指がアルヴィスの奥まった箇所へと挿し入れられてくる。そして、誤らずにまた的確に感じるポイントを探ってきた。

「!? う、あ、あ、あ、・・・・・・・・っ、」

 声にならない声を上げて、アルヴィスは身体を硬直させる。

「アルヴィスさん・・・中を触られてイク方が好きみたいですから・・っ、僕、ちゃんと・・・中でイカせてあげます・・・・」

 そういうインガの声も掠れていた。アルヴィスだけじゃなく、彼も興奮してくれているのかも知れない。
 それならば少しだけ救いがあると、溶け始めた頭でアルヴィスは思った。

「ああ・・・・んっ!」

「でもまだ痛いでしょうから・・・僕の指だけで我慢して下さい・・ちゃんと、イカせてあげます・・・から」

「インガ・・・っ!」


 指だけで、ってそんな。

 インガの目の前で、指だけでイカされるなんて、そんな・・・・・・・。

 強い羞恥に、アルヴィスは顔を覆っていた手を外し、彼の行動を制止しようと手を伸ばした。

「・・・あっ!?」

 しかし、インガの指がぐるりと内部を広げるように回され、複数の指をバラバラに動かされた段階でアルヴィスの手は力無くシーツの上に落ち、少年の代わりに敷布を握りしめる事となる。

「・・・・・・・っ、ぁ・・・」

 アルヴィスの目の前で、自らの足が大きく割り開かれ、インガが此方を見ている。
 そして、その彼と自分の間には、すっかり勃ち上がった自分自身が存在を誇示しているのだ。
 先端を膨らませ、窪み部分から溢れ出した透明な液体が根元部分まで伝い落ち、腹にまで白く糸を引いている。

「う・・・・、」

 更に恥ずかしさが増して、アルヴィスは堪らず視線を逸らそうとした。
 それを阻むかのように、インガの指が激しく動かされる。

「ああ・・・・っ!」

 反射的に強くインガの指を締め付け、その感覚にアルヴィスは喘いだ。
 イキそうになって、アルヴィスは思わず自分自身を両手で握り込む。
 阻止したかったのか、それとも解放してしまいたかったのか、自分でも分からない。

「アルヴィスさん・・・キレイです・・・・」

 うっとりとした様子で呟いて、インガがその上から空いている方の手を重ねてきた。
 そして、微かに力を込めてアルヴィスの手を握ると上下に動かす。

「―――――─っ!?」

 背筋を這い上がる強烈な刺激に、アルヴィスは息を呑んだ。

「・・・そうしてると・・・、まるで、アルヴィスさんが自分で・・・してるみたいで・・・とても厭らしくて・・・・素敵です・・・」

「あ・・っ、あ・・・っ、ヤメ・・・・!!!」

 後ろは、インガの指が相変わらず挿入されて蠢いていて。
 前は自分で握り込んだ上から、彼の手が握り込み―――――扱かれている。
 自分の手を通して伝わる覚えのある快感と、自分ではない動かし方による刺激。
 抱かれていながらも、まるで自慰をしているような、酷く倒錯的な感覚に駆られてしまう。

「・・・1人でする時も・・・、後ろ、指を入れるんですか・・・?」

 インガらしくない不躾な質問を、諌めるだけの余裕も無かった。

「う・・・っ、は・・・・あああっ!」

「教えて下さい・・・アルヴィスさん・・・」

 じゃないとこっち――――抜いちゃいますよ? そう言いながらインガが僅かにアルヴィスの内部に埋めた指を引く。

「ん・・・っ、しない・・・そ・・っんなことしないっ、」

「そうですか・・・じゃあ、抜いちゃいます・・」

「ああっ! やっ・・・・、ああ・・・・!」

 埋められていたものが急に失せ、アルヴィスの内部がひくりと物欲しげに痙攣した。



 もう、何が何だか分からない。
 気持ちが良くて、苦しい。
 中に、欲しい。
 熱いので一杯にして欲しい。

 痛くてもいいから―――――奥に、欲しい。



「・・う・・・・っ。して・・る。1人でする・・・時は指・・・入れ、て、る・・・・・っ!」

 気付けば、しゃくり上げながら淫らな事を口走っていた。




 だからシテ。イレテ。イッパイにシテ?

