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現在は1ページにMARを1本(未完)、2、3ページにNARUTO続き物を1本置いてあります。
 

『Love is All〜物体Xの試練〜ACT3〜』




※『君ため』設定ファンアル前提です☆












 「・・・・・・・・・・・・・」


 カフェオレ・ボウルほどの大きさの器に、こんもりと盛られた『何か』。

 表面は所々粒状のモノが見受けられるペースト状であり、黒に近い濃灰色をしていた。
 湯気が細く立ち上っていることから、まだそれが熱いだろうことが伺える。

 周囲に漂うのは、――――――――鼻の奥にツンと来る、何とも形容しがたい刺激臭。


「・・・えーと、・・・」


 ファントムは、顔面に浮かべた笑みを絶やさぬように努めながら、しげしげと目の前に置かれた『物体』を眺めた。


「・・・・・・・・・・・・」


 つやつやとした質感なんかは、パラオのミルキーウェイ・・・天然泥パックが出来る場所として有名な海だ・・・の泥にそっくりだが、こっちの方がずっと黒ずんでいる。




 ―――――――・・・コレ、何? 泥か!? 泥なのか!!?


 その場に居るアルヴィス以外の全員が、内心でそうツッコミを入れていたことだろう。

 何となく、パックをするにも指先で掬ってみるのを躊躇うような見た目だ。
 というか、肌に塗ったら即座にかぶれてしまいそうな毒々しさを醸し出している。

 しかも恐ろしいことに、この物体は泥パック用の泥などでは無く、―――――――・・・傍らに箸が用意されていることから伺えるように、れっきとした『食べ物』として差し出されているのだ。


「ちょっと見た目良く無いけどさ、味はきっと変わらないと思う」


 その『物体』をキッチンから持ってきた張本人は、にこやかな態度でそれを勧めてくる。
 繊細に整ったその美貌は、まさにビスクドールの如き可憐さで、ファントムが思わず立ち上がって抱き締めたくなるくらい愛らしい。


「さ、食べてくれ」


 どこか猫を思わせる少し吊った深青色の大きな瞳をキラキラさせて、そう勧めてくる姿だって文句なしに可愛らしい。

 ・・・の、ではあるが。


「あー・・・、うん・・・」


 アルヴィスに向けた柔らかな笑みは崩さないまま、ファントムは生返事をした。

 そしてチラリと、テーブル上に置かれた『物体』を盗み見る。


「・・・・・・・・・・・・・・」


 アルヴィスが口にした言葉から察するに、この黒っぽくてやたらに鼻を刺激する泥は、やはり信じられないことに『食べ物』なのだ。
 外観からは全く材料が不明だし、立ち上る臭気・・・いや匂いも、全然食べ物とは思えないけれど。


「えっと、・・・アルヴィス君コレ・・・って肉じゃが・・・・なのかなっ?」


 とりあえず、絶対に肉じゃがでは有り得ないというか、そもそも食べ物には見えないなと思いつつ、ファントムは確認した。

 肉じゃがという料理名をあげることが出来たのは、先程アルヴィスがチラリと口にしていた予定メニューを思い出したからである。
 目の前で湯気を上げている物体Xは、見た目からも臭いからも泥の出来損ないとしか思えず、何を作ったのかなんて全く判別できるレベルでは無いのだ。


「ん?」

「! あ、・・・いやゴメン、ほらボク海外長いからさ? 肉じゃがって見るの初めてで・・・っ、・・・」


 途端アルヴィスが怪訝な表情を浮かべるのを見て、慌てて言葉を付け加える。


「ああ、そうかファントムは見るの初めてなんだな。そうだぞ、コレは肉じゃがだ」

「・・・・・・・・」

「まあちょっと、煮崩れて見た目変わっちゃったけどな!」


 ファントムの言葉に合点がいったのか、アルヴィスは再び得意げな笑みを浮かべる。
 その顔は、やっぱり溜息が出るほど可愛らしく美しい。

 小さい頃から変わらない、自分的に上手に出来たと思う時のアルヴィスの嬉しげな表情だ。
 それはもう、可愛さの余りに力加減せずに抱き締めて、・・・抱き締め殺したくなる程に。

 けれど。

 その笑顔と態度自体はものすごく可愛くて愛しいと思うファントムだが、残念ながらアルヴィスがその得意げな顔をした時に限って――――――――・・・ロクな目に遭わなかったりする。
 アルヴィスのソレは、まさしく飼い猫が主の所へネズミなどの獲物を持ってくるのと同義だ。


「・・・・・・・・・・・煮崩れかぁー・・・・、」


 猫は良かれと思って持参するのだが、主にしてみれば血まみれの死んだネズミなど嬉しくも何とも無い。
 というか、むしろ目にするのも遠慮したいと思うくらいに大迷惑だ。

 そうかといって、猫のその習性は主に対する愛情表現であり、気持ち自体は嬉しいし、その得意げな様子は酷く可愛らしかったりするのだから・・・・始末に負えない。




 ―――――――・・・ま、ホントにネズミだったら笑顔で受け取って、後でアルヴィス君に分かんないように捨てるだけでいいんだけどね・・・・・。




「肉じゃがに見えないか?」


 ケロッと小首を傾げるその様だって、その愛らしさぶりは凶悪だ。

 肉じゃがどころか、泥にしか見えないのだから、その問いかけにはうっかり『うん、全く見えないなあ』と頷いてしまいそうになるけれど。
 ファントムは、アルヴィスを傷つけることだけは避けなければならなかった。


「や、まあ・・・そう言われたらそうかな、って思うかなっ! うん」


 心にもないことを、平然と言ってのけなければならない。


「ちょっと見た目悪いけど、多分ちゃんと肉じゃがの味すると思う。材料的にも間違ってない筈だし・・・」


 アルヴィスは自信満々に言っているが、絶対この漂ってくる面妖な臭気から言っても、肉じゃがとはかけ離れているだろうモノが混入していることは明白だ。
 口ぶりから言って、彼が味見していないだろうことも明らか。

 いや、アルヴィスは胃腸が元々強くないからして、こんなものはむしろ味見していなくてファントムとしては安心したが。


「それに、ギンタの風邪が良くなるようにと思ってサプリメントとか養○酒とかも入れたから・・・そこらの肉じゃがより栄養満点の筈だ」

「・・・・・・・・・・・」


 当たり前だけれど、今アルヴィスが口にした『材料』は肉じゃがには通常入れないものである。

 肉じゃがに、何入れてんだ。
 そんなの入れる前に、常識的に考えられる食材を入れるべきだろ!?
 そもそもこの灰色の物体Xに何がぶち込まれているのか、既に見た目では判断出来ないけども!!

 ――――――・・・と、その場に居るアルヴィス以外の全員が思っただろうことは想像に難くなかった。


「そうだね。アルヴィス君がそう言うんだから、これは肉じゃがでしか有り得ないよね!」


 けれども、そこは触れてはならない地雷ゾーン。

 ファントムの傍らでは、先程まで何だかんだと喚いていたギンタが、さあ食べてみろと言わんばかりに勝ち誇った顔で此方を眺めているが――――――――――・・・この程度で、音を上げるつもりはサラサラ無いファントムである。
 アルヴィスへの愛は、誰よりも深いのだ。


「ん。なかなか食べやすそうで、・・・良いんじゃないかな」


 浮かべた笑みを少しも消すことなく、ファントムは容れ物の脇に置かれたスプーンを手にした。
 本来、肉じゃがとは箸で食する料理だという認識はあったが、泥化しているこの斬新な肉じゃがの場合は、匙が妥当だ。