 もうどうでもいいから―――――気持ちよく、なりたい。




「ここ握って・・・後ろも、指入れるんですね・・・? どんな風に・・? してみて下さい・・」

「あ・・・っ、片手・・で触って、こっちで・・・っ」


 身体が疼きすぎて、苦しい。

 脳が溶けていくような熱さと切なさに、アルヴィスは恥じらいも忘れてヒクつく内部へと指を差し入れた。
 もはやインガが手を動かさずとも、アルヴィス自身を慰める手の動きも止まらない。

「―――――3本も・・・入れちゃうんですね・・・・」

「あ・・・っ、ああぁ・・・っ!!!」

 前と後ろを同時に自らの手で刺激し、アルヴィスは啜り泣いた。


 どっちもとろけそうな位に気持ちがいい。

 けれど、何かが足りない。

 奥に―――――─刺激が欲しい。

 このままでは、イケない。


 苦しい。辛い・・・・どうにかして。



「スゴイ厭らしくて・・・・キレイですよ・・・」

「お・・願・・・い、だから」

 目の前でうっとりと呟く、銀髪の少年に向かって懇願する。

「・・・欲しいっ・・・・入れ・・・て、」

 昨夜の残滓を指に絡ませたまま、その箇所を広げるようにして強請った。
 酷使され、朱色に染まったその箇所からまたトロリと白濁した液体がシーツに伝いシミを作る。

「指じゃ・・・やだ・・・っ!」

「―――――アルヴィスさん・・・・」

 インガがアルヴィスに覆い被さるように倒れ込んできて、開いていた足を更に大きく割り開いた。
 そして、アルヴィスの指を抜き取ると、その部分に一気に突き入れてくる。

「ああっ!」

 アルヴィスは決して苦痛からでは無い声を上げた。


 どんどん入ってくる。

 入って、狭い道を押し広げ、最奥へと突き進んでくる。

「あ・・・っ、あああ・・・・・っ、あう・・・・!」

 濡れた敏感な内壁をギチギチと容量イッパイに擦り上げ、軋みながら最奥へと。

「・・気持ちい・・いっ、あ・・・んっ、もう・・・もう・・・・・・っあ、」

 すぐに達しそうになって、アルヴィスは泣き声を上げた。

「ごめ・・・なさ、もう、イッ・・ちゃ・・・・・ああっ」



 気持ちが良すぎて、頭が混乱する。

 誰が抱いてくれているのかすら、わからなくなりそうだった。

 ふと、すぐ達したら怒られそうな不安に駆られ、アルヴィスは必死に射精の感覚を押さえ込む。






―――――─・・・1人でイッちゃダメだよ・・?