「ファントム!?」


 隣でロランが顔色を変えて首を横に振っているのを視界の端に居れつつ、ファントムは物体X――――――・・・もとい、アルヴィス手製の肉じゃが(ゲル状)を口に運ぶ。

 そして、平然とした顔でソレを飲み下した。
 幸い、ゲル状だから噛まなくても飲み込むことに支障は無い。


「どうかな・・・? 美味しい・・・・??」


 味付けはやはり気になるのか、アルヴィスが伺うように声を掛けてくる。

 期待と僅かな不安が入り交じったその表情は、やはりすこぶる可愛らしい。
 どんな仕打ちをされたって、笑顔で頭を撫でてやりたくなるような可憐さだ。


「・・・・・・うん、流石アルヴィス君だね!! 最高の味だよ!」


 果たしてファントムは、やはり浮かべた笑みを消すことなく、アルヴィスに向かって嫣然(えんぜん)と微笑んで見せた。


「ほんとか!? 良かった・・・作ったの初めてだったけど、俺けっこう頑張ったんだ・・・!」

「うんうん、アルヴィス君の頑張り具合が良く分かる味だよ。作ってくれてありがとう」


 ファントムがそう言えば、アルヴィスは酷く嬉しそうな様子で表情を緩める。
 この顔を見るためなら、どんなことだってしてあげたくなるような喜びようだ。


「沢山作ったから、いっぱい食べてくれよな!」

「・・・・・・・・・・・」


 ただ、この言葉は微妙に嬉しくないのが本音。

 可愛いアルヴィスの顔は幾らでも愛でていたいが、今の表情を変えることなくこの物体を食すのには限界があるのだ。


「あー・・・うん、ボクはまあ、この量で充分満足だから、後はギンタにあげるといいよ! 彼、体調崩してるそうだから栄養あるの食べた方がイイと思うし」

「え? あ、そうだよな・・・俺、ギンタに食べさせようと思ってたんだっけ・・・」


 ファントムは、さりげなくアルヴィスの意識の矛先を、先程のワクワクした表情から一転してガッカリした表情を浮かべたギンタへと向けた。
 もちろん自らの保身と、嫌がらせのためだ。


「――――っげ、俺っ!??」


 途端、ギンタが嫌そうな顔をして腰を浮かせ掛ける。


「なんだギンタ。お前の為に作ったんだぞ? 風邪引いてるんだから、ちゃんと食べないとダメだ・・・好き嫌いしてる場合じゃないだろ?」


 そのギンタの前に、アルヴィスが新たにたっぷりとよそった物体Xの器を置いて仁王立ちをした。


「いや〜〜好き嫌いっていうレベルじゃないってーか・・・」

「野菜嫌いなの知ってるけど、肉だってちゃんと入ってる! ちょっと煮崩れして見えないだけだ!」

「あ〜〜う〜〜〜、だから肉とか野菜とかって問題でも・・・・・」

「じゃあほら、食べろ」

「あ、あれっ? なんか俺、急に身体の調子が良くなってきたような気が・・・?! おぉー治った! 治ったからこんな栄養あるの喰わなくてもさ・・・・・・」

「嘘だ」

「!? ち、違っ・・・な、ンな言いかけてる途中で否定しなくてもいいだろ〜〜〜!!」

「・・・・・せっかく、お前が風邪引いたって言うから作ったのに食べてくれないのか・・・・?」

「あ、・・・いや、・・・・えと・・・・イタダキマス・・・・」


 嫌がって、何だかんだと言い逃れしようとしていたギンタも結局、真の理由は口にしない。
 顔色を青ざめさせながらも、大人しく食べ始めた。

 やっぱり本当の事を告げて、アルヴィスを傷つけたくはないのだろう。

 そこだけは、評価してもイイと思うファントムだ。
 もしここでギンタが、少しでもアルヴィスの料理について真実を言及するつもりであったなら――――――――ファントムはギンタの顔面に、裏拳をお見舞いしたところである。
























「・・・・・・・なあ、アンタさァ・・・・味覚ショーガイでもあんの?」


 ファントムとギンタ、仲良く器1杯分ずつ食べたところで、アルヴィスが後片付けにキッチンへ向かったのを見計らうように、ギンタがそう聞いてきた。
 その顔色はまだ青くて、気分がすぐれないだろうことが容易に伺える。


「失礼だなあ。至ってマトモだけど?」


 対するファントムは、ケロッとした顔でそう答えた。


「・・・・信じらんね。ならなんで、アレ喰って涼しい顔してられんだよ?」

「そんな、変なもの食べたみたいに言わないであげてよ。アルヴィス君が一生懸命作ったヤツなんだから」


 ファントムとしては、自分の可愛い恋人の手料理が悪し様に言われるのは忍びない。
 たとえそれが、真実に近い指摘だったとしても―――――――ここは彼氏として、恋人の名誉を守るべく事実は潔くねじ曲げる心積もりである。