「う・・・、っうぅ、・・・・・っあ!!」


 けれども、どうしようも無く気持ちが良くて。

 出したくて出したくて、堪らない。

 だって、自分の中が『彼』でイッパイだから。

 満たされ過ぎて―――――沢山だから、溢れてしまう。



「は・・・あっ、あ、あ、あ、・・・・う」

「イイですよ・・・イッて下さい・・・僕ももう・・・・」

 耳元で囁かれ、アルヴィスは身を震わせた。



―――――──霞む視界で揺れる、サラリとした銀色の髪。




「・・・・・・・・・っ、」

 夢中で、銀髪の『彼』に縋り付く。
 それが合図のようにインガが激しく腰を使い始めた。

「・・っあ・・・イク・・・っ! イッちゃ・う、・・・・あああっ!!!」


 後ろからの強い刺激に耐えられず、アルヴィスがインガと挟まれた腹の間で弾ける。

 続いて体内にまた、『彼』が注がれるのを感じ、アルヴィスはうっとりと甘く名を呼ぼうとして・・・・・その唇を『彼』に塞がれる。

「・・・・・・・・・んっ、」

 そしてアルヴィスはまた、ゆっくりと意識を夢の中へと彷徨わせていった―――――───。


















「・・・・・・・・・・・・・・?」

 再びアルヴィスが目覚めた時は、もう既に昼過ぎだった。
 カーテンが開けられた窓から、高い位置から照らす太陽が見える。

「・・・・・・・・・・・」

 妙に肌がサラサラと気持ちよかった。
 気が付けばいつの間にか、肌触りの良い寝間着を身につけていたから・・・恐らくインガがあの後に身体を拭いて着替えさせてくれたのだろう―――――多分。
 その時、カチャリとドアが開いて、インガが入ってくる。

「あ、・・・目が覚めました?」

「・・・・・ああ」

 何とはなしに、朝の事を思いだし気まずくなって顔を伏せた。
 思い返せば―――――いや、半分くらい思い出せないし、思い出したくもないけれど・・・・昨晩よりもずっと、淫らな事をした気がする。




 誘ってしまった・・・・自分から。





「朝も食べてないですし。・・・昼食、こちらに運びましょうか・・・?」

「え、あ、いや。そっちに行く・・・・つっ!?」

 インガの言葉に思わず身体を起こしかけ、腰に走った鈍痛にアルヴィスは顔を顰めた。

「アルヴィスさん、その・・・無理だと思うので・・・運びます」

「・・・・・・・・・・・・・」

「無理、させちゃいましたし・・・・さっきも」

「・・・・・・・・・・・・」

 そういうインガの顔は赤く染まっていたが、アルヴィスの方も多分、負けず劣らず赤いだろう―――――─頬が、熱い。

「・・・じゃあ、お願い・・する」

 ボソリと言って、アルヴィスは再びベッドに潜った。
 身体に心地良い開放感はあるものの、酷く怠い。腰は鈍い痛みを訴えているし、足の付け根も痛かった。受け入れた箇所も―――――ヒリヒリ痛い。
 これでは、流石に起きて歩き回る気にはなれなかった。

「じゃあ、ここへ持ってきますね。・・・あ」

 頷いて、部屋から去ろうとしたインガが小さく声を漏らして、アルヴィスの方へ近寄ってくる。

「―――――切れてたとこ、確認しておきましたけど大丈夫でした!」

「!?」

 言われた露骨な内容に、アルヴィスは言葉も無い。

「あの後ちゃんと後始末して薬付けておいたので・・・明日にはもう大分良くなってると思いますから」

「・・・・・・・・・・・・」

「すみません。・・・ちゃんと慣らさないと駄目でしたよね。僕、すっかり先走っちゃって・・・・」

「・・・・・・・・・・・・」

「アルヴィスさんのアソコは狭いんですから、指できっちり解して、それで・・・・」

「・・・ぅわーーーーーっ!!!」

 聞くに堪えない言葉の洪水に、アルヴィスは堪らず叫び声を上げた。
 が、インガには伝わらない。

「? どうしたんですかアルヴィスさん!?? もしかしてさっきの、僕が出したモノでも伝ってきちゃいました?! ・・・ちゃんと中も拭ったんですけど・・・」

「―――――─っ、」

 ひくっ。喉を鳴らして、アルヴィスは引きつけでも起こしたかのように黙りこくった。
 否。黙りたくて黙り込んだのでは無い――――ショックで、言葉が出てこなかったのだ。
 インガの、予想外というか、ある意味イメージのままというか、歯に衣着せぬ・・・・露骨なモノの言い方に。

「アルヴィスさんのアソコ、狭いんですよね・・・でも、あんまり指で広げちゃうと痛そうで可哀想でしたから―――――軽くしか拭えなかったんです」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

「気持ち悪いようでしたら、も一度しましょう? どれくらい出ちゃいました・・・?」

「・・・・・・・・や、いや・・・いい! 平気・・だ・・・」

 言いながらまたヒョイとシーツを捲って来そうなインガに、アルヴィスは慌てて舌をもつれさせながら断る。
 恥ずかしいやら露骨すぎてショックやら、もう・・・何が何だか良く分からない。




 大体、さっき僕のせいで無理させちゃいましたから―――――とか言ってた時に顔を赤くしてたくせに、今は全然普通の顔色ってオカシイだろう?