「は!? アンタ、アレがウマイとでも言うのかー・・・ぐえっ、」

「しっ、アルヴィス君に聞こえるでしょ。小さい声で話しなよ」


 ファントムは素早く腕を背後から回し、チョークスリーパーでギンタの首を軽く締め上げ、大声で叫ぼうとするのを防いだ。


「・・・・・・・・・・・」

『まあ、独創的な味なんじゃないかな? ほとんど味わってないから、良くワカンナイけどね』

「んぐ・・・っ!?」


 ギンタの首を呼吸が止まらない程度に締め上げたまま、ファントムは小声で種明かしをする。

 ちなみに手っ取り早く口を塞がないのは、アルヴィス以外の他人の口元に触れるのが抵抗あるからだ。
 もし万が一、手の平に唾液でも付着したら汚らしいじゃないか―――――――・・・というのが、ファントムの本音だったりする。

 だから、まかり間違えば首をへし折りかねないチョークスリーパーの方を選んだワケである(まあ、折れたとしてもボクじゃなくてギンタだしね! byファントム)。


『だからー、味覚をシャットアウトして、すぐ呑み込んだんだ。まさか、それ以外の選択肢は選べないでしょ?』


 自慢じゃないがファントムは、味覚が鋭敏な方だ。
 自ら調理をする機会は殆ど無いし、するつもりも無いが、食べた料理の材料や調味料の種類を言い当てられるどころか、その使用量や調理法まで何となく分かる程である。

 だからして、アルヴィスの料理は臭いを嗅いだ時点でこれはかなりの『レベル』だと察知することが出来た。
 いや、臭い云々の問題の前に、そもそも見た目が既に食べ物では無かったけれども。


『ボク、無理かもって思った時点で、味わわないで食べること出来るんだよねー』

「・・・・・・・・・・・」

『ほら、あんな可愛い顔で感想待ってるアルヴィス君に、彼氏として迂闊(うかつ)なことは出来ないでしょ?』


 今アルヴィスはこの会話を聞いていないからこその、ファントムの本音である。
 それでも、決して的を射た感想を述べないのは、ひとえにファントムのアルヴィスへの愛が成せるワザだ。

 ファントムは基本、そんなにグルメを気取るつもりは無いけれど、マズイものや見た目が美しくない料理は食べ物として見なさない主義である。
 そもそも、もし完璧に作られた状態だったとして―――――――――、『肉じゃが』はファントムが、決して好んでいる料理では無かった。


『フフ、・・・キミはボクが音を上げると楽しみにしていたみたいだけど・・・当てが外れたね?』


 チョークスリーパーを決めたままで、そう微笑みながら言ってのければ、金髪の青年の顔が悔しそうに赤く染まる。


「・・・っ、まさかアレ喰えるヤツが俺とオヤジ以外に存在したなんて・・・・、・・・」


 苦しい息の下から不満げに言う青年に、自分の唇にしいっと指を押し当てて見せ黙るよう合図をして。
 ファントムは、自信たっぷりな様子で口を開いた。


 曰く、―――――――――


「アルヴィス君がどんなものを作ろうと、それが何であれ、ボクにとっては最上の料理さ」


 言外に、それ程アルヴィスへの想いは深いと主張せんばかりな、ファントムの言葉だった。

 物体Xだって、食べてみせるよ―――――――・・・その言葉の続き部分だけは、周到にギンタの耳元にのみ聞こえる声で囁かれたけれども。













言い訳。
なんか、アルヴィスが料理下手くそって設定あるのに、使ってないの勿体ないなー?って思って書き始めた話だったんですけど。
トム様は、愛があるからアルヴィスの料理だって(味わってないけど)食べること出来るんだよ!って設定盛り込んだら・・・ホントに長くなってしまいまして(汗)

あ、ダラダラとしか書けない性分だから、読まれてる方は既に長くなることは予想されてたかもですが・・・・(笑)
案の定長くなっちゃいました、サーセン><
しかもまたクダラナイし・・・ホントすみませ・・・ゴホゴホ。
こんなのが拍手お礼文になってるのか、はなはだ謎ですけど、愛だけは込めて書きました☆
少しでも喜んで頂けたら、すっっごい光栄です。

ちなみにトム様は普段グルメなので、アルヴィスレベルの料理なんて食べさせられそうになったら殺人に発展してそうでs(殴)
でもアルヴィスが作中で作った肉じゃが・・・結構、実話に近かったりします←
カレー粉だけはマズイと思って入れなかったけど、目に付いた調味料全部入れてみたら灰色になったんですよね・・・・いやー、まさかカレー粉は肉じゃがに有りなんて知らなかったんだ・・・(爆)
あ、サプリは入れませんでしたけどね!!?









お名前: 返事不要

- PatiPati (Ver 4.2) -