 今の方が全然、露骨で、恥ずかしくなるだろ普通??




「そうですか・・? 遠慮、しないで下さいね?」

「・・・・・・・・・」

 サラサラと銀髪を揺らして笑う姿は、貴公子然とした美少年なのに。

「じゃあ、食事、持ってきますね。食事したら、また休んだ方がいいですよ」

「ああ・・・そうだな」

「だってアルヴィスさん、さっき僕が拭いてあげてる間も1度イッちゃいましたしね・・・絶対、体力的に限界ですから」

 僕が刺激しちゃったから、いけないんですけどね・・・でも可愛かったですよv にっこり笑って言う姿も、真面目で礼儀正しそうな―――――間違っても卑猥な事など決して言わない、王子様に見えるのに。・・・・悪夢だ。

「・・・・・・・・・・・・・・、」



 また、言葉に詰まる。

 ああ、自分は一体今、何をどう感じてるんだろう?

 疲れてるせいか、自分の感情に名前が付けられない。


 だけど、・・・でも。


 今の気持ちを言い表すと言うのならきっと―――――───。






「・・・・・はぁ・・・」

 アルヴィスは部屋から出て行くインガから目を離し。
 窓から覗く、青い空を見上げた。

















「・・・・・・・・・・・・・・・・」

 扉の外で、インガはそっと溜息を吐いた。
 きっと今頃、アルヴィスは自分の露骨な物言いに赤くなったり青くなったり―――――─ショックを受けている事だろう。
―――――─だけど。


「マナー違反ですよ、アルヴィスさん・・・」

 ポツリと、小さな声で呟く。


 だから、愛してるけど・・・・可愛く思うけど・・・憧れているけど、ちょっと仕返し。
 彼の一番でいたいからこその、仕返し。

 それくらいでへこたれるつもりは無いし、引き下がるつもりもないけれど。
 誰にも、渡す気は、無いけれど。





―――――───恋人の腕に抱かれている時に、他の男の名前を呼ぶなんて。






 だから、キスした。

 譫言のように言おうとするたびに、口付けをした。




 それ以上、・・・・言わないで。



 僕以外の名を、その唇から呼ばないで。









お願いだから、僕のモノになって下さい―――――───。














end



++++++++++++++++++++

言い訳。
・・・・ハイ。これが拍手用に書いた、原作です(笑)
とてもじゃないけど長すぎて、全然拍手SSになんかなりませんでした!(涙)
つーか、エロ。エロが二回にも渡って入っちゃうなんて予想してなかったんですー。
1回目はサラッと初エッチ的に入れておこうとは思ってたんですが、二回目は予想外。
後始末的描写入れたら、そのまんま、止まらなくなりました(笑)
・・・で、エッチの部分をほぼ抜かしたのを拍手用にと思ったのですが、エッチが入ってるだけの話(こっちのです)も読んで下さる方ツマラナイかなー?と思ったので、ちょっとだけファンアル要素入れてみました(笑)
アルが夢中になった時に呼ぶのはトム様です。地味な感じで『Part of me』からリンクしてます。
・・・でもオカシイですね? 私、ラブラブ両思いなインアル目指した筈だったんですけど(爆)
まーでも・・・一応、このアルはインガを愛そうと努力してます!
だからエッチだってしたんです!
トム様と(洗脳時に)1夜しか過ごした事なかったのに、頑張ってインガをリードしようとしたくらいですからネ・・・・・好きなんですよ、インガのこと。
―――――──て事にしておいて下さい・・・・・(ぇ